緊急事態宣言が5月31日まで延長されました。幼稚園・学校の休みが続く中、親が子どもの成長のためにできることをあらためて考えてみたいと思います。

そのヒントが最近読んだ『Becoming Brilliant: What Science Tells Us About Raising successful Children』にありました。

ソフトスキル vs. ハードスキル

著者のひとりであるキャシー・ハーシュ=パセックさんは、テンプル大学心理学教授で子どもの発達について40年近く研究しています。

キャシーさんは、スキルにはハードスキルとソフトスキルがあると言います。ハードスキルというのは、成績表とかテストなど数値で表すことができるもの。

ソフトスキルは、ハードスキルの逆というわけではなく、むしろハードスキルの基礎になるものと定義されています。

たとえば、自制心、チームワーク、問題解決力、想像力、共感力、回復力、意欲など、数値では表しにくいスキル。

今のビジネス界はソフトスキルに強い人材を求めているので、子どもがソフトスキルとハードスキル両方をバランス良く持ちながら成長することが重要なのだそうです。これには異論はありません。

子どもに成長をもたらす6つの「C」

「成功」の定義が刻々と変化しており、将来もますます不透明な現在、子どもが社会生活を営める自立した大人に成長するために何ができるのでしょうか。

キャシーさんが長年の研究に基づいて提唱しているのが、ハードスキルとソフトスキルのバランスを取る「6C」というものです。6Cとは頭文字Cで始まる6つのステップで、次のようになります。

1. Collaboration(コラボレーション)

子どもが他の人たちと共同作業することで、6Cの基礎となる部分です。

2. Communication(コミュニケーション)

子どもが他人との交流つまりコラボレーションの中で培っていくのが、コミュニケーションの力。まだ言葉が話せない乳幼児でも、独り言ではなくやり取りすること、つまり会話が重要になります。

3. Contents(コンテンツ)

子どもが何を学ぶか、何を伝えるか、何を表現するか。これはハードスキルに属します。

4. Critical Thinking(クリティカルシンキング)

クリティカルシンキングには、たとえば情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、疑問を持ったり調べたりして自分なりの結論を出す能力があります。

思い込みで行動したり決めたりせず、批判的な態度でものごとに対応する力です。

5. Creative Innovation(クリエイティブイノベーション)

問題や状況を新しい視点で捉え、解決方法を探す力。子どものクリエイティビティを伸ばすには、まず、子どもが何かを作り出すこと、図画工作などを自由にさせ、それを応援する環境づくりが大切になります。

6. Confidence(コンフィデンス)

最後のCは自信。1〜5までのCを経験しその子なりに習得していくと自信につながるわけです。ひとつのことに自信が持てれば、そこから新しい活動や経験へと行動範囲が拡がっていきます。

この中で、キャシーさんがすべての基本としているコラボレーションについて見ていきましょう。

日常生活でコラボレーションはたくさん取り入れられる

コラボレーションが最初に来るのは、人間は他人との交流や関係性からすべてを学ぶからだとキャシーさんは述べています。

つまり、コラボレーションは人の行動の基礎になる重要なソフトスキル。ビジネス界でもこのスキルは重要視されてきています。

新生児は他人とのコラボレーションが生存に不可欠なのですが、他人と関わることとそこから学ぶプロセスはもちろん一生続きます。

キャシーさんは著書の中で、レストランで親子がそれぞれスマホを見ていて会話がない状況が増えていることを憂慮しています。

スマホやダブレットなどのデバイスは素晴らしいツールですが、それに育児を任せっきりにはできません。

子どものコラボレーションを促進する例として、家族でボードゲームをしてルールを守ることや自制心を学ばせたり、大人のプロジェクトや家事に一緒に取り組ませることがすすめられています。

同じ目標に向かって協力し合う状況がコラボレーションには不可欠。学校の部活動やチームスポーツもそれに当てはまります。

自宅でできるコラボレーションは?

コラボレーションの機会は、外出自粛中の自宅でもたくさんあるはずです。

兄弟でおもちゃをシェアしたり順番にゲームをしたりすることもコラボレーションの一種。振り返ってみると家庭のさまざまな面ですでにコラボレーションをしていることに気づくでしょう。

また、在宅勤務中の人は仕事でコラボレーションをしている姿を子どもに見せるチャンス。

家庭内とは違うコラボレーションをする親からもきっと学びがあるはずです。また、ストレスの多い現状でも夫婦間で協力し合い、コミュニケーションを取り合う姿は見本になるでしょう。

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遊びは子ども主導であるべき

キャシーさんによると、6Cを身につけるには楽しく遊ぶことがベストなのだそうです。楽しい時の方がそうでない時よりも学びが多いのだとか。

親が子どもと遊ぶ時に仕事や家事が終わっていないと、ついつい親のペースで進めてしまいます。まず親自身が遊びに専念できる時間や環境を作りましょう。

遊びというコラボレーションをしながら、同時にコミュニケーションを取りコンテンツを学ぶ機会にもできます。

家事を一緒にやるのもコラボレーションのひとつ。洗濯ものをたたみながら布の種類や色について、料理をしながら素材や手順について話し合ったり。

自宅でどうコラボレーションの機会を増やすかについては、親のクリエイティビティが試されます。

そして、キャシーさんは子ども目線で遊ぶことが大事なポイントだと述べています。

遊びは受け身ではなく、自発的なものです。わたしたちが学ぶ方法も受け身ではありません。カウチポテトで座っているよりも、実際に行なうことでもっと学べるのです。

(中略)

一般に遊びはひとりでやるのではなく、社会的なやりとりがあり、反復して行なうものです。遊ぶ度に新しい発見があります。子ども目線で遊ぶこと、親が仕切るのではなく子どもに仕切らせるのが本当の遊びです。

親御さんは手出ししてどのように遊ぶかを決めないでくださいね。環境を整えて、子どもがやりたいように支援してあげるのが役立つのです。

NPRより引用翻訳

キャシーさんがいうところのハードスキルは、学校や先生に任せられる部分が多いかもしれません。

しかし、6つのCのようなプロセスは、特に就園前の子どもには親が深く関わっていく必要があります。

今は近所の友だちとも自由に遊べませんが、お父さんもお母さんも子どもと一緒に過ごす時間が増えた今だからこそ、子ども主導の遊びの時間を増やしてみてはどうでしょう。

よく考えてみれば、この6Cは大人のわたしたちが成長し続けるのにも欠かせないステップです。

『Becoming Brilliant: What Science Tells Us About Raising successful Children』は、日本語版『科学が教える、子育て成功への道』(キャシー・ハーシュ=パセック、ロバータ・ミシュニッフ・ゴリンコフ共著)が刊行されていますので、6Cを詳しく知りたい人はチェックしてみてください。

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Source: NPR,『科学が教える、子育て成功への道

Image: Shutterstock