コロナ感染対策ではありませんが、微妙なタイミングで呼吸についての本がアメリカで刊行されました。
ジャーナリストのジェームズ・ネスターさんが書いた『Breath: The New Science of a Lost Art』です。
口呼吸で生活したらこんなことに!
フリーダイバーでもあるネスターさんは、ここ数年呼吸についてのリサーチをしていました。
自分は口呼吸の傾向があったため、リサーチの一環としていかに口呼吸が良くないのかを調べることにしました。
スタンフォード大学鼻科学者のもとで、やはり自ら希望した被験者と2人だけの実験を開始し、鼻を塞ぎ10日間口呼吸だけで過ごしたのです(!)。
その結果、体には次のような変化がありました。
- 一晩に数分間だったいびきが4時間になった
- 睡眠時無呼吸の症状が出た
- 血圧や血糖値が悪化した
- 運動能力や記憶力が低下した
- 疲労感とストレスが増加した
実験後、鼻呼吸で10日間過ごすと、これらの症状はみるみるうちに改善されたそうです。
ネスターさん本人は長い間少しずつ鼻呼吸へ移行したことで、10年前と比べて気管支炎などになることがなくなったと述べています。
現代人は鼻呼吸ができない?
ネスターさんによると、アメリカの人口の25〜50%が口呼吸なんだそうです。
私も時々、朝起きた時に口が乾いていることがあるので、このトピックには興味津々です。
なぜ鼻呼吸が良いかについて、鼻にはフィルターがあり、それがさまざまなホルモンや生理的な調整を行なってており、体のバランスを保つ仕組みになっているのだとネスターさんは言います。
私は子どもの頃、口は消化器官かつ呼吸器官だと勘違いしていました。だって、口で呼吸することもできるではないですか。
そう思い込むぐらい、口で呼吸するのも当たり前だと思っていました。ではなぜ、人は口呼吸をするのでしょうか?
それには人間の進化が関わっていたのです。
こちらの動画では、長年におよぶ頭蓋骨の変遷が示されています。特にこの400年で特に顔が細長くなっているとネスターさん。
狭くなった口腔に昔と変わらぬように歯が生えるため歯並びが悪くなり、鼻腔や咽頭などの空気の通り道も狭くなり、鼻呼吸が難しくなっているのだそうです。
呼吸とこころの深い関係
ネスターさんは、1日に約2万5000回もしている呼吸をボートにたとえています。
ボートを漕いで目的地へ行くのに、小刻みに早く漕いでも(浅い呼吸)、大きくゆったり漕いでも(深い呼吸)目的地には着くのですが、後者のほうが疲労が少なく効率が良いことは明らかだと述べています。
インタビューでは特別な呼吸法には触れていませんが、ネスターさんによると吸気と呼気をそれぞれ5~6秒ほどかけてゆっくりと深呼吸するのがベストだそうです。それが体の構造に合った自然な呼吸だと述べています。
「どの呼吸法にも共通する点は何か?」というインタビュアーからの質問には、ゆっくり呼吸する点が挙げられました。
また、吐く息を吸う息よりも長くすると副交感神経が刺激されてリラックスできるそうです。
その時には横隔膜が下がり血流が体へ流れるので、心臓の負担を減らすことができ、心を落ち着かせる効果があるのです。
神経心理学者に話を聞いたのですが、恐れに基づく症状や不安症の人は呼吸をし過ぎているそうなんです。
そうすると、交感神経を刺激して常にストレス状態になってしまう。それを変えるには深呼吸することです。
(中略)ゆっくり呼吸することで、横隔膜が下がり、肺と空気が行き渡り、体をリラックス状態に変えることができます。
(「NPR」より翻訳引用)
ストレスと深呼吸の関係。こちらの記事でも、ストレスに対処する方法はずばり「深呼吸」だと言っています。
もう少し具体的な呼吸法が知りたい人には、次の記事が参考になります。
「何秒間吐いて、何秒間止めて、何秒間吸って」のような呼吸法はいろいろありますが、どれが自分に合っているのか混乱します。
試してもなかなか習慣にならないと感じているなら、まずは口呼吸をやめ、横隔膜を意識した鼻を使った深呼吸を取り入れることが簡単そうです。
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Image: Microgen/Shutterstock.com