初志貫徹、有言実行、素晴らしいこと。それをよしとする風潮もあったかもしれません。しかし、一方で定めた目標の潮時を見極め自ら見切りをつけるのも、悪いことではありません。
自分からやめるのはすごく難しい
臨床心理学博士や精神科医などがコラムを寄せるメディア「Psychology Today」で神経心理学者でありマウントサイナイ医科大学リハビリテーション部で臨床助教授を務めるTheo Tsaousides氏は、やめることに対する人々の反応、悪い印象を持たれやすい理由について解説しています。
「目標達成において、失敗することの方がやめることより受け入れられやすくなっています。失敗は強さを、やめることは弱さを表すからです。(中略)
人は失敗してもなお目標を追う人を好み、その忍耐力と没頭力を称賛するものです。
しかし、やめる人に対してはかわいそうに思い、共感もわかず、関心さえもたないこともあります。
やめた人からは学ぶことがないかのように。
こういったやめることをよしとしない偏見により、自分によくない仕事・人間関係・約束を続けなければならなくなっています。
やめることへの恐怖が執着させ、より一層頑張らせたりします。それによりメンタルヘルスや感情の状態が大きく犠牲になります」
Psychology Todayより引用翻訳
つまりは、様々な理由でやめたいと思っているのに続けてしまっていることが往々にあるのです。
やめたいのにやめられない状態を防ぐ自問自答
やめたいのにやめられない不健康な状態にならないためにも、その目標が本当に今必要なのかいくつかの質問を通して見極めてみませんか?
自身と目標を再評価する
目標の分野において芽がでそうなのか? 達成できそうなのか?
それが資格取得でもつきたい仕事でも、ある程度の時間を費やせばその領域に対する解像度が高くなるはずです。
- 目指した頃と比べてどう感じますか?
- 目標に向けて行動してみて自分に適性はありそうだと思いますか?
- 達成できる見込みはどのくらいでしょうか?
現時点の自分の優先順位を知る
目標を設定した時期から達成する間には時差がありますし、環境に変化があっても珍しくありません。特にいまは生活様式すら変化を迎えています。
- 目標を定めたときと現時点の自分の関心事は同じでしょうか?
- いま一番優先したいことは何でしょうか?
- 実は新たに興味がわいていることがありませんか?
目標の実現に対して懐疑的になっていないか?
目標に向けていろいろな経験をするうちに、実現できると本気で思えなくなることもあるものです。
- 当初よりも目標達成に対する自分自身への期待値が下がっていませんか?
- やめ時と、どこかでわかっているのに、これまでかけてきたエネルギーと時間、場合によってはお金がもったいなくてその感情と向き合えなくなっていませんか?
- ~になりたい、~を取得する、そういった目標を持っていることにのみ満足して行動力が落ちていませんか?
自分の生活を楽しめているか?
やりたいことだからと目標にしたのに、それがストレスになってしまっては意味がありません。
- 目標に向けてエネルギーや時間を使うことが生活の負担になっていませんか?
- 目標達成に必要だと思うことに取り組んでいるはずなのに自信を失ってきていませんか?
- 新たな目標に向けて行動したい自分がいませんか?
- まだ目標は目標ですか?
見切りをつけても前進できる
Tsaousides氏は、やめるにあたってアドバイスも述べています。
「目標に未練を残さないように区切りをつけ、しっかり悲しみ、前に進みましょう。
長年目指してきたことに見切りをつけるのは痛みを伴うものです。
後悔のないようなけじめのつけ方をしたら、短期間であっても悲しみ嘆く時間が必要かもしれません。
しかし前進していくはずです。目標について考えたり、もっと頑張ったり時間を費やしていたらどうだっただろうかと思いをはせてみたり、目標を叶えていたらどういう生活を送っていただろうかなどと想像することは、気持ちをさらに落ち込ませ、自己憐憫や自分を非難することに追い込みます。
前進する一番良い方法は、エネルギーや期待、能力を新しいアイデアやプロジェクト、そして新たな目標に注ぐことです」
Psychology Todayより引用翻訳
次へ進むための準備を
目標に見切りをつけたことで感じる喪失感を避けたい方もいるかもしれません。
大きな目標であれば、やりたい事がわからない状態になるかもしれませんし、その状態が嫌になるかもしれません。
ですが、いつ・どんな風にかはわからないものの、次の展開がやってくるのであれば、達成の可能性が高い目標をもち、成功体験を多くし、セルフイメージを上げていきたいものです。
あわせて読みたい
Source: Psychology Today
Why Giving Up Can Sometimes Be Good/Psychology Today
Image: Shutterstock