仕事においてパンデミックが与える影響として、意思決定が困難になったことがあります。意思決定のプロセスは、結果が不確実であるほど難しくなるのです。

そして、現在も私たちの生活は大きな不確実性を抱えた状況にあります。

ケンブリッジ大学の臨床神経心理学教授であるBarbara J. Sahakian氏と認知神経科学博士候補者であるAleya A. Marzuki氏は、心の健康の状態によって意思決定プロセスがどのように狂う可能性があるかに焦点を当てた実験を行ないました。

物事の結果が予測できない時に人はどのように決断に臨むのかについて理解を深めるための実験です。

2人は、強迫性障害(OCD)を持つ10代の若者と持たない10代の若者という2つのグループに、スクリーン上の2つの画像のどちらかを選択する確率論的な意思決定課題を行なってもらいました。

一方の画像は80%の確率で得点が得られ、もう一方の画像は20%の確率でしか得点が得られないようにプログラムされていました。

それぞれの選択肢に結び付いたこの報酬確率は、課題の途中で逆転するようになっていました。

その研究結果は『JAMA Network Open』 に掲載されましたが、そこで検討されたのは2つの意思決定戦略に向かう人間の性質についてでした。

意思決定時に働く人間の性質は2つ

その2つとは、「活用」と「模索」です。「活用」は、慣れ親しんだ、報酬の確実性が高い選択肢を選ぶことであり、「模索」は、馴染みのない選択肢を試すことです。

「この課題では、理想的な戦略は模索と活用の融合です」とMarzuki氏は述べます。

早い段階では報酬の高い選択肢を活用し、その後ポイントが与えられる頻度に変化があることに気づいたら模索を行なうのが最善でしょう。

しかし、OCDを持つ10代の若者は、不確実性に対処することができないようでした。そのため、この課題の2つの選択肢を過大に模索してしまいました。

OCDのない10代の若者に比べて、選択肢を切り替えたり、報酬の少ないほうを選択したりする頻度が高かったのです。

今回の実験はOCDを持つ被験者で行なわれましたが、最適な決断を行なう際には不確実性に対する耐性が必要であるため、今回の結果はさらに多くの人に当てはまる可能性がある、とMarzuki氏は言います。

「これは簡単なことではありません。人間は習慣的な生き物であり、不確実性の下ではうまく対処できないことが多いからです」とMarzuki氏は述べています。

このことは、現在のグローバルに広がるパンデミックにも表れています。人々は過剰な情報検索を行ない、トイレットペーパーの買いだめから、政府が義務づけた安全上のアドバイスを意図的に無視したり誤った情報を信じて広めたりするといったことまで、不適応な行動を示しています。

ビジネスにおける意思決定

この研究から企業が学べることがあります。Marzuki氏によると、まず、意思決定を改善するためには、社員やリーダーが不確実性に対処する能力を身につけている必要があります。

不確実性に対するレジリエンスを高める方法としては、社員への情報提供を改善し、最適な意思決定ができるようにあらゆる必要な情報の透明性を確保することが挙げられます。

また、人がいつ、何のために模索と活用を使い分けるのかを理解することも重要だとMarzuki氏は言います。

たとえば、時間的なプレッシャーが大きい時には、人は選択を繰り返し、模索を少なくする傾向があります。

また、過去の決断の結果が影響することもあります。Marzuki氏によると、それまでの過去の経験がポジティブなものであった際には、新しい選択肢を模索する可能性が高まります。(逆もまた真なりで、ネガティブな経験をした場合には自分の知っていることに固執します。)

意思決定の最善の方法

どちらの方法にも長所と短所があります。Marzuki氏は言います。

一方では、模索は非常に有益です。新しい選択肢を試すことで、より良い利益を得られるようになるかもしれないとともに、今後、より良い選択ができるようになる可能性があるからです。

他方で、新しい選択肢のほうが劣っていることがわかった場合、時間、労力、そして潜在的には金銭といった各リソースの面で大きな代償となりかねません。

しかし、どちらの戦略もそれだけでは十分ではない、とMarzuki氏は加えて述べます。

そうではなく、模索の戦略と活用の戦略を柔軟に切り替えられることが重要です。

模索と活用のジレンマに関する最近の研究で採食に焦点を当てたものに触れ、こう続けます。

食物が豊富な夏季には、採食者は食糧源となる可能性のある場所を模索することのほうに多くの時間を費やすべきです。そしてその後、食糧が乏しくなる冬に模索で得たこの情報を活用することが不可欠なのです。

これと同じ理屈が組織にも当てはまります。

安定した時期には、重要な情報を集めて潜在的な利益を得るために、企業は新しい事業や投資先、パートナーや代替的な仕事のやり方を模索するべきです。

そうすることで、早めに収集した情報や利点を活用して、不確実性や変動性の大きな時代を生き残るための能力をさらに身につけることになるのです。

Image: Shutterstock/Source: JAMA Network Open, Neuropsychopharmacology

Originally published by Fast Company[原文]Copyright © 2022 Mansueto Ventures LLC.