コロナ禍の中、マネジメントの手法は大きな転換期を迎えています。
私は、リーディング企業を中心に年間200回の研修に研修トレーナーとして登壇していますが、コロナ禍においては、リモートワーク、時差出勤といった新たなスタイルが日常となり、メンバーマネジメントにおいても試行錯誤が続いていることを伺います。
・メンバーの業務の進捗状況を把握しにくくなった…。
・環境の変化が激しい中、メンバーのモチベーションが気になる…。
・メンバーの会社へのロイヤルティが低下していないだろうか…。
オフィスで声をかけて行なうマネジメントが今まで以上にハードルが高くなった今、新たなマネジメント手法に移行することが絶対の条件なのです。
一方で、オンラインミーティングを有効に活用することでメンバーの状況を今まで以上に把握したり、コロナ禍だからこそ事業の意義をしっかりとメンバーに伝えることで、会社へのロイヤルティを高める機会にしている管理職もいます。
つまり、今までの手法に頼るのではなく、いち早く「新たなマネジメントの手法(ニューノーマル)」を構築することが求められるタイミングなのです。
今回は、私が研修や講演で紹介するコロナ禍におけるマネジメントの手法を紹介します。参考にしてみてください。
週1回の1on1を、単なる「業務確認」にしない

コロナ禍の前から、メンバーの状況を把握する手法として、面談(1on1)の効果は注目されていましたが、この1on1をオンラインで行う流れができています。
もし、メンバーのモチベーションが気になるようであれば、ぜひ実践してみてください。
基本の流れは、毎週1回・10~30分程度、メンバーとの1on1を行います。
注意すべきは「業務確認」の場にしてしまわないこと。話し合う内容は3つから選択してみてください。
1つは「今の環境で気になること(家や職場)」、2つめは「業務の進め方で気になっていること」、3つめは「心身のコンディション」。
短時間であっても、メンバーが抱える状況や課題を把握することができます。
具体的な進め方はこのような流れになります。
- 事前に「話したい内容があれば考えておく」ことをメンバーに伝えておく
- 開催する曜日、時間は一定にしておく(ルーティンに組み込む)
- 面談中は、メンバーの話を聞き切る(すぐにアドバイスするのではなく、状況・問題・メンバーの思い(どうしたいのかなど)を最後まで聞く)
- オンライン上では、最初の1~2分雑談があってもよい
- オンラインでは笑顔を意識する。特にマスクをしていると、表情が伝わらずメンバーは話しにくいと感じるため、「目で笑顔」を作れるようになっておく
オンライン上の1on1を活用すれば、メンバーが抱える問題・不安を解消しやすくなるでしょう。
不安な時代だからこそ、目的・意識の共有を図る

業種によっては過去にないほどに業績が落ち込んでいる職場もあります。一方で、コロナ禍の影響で急に忙しくなりメンバーに感染リスクの不安がある中で、奮闘してもらっている職場もあります。
いずれにしても、メンバーはストレスを感じやすい環境にあると言えるでしょう。
実は、このような不安を感じやすい時こそ、管理職がやっておくべきことがあります。
それは、「なぜ、私たちはこうまでして頑張らないといけないのか」を丁寧に伝え続けることです。
通常時のように「あなたの成長のため」といった視点だけでは全く通用しないでしょう。また、忙しい会社では、会社が特別な手当を支給してくれる会社もありますが、手当の目的はあくまで「労い」。
メンバーが「今こそ頑張らないといけない」と奮い立つことを狙うなら、それでは効果はないのです。
管理職、もしくは、リーダー業に携わる人が、「なぜ頑張らないといけないのか」、その大義を語り続けることが不可欠なのです。
できれば、職場のトップ(部課長クラス)だけではなく、中堅クラスのメンバーも大義を語れば、他のメンバーは大いに触発されます。
では、共有しておきたい内容を紹介しましょう。
1. 誰のためにここまで頑張るのか?
コロナ禍では、あなたの会社だけではなく、あなたの会社のサービスを利用するお客様も大変な状況になっていないでしょうか。
まずは、その方々の3つの不(不安・不便・不満)を代弁する立場に立ちましょう。
特に営業や販売、接客などの最前線では、必ずやってください。間接部門であっても、お客様のために頑張る最前線の部署のためであることは伝えられるでしょう。
それが、結果的にお客様のことになっているとわかれば問題ありません。
2. 放っておけない状況は何か?
語るべきは、お客様や最前線の部署をとりまく「放っておけないリアルな状況」を伝えることです。
ゆえに管理職は、その「放っておけないリアル」に関心を寄せておかねばなりません。「たぶん…」「きっと…」といった想像の範囲だと、メンバーの心は動きません。
メンバーは実際に起こっていることを知って、初めて心に火がつくのです。
3. 現状を打開できる解決策は何か?
問題を提起するだけではなく、「何をどうしたいのか」「どうすれば現状を打開できるのか」を明確な言葉で、繰り返し語ることが必要です。
参考になるのは、星野リゾートの星野社長です。コロナ禍の中で、ホテル業は壊滅的な打撃を受けています。やはり星野リゾートも例外ではないようです。
しかし、星野社長が何度も繰り返して語り続ける言葉があります。
インバウンド需要がなくなったからといって深刻になる必要はない。
近距離旅行のニーズは十分にある。このマイクロツーリズムを提案することが、今こそやるべきこと。
具体的には、その土地に根差した魅力を追求することにある。
私は星野リゾートと何の関係もありませんが、星野社長の主張をテレビ、新聞、雑誌、動画サイトなど、あらゆるメディアで、ブレることなく同じ内容を繰り返し語られるのを聞くことで、意識せずとも頭に入っています。
でも、社長が語るだけでは不十分です。
職場のトップである管理職が自分の言葉で語るからこそ、メンバーは身近なこととして捉えるようになるのです。
ぜひ、あなたが「どうしたいのか」「具体的に何をするのか」を語り、メンバーにこの事業をすることの意義をしっかりと共有しましょう。
今回は、コロナ禍におけるマネジメントの肝要を紹介しました。
今までの常識とは明らかに異なる手法が必要となってきていますが、やり方次第では、メンバーのロイヤルティを高めるチャンスとも言えるでしょう。この情報が、お役に立てれば幸いです。
伊庭 正康 株式会社らしさラボ 代表取締役

リクルートグループ入社。残業レスで営業とマネジャーの両部門で累計40回以上の表彰を受賞。その後、部長、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年、株式会社らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理等、年間200回以上の研修に登壇。リピート率は9割以上。現在は、Web(ZoomやTeamsなど)を活用した研修も好評。近著に『30歳までに読んでおきたい 会社でエリートになれるビジネスマナー&スキルWiki(徳間書店)』『トップ3%の人は、「これ」を必ずやっている 上司と組織を動かす「フォロワーシップ」(PHP研究所)』『できるリーダーは、「これ」しかやらない メンバーが自ら動き出す「任せ方」のコツ (PHP研究所)』『メンバーが勝手に動く最高のチームをつくる プレイングマネジャーの基本(かんき出版)』他多数の書籍がある。
※無料メーリングニュース(全8回)
※YouTube「研修トレーナー伊庭正康のビジネスメソッド」もスタート
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