コロナ禍ではありますが、5月恒例ビル・ゲイツおすすめの夏に読む5冊が発表されました。

例年は過去1〜3年に刊行された本が紹介されることが多いのですが、今年は10年以上も前に発表された作品が2冊ランク入りしています。

アメリカでの刊行年の古いものから紹介します。

1. 『クラウド・アトラス』デイヴィッド・ミッチェル著

2004年に発表されたSFフィクションで、2012年にはトム・ハンクス、ハル・ベリー主演で映画化されています。

本を読まずに映画を観ましたが、よく理解できなかった1本として印象に残っています。

ビルは、興味がある読者は人間の最良の面と最悪の面について描いたこのストーリーに自分と同じようにのめり込むだろうと言っています。

映画はよくわからなかったにしろ、確かに設定やコンセプトには好奇心をそそられるところがあります。

本をじっくり読んでから映画を観たら少しは理解できるでしょうか。

2. 『グレート・インフルエンザ』ジョン・M・バリー著

科学史家のバリーさんが、1918年のインフルエンザ大流行を取り上げた、2005年刊行のノンフィクション。

ゲイツは、コロナ禍に一番近い状況と言える1918年のインフルエンザの状況を知ることで現状をより理解できるようになると言っています。

3. 『The Choice: Embrace the Possible』イーディス・エヴァ・イーガー著

2017年刊行。著者のイーディス・エヴァ・イーガーさんは、ハンガリー出身。

10代の時にアウシュビッツに強制収容され、戦後はアメリカへ移住してセラピストになり、兵士や心身虐待の犠牲者などトラウマに苦しむ多くの人たちを支えてきました。

ビルは、この回顧録で語られる彼女の経験から学べることは多く、困難な状況にどう対処するかのアドバイスは多くの人たちの気持ちを癒すだろうと述べています。

4. 『ディズニーCEOが実践する10の原則』ロバート・アイガー著

アメリカでは2019年9月刊行。アイガーさんは今年2月に退任したウォルト・ディズニー・カンパニーの元CEO。

ディズニーがマーベルやルーカスフィルムを買収した近年のめざましい発展の裏にはこの人の敏腕リーダーシップがありました。

ビルはこの数年で読んだビジネス書の中でも最高の1冊と呼び、アイガーさんが大企業のCEO職とはどんなものなのかわかりやすく説明していると絶賛しています。

日本語版を刊行した早川書房が、一流の危機対応を学べるリーダーには必読の名著だと言っているのにもうなずけます。

もちろん、企業トップではなくても、この本から学べることはたくさんありそう。

5. 『絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか』アビジット・V・バナジー、エステル・デュフロ共著

2019年11月アメリカ刊行の『Good Economics for Hard Times』は、日本語版が発売されたばかりです。

2019年ノーベル経済学賞をともに受賞したバナジーMIT教授とフランス出身のデュフロMIT教授の共著。

コロナ禍によって世界中が未曾有の経済危機に陥りつつありますが、失業手当の申請者が何千万人と出ているアメリカでは特に身にしみるテーマです。

番外編その1:マンガ

今回はめずらしくマンガ(イラスト付き本)も推薦されています。

中でも、わたしも読んだことがあり楽しめたのは次の2冊です。

●『Hyperbole and a Half: Unfortunate Situations, Flawed Coping Mechanisms, Mayhem, and Other Things that Happened』アリー・ブロッシュ著

おもしろい箇所をメリンダさんに何度も読み聞かせたというビル。

刊行された2013年にはわたしも家族で読み合っておおいに笑わせてもらいました。

本書はただ笑えるというだけではなく、うつ病に悩んでいたアリーさんが、うつから抜け出した経緯や独特の視点とタッチで描かれた日常生活にはペーソスが漂っています。

彼女の絵はインターネットミームとしても使われているので、なじみがあるかもしれませんね。

●『ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか』ランドール・マンロー著

元NASAのエンジニアからマンガ家・著者へ転身したマンローさんの本はどれもおもしろいんです。

この本は、とんでもない状況での実験を提案してそれをきわめてまじめに科学的に考察しています。

彼が描くマッチ棒のような人間たちがトンデモ実験をするイラストと、それを科学的に分析する態度のギャップが楽しめます。

番外編その2:テレビ番組&映画

●Netflix『パンデミック ─知られざるインフルエンザの脅威─

ビルは自宅にいる時間が増えたため、テレビ番組もたっぷり観られたようです。

今年1月から配信されているNetflixのドキュメンタリー『パンデミック ─知られざるインフルエンザの脅威─』がすすめられています。

2015年のTEDトークで、世界の次なる脅威は戦争ではなくパンデミックだと言っていた彼は、伝染病対策にも力を入れているゲイツ財団の仕事で知識も豊富。

ビルにとっては、コロナ禍がなかったとしても関心の高いテーマだったはずです。

ドキュメンタリーに登場する4人の専門家がインフルエンザと闘う姿は、現在コロナウイルスと闘う専門家の姿と重なります。

わたしはまだ観ていないのですが、予告編で専門家が「次のパンデミックは『もし』ではなく『いつ』起こるか」「次のパンデミックは恐ろしい勢いで拡大する」とコメントしているのを聞くと、現在その「次の恐ろしいパンデミック」の真っ只中に世界中の人々がいるという事実に背筋が寒くなります

その一方で、世界中でこのパンデミックを終息させるためさまざまな手段や研究が行なわれていることに励まされ、自分ができることはきちんと続けていこうと気持ちを新たにさせられます。

●映画『スパイ・ゲーム』

映画で挙げられたのは、2001年に公開された『スパイ・ゲーム』。ブラッド・ピット(若い!)とロバート・レッドフォード主演。

ビルのお気に入りで12回は観ているとか。

ネタバレ防止のため、ストーリーにはどんでん返しがあっておもしろいという点以外は語られていませんが、監督はトニー・スコット、そして主演ふたりの組み合わせは魅力的です。


これまではリスト入りの本はすぐに図書館から借りていたのですが、今は本へのアクセスを考えてからじっくり読みたいと思います。

今回はすでに日本語訳が出ているものが多いので、気軽にトライできます。

テレビ番組や映画のおすすめもあるので、当分は楽しめそうです。

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