2020年、営業の手法は歴史的な転換を迎えています。
私は、リーディング企業を中心に年間200回の研修に研修トレーナーとして登壇していますが、コロナ禍においては「会うことを前提」とした営業だけでは成果を上げることは難しくなっていることを実感します。
その理由は、次の3つ。
- 感染リスクの警戒から、対面での商談を拒否される
- そもそも、担当者が事務所にいない(在宅勤務・時差出勤のため)
- 残業が厳禁になってきたので、会うだけの訪問は拒否される
訪問することが、今まで以上にハードルが高くなった今、新たな手法に移行することが絶対の条件なのです。
一方で、オンライン営業を活用することで、成約率を2倍以上にアップさせた企業があるのも事実。
つまり、今までの手法に戻ることを期待するのではなく、いち早く「新たな営業の勝ち筋(ニューノーマル)」を構築することが求められるタイミングなのです。
今回は、私が研修で紹介するオンライン営業の流れを紹介します。参考にしてみてください。
目次
電話とオンラインの組み合わせでアポ効率アップ

私のリサーチでは、電話とオンラインを組み合わせた結果、アポイント率・成約率ともに倍増している会社もあります。
理由は、オンラインで「情報共有」をしながら会話をすると、課題を教えていただきやすくなるからです。
では、具体的な方法を紹介しましょう。
基本の流れは、「電話 or メール」でアプローチをし、会話の中で「オンラインで情報共有」を行うスタイルです。
オンラインツールにもいろいろあります。
営業に特化した「ベルフェイス」は有名です。URLを送らずとも通話中にブラウザを立ち上げ、接続ナンバーを入力するだけでファイルやメモも共有ができます。
一方、手軽にZoom、Microsoft Teams、Google Meetなどを活用して導入する方法もあります。
事前にURLを用意し、「差支えなければアドレスを伺ってよろしいですか?」と確認してURLを送信するだけなので、すぐにオンライン営業はできます(無償版も使えます)。
実際、研修会社を営む私も2020年4月以降はZoomを使った営業に切り替え、効果を実感しています。
では、営業の具体的な流れを紹介しましょう。
新規営業(テレアポ)の「勝ち筋商談」の流れ

今回は、新規営業(テレアポ)のケースで紹介します。
基本の流れはお客様への営業も同じです(お客様の場合、アプローチを電話ではなくメールにすることもあります)。
1. +αの情報を提供する(「ガチャ切り予防」は大事)
コロナ禍では、時間は貴重になってきています。
「ガチャ切り(不要とすぐに切られる)予防」として、“挨拶の電話”と伝えるだけではダメです。
○○(会社名)様には、ぜひご挨拶だけでもと思い失礼をさせて頂きました。ご挨拶かたがた昨今の●●の状況もお伝えでできればと存じます。
と、丁寧にゆっくりと伝えてみてください。
「○○様だから」と伝えることと、「●●の情報」と伝えることが鍵です。
※●●=先方が興味ありそうなテーマ(2020年初夏なら、コロナ禍での業界各社の取り組みなど)
2. 「ちょっとした困りごと」を確認する
ここでやるべきは、「ちょっとした困りごと」を教えてもらうこと。
私の研修でレクチャーしている、抜群に効果のある実践技を紹介しましょう。
▼丁寧に傾聴することで「警戒」を解く
① 傾聴1:先方の言葉を「反復」する
先方:「今は半数の出勤体制なのです」
営業:「半数でいらっしゃるのですね」 など
② 傾聴2:先方の「感情を代弁」する
先方:「リモートでも会議は大丈夫です」
営業:「それは安心ですね」 など
▼警戒を解いた後、「ちょっとした困りごと(不安/不便な点)」を教えてもらう
営業:「▲▲についてご不便を感じることはありませんか?」
先方:「今はないかな」
営業:「教えていただき、ありがとうございます。○○ということでしょうか? ご不安もなく…万全…ということでしょうか?(…は間を開けて話す)」
先方:「いや、万全というわけではないけどね」
営業:「どのようなことが、おありなのでしょうか?」
と、「ちょっとした困りごと」を伺うようにします。なお、この営業の流れはYoutubeチャンネルでも公開しています。
3. 「画面共有」しながらの対話へ繋げる
次に、「解決のヒントになる情報がある」とお伝えします。
ベルフェイスの場合は、「URLを申し上げますので、ブラウザを立ち上げていただいてもよろしいでしょうか? 今から数字(接続ナンバー)をお伝えします」と伝えましょう。
ZoomやMicrosoft Teams、Google Meetの場合は、「Zoom(Teams、Google Meet)のURLを送らせていただいてよろしいでしょうか?」と伝え、画面の共有機能で資料をシェアします。
【スムーズに対話を行うための工夫】
- 情報をPCの画面上に用意しておく(複数パターンを想定しておく)
- 予め「URLを張り付けたメール」を用意する
- 資料を共有し、そのあと感想・質問を伺う(=対話)
※ここでの対話が、商談に入れる鍵になるので必ず行うこと。
4. この流れで商談に入る
情報共有での会話の流れから、「では、いかがでしょう? もしよろしければ、さらにお役に立てる情報もありますのでお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?」と、普段は対面で行っている商談に入ります。
商材によっては「ヒアリング→提案→クロージング」と完結をすることも可能です。
今回は、コロナ禍におけるオンラインを活用した営業の勝ち筋を紹介しました。
今までの常識とは明らかに異なる営業が必要となってきていますが、今はオンライン営業に新鮮さを感じていただける効果もありますので、チャンスとも言えるでしょう。
この情報がお役に立てれば幸いです。
伊庭 正康 株式会社 らしさラボ 代表取締役

リクルートグループ入社。残業レスで営業とマネジャーの両部門で累計40回以上の表彰を受賞。その後、部長、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年、株式会社らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理等、年間200回以上の研修に登壇。リピート率は9割以上。現在は、Web(ZoomやTeamsなど)を活用した研修も好評。近著に『30歳までに読んでおきたい 会社でエリートになれるビジネスマナー&スキルWiki(徳間書店)』『トップ3%の人は、「これ」を必ずやっている 上司と組織を動かす「フォロワーシップ」(PHP研究所)』『できるリーダーは、「これ」しかやらない メンバーが自ら動き出す「任せ方」のコツ (PHP研究所)』『メンバーが勝手に動く最高のチームをつくる プレイングマネジャーの基本(かんき出版)』他多数の書籍がある。
※無料メーリングニュース(全8回)
※YouTube「研修トレーナー伊庭正康のビジネスメソッド」もスタート
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Image: Foxy burrow, everything possible, GaudiLab/Shutterstock.com