スティーブ・ジョブズといえば、Apple社を創設し、同社を史上最も大きく、最も価値のあるブランドの1つに育てあげたことで有名です。
中には、ジョブズは巨大プロジェクトを同時にいくつも操りながら、成功の極みに到達したのだと思っている人もいるかもしれません。
しかし、ジョブズ本人は、彼の成功の鍵は「フォーカス」にあると考えていました。1997年のApple Worldwide Developers Conferenceで、ジョブズは次のように語っています。
フォーカスするということはYESと言うことだと思っているよね。でも、フォーカスとはそういう意味じゃないんだ。
フォーカスするとは、そのほかの100の良いアイデアにNOと言うことなんだ。慎重に選ばなくてはならない。
私は、これまで行ったことと同じくらい、行なわなかったことに誇りを持っている。
Business(ビジネス)とbusyness(忙しさ)を混同してはいけません。私たちは、生産性が高まると、手を広げて、多くの目標を同時に追いかけはじめます。
しかし、ジョブズは違うアプローチをとりました。ジョブズは「イノベーションとは、1000のアイデアにNOということだ。慎重に選ばなければならない」と言っています。
フォーカスがなければ、思考能力、問題解決能力、意思決定能力が低下してしまいます。心がマルチタスクの荒野にさまよい出てしまえば、効率の最大化は望めません。
フォーカスは1つのタスクに当てるべきです。1つのこと、1つのビジネス課題、1つの大きなタスク、1つの重要な会話に集中すべきなのです。
「NO」と言うべき3つのこと
ジョブズの「NOと言う」アドバイスは、私がコーチングの仕事で、生産性の問題で悩んでいるクライアントにするアドバイスと共通するものがあります。
私はよく、クライアントに次のことに「NO」と言うようにとアドバイスしています。
1. すべてを自分でやろうとする
1日にできるだけ多くのことを成し遂げたいなら、人に任せる必要があります。すべてを自分でコントロールしたい人にとっては難しい課題ですが、絶対に避けて通ることはできません。
ジョブズにとって、その最初のステップは周囲に優秀な人を集めることでした。
集めたら、自分は一歩下がって、彼らに働いてもらいます。
優秀な人を雇って、何をすべきかを指示するのはナンセンスだ。優秀な人を雇えば、彼らが私に何をすべきか教えてくれる。
2. 集中を妨げるもの
テクノロジーは、生産性向上の最大の贈り物の1つですが、集中力にとって最大の障害の1つでもあります。通知がひっきりなしに届けば、集中は妨げられ、簡単に脱線してしまいます。
ある研究によると、仕事中の妨げをすべて削除できたら、1日あたり3〜5時間、つまり標準労働時間の40〜60%を取り戻すことができるそうです。
テクノロジーに管理されるのではなく、あなたがテクノロジーを管理してください。
1日の始まりにメールに飛びついてはいけません。メールを見れば、他者からの要求の渦に飲み込まれてしまうでしょう。メールは1日の終りにチェックしましょう。
そして、集中力を必要とするタスクに取り組むときは、スマホを機内モードにするか通知をオフにして、別の部屋に置いておきましょう。
3. 非現実的な目標を設定する
週の計画を立てるときは、達成できない可能性が高い目標は設定しないようにしましょう。どの目標を入れるか、どれだけの目標を入れるかを現実的な視点で考えてください。
たとえば、1日の計画を立てるときには、その日のうちに達成したい主要な目標を1つか2つ決めます。目標は、あなたを脱線させるものではなく、前進させるものでなければなりません。
また、確実に達成するために、目標を小さなタスクに分割しましょう。そうすれば、1日の始まりに、エベレストを見上げているような気分を味合わなくてすみます。
もう一度ジョブズの言葉に戻れば、「フォーカスするとは、NOと言うこと」なのです。簡単なことではありませんが、効果は絶大です。
ジョブズも「私は行なったことと同じくらい、行なわなかったことに誇りを持っている」と言っていますから。
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Image: Justin Sullivan/Getty Images
Source: Fast Company
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