世界には、ロックダウン解除の方向にハンドルを切る都市が出てきましたが、少なくとも2021年後半(ワクチンが開発される可能性のある)までは、感染拡大を制御しながらの様子見運転が続きそうです。

行政や企業、個人それぞれが、手探りで新しいルールを作る必要に迫られている状況といえますが、できるだけ幅広いベストプラクティスのなかから、実情に沿ったオプションを検討したいところ。

そんななか、ケンブリッジ大学(セントキャサリンズカレッジ)の研究所が、新型コロナウイルスの蔓延を抑えるための275の方法を示してくれました。

専門家の意見やSNSの投稿、研究論文などを横断的に検証する手法、「ソリューション・スキャニング」によって集められたナレッジのなかから、スペース時間物理的接触の切り口でピックアップしました。

スペース編:運用法が感染予防のカギ

人と人との距離をあけるソーシャルディスタンシングは、世界で共通してメインの感染予防戦略です。

目に見えず性質も未解明の敵に対して、私たちができる最善は、人同士が一定距離を保てるシステムやルールを組み込むこと。

論文では、感染リスクをできるだけ避けるためのスペース運用アイデアが紹介されています。

会議や研修

・規模、頻度とも最小限に

・可能なものはオンラインや屋外で開催

といった方法を検討。

会社の共有スペース

空間内の人の密度を調整するために、

・休憩時間に空き部屋を開放

・必要性の低い共有スペースは閉鎖

・利用人数を制限し、1人出たら1人入る

・特に食堂などでは、順番が来たら通知される仕組みを設計

といった運用が奨励されます。入室通知システムに関しては、一部のスーパーではスマホアプリを活用して実現しているようです。

また、

・エレベーターは人数制限をもうけ、できれば身体障害者/高齢者専用に

・階段や通路を一方通行に(スペースに余裕がなければ時間で区切るなどして)

・建物の入口/出口をわける

といった運用も検討したいです。

通勤時

ソーシャルディスタンシングを実施する工夫として、

・自転車、自動車通勤のための駐車場、駐輪場を用意

・勤務時間をずらす

といった対策をとっているところも多いでしょう。

個人でできることとしては、

・公共の場で音楽やラジオをオフにするか小さくして、近づいてくる人を察知

・電車はできるだけ混んでない時間帯や車両を選択

といった方法があり、Crowdless電車混雑回避ナビゲーションなんかのアプリが利用できそうです。

時間編:材質の工夫や「時間あけ戦略」に着目

ウイルスが不活性化するまでの時間を考慮した運用アイデアも挙げられています。

新型コロナウイルスは、不活性化するまでの時間は、付着したものの材質によって変わることが知られています。

たとえば、プラスチックで約7時間ステンレスで約5.5時間段ボールで約3.5時間銅とエアロゾルでは約1時間との研究結果があります。

また、新型コロナウイルスがガラスなどの表面で最大72時間紙などでは最大24時間生存する、という話を聞いたことあるかもしれません。

こうした性質を考慮して、次のような材質の工夫ができます。

・共有テーブルの表面などを銅版でカバー

・ビニール袋の代わりに紙袋を使用

また、時間あけ戦略では、以下の対策がルーティン化しそうです。

・部屋や座席に余裕があれば、最後に利用してからの時間を最大化してローテーション

・レジ袋などのストックの再利用は、古いものから順に

・急いで開封する必要のない配達物は、袋に入れて放置

・マスクや使い捨て手袋などは袋を二重にして、72時間放置してから廃棄

・高齢者には、早い時間帯に共有エリアを独占利用してもらう

システム編:非接触化の方向へ

3密を意識しすぎるあまり、盲点となりがちな物理的接触についても(ヒトとの接触より感染リスクは低いとしても)、十分な工夫を取り入れて感染リスクを減らしたいです。

企業の対策

具体的な対策として、

・指紋認証やタッチパネルを廃止

・音声認識を活用

振動リストバンドWebアプリを活用して顔に触れない習慣づけ

といったテクノロジーの取捨選択が進みそう。

また、以下のようなルールを採用することで接触が減らせます。

・水筒や弁当を持参

・食事は自分のデスクで

・ホッチキスなど物品の共有やフリーアドレス制を廃止

個人の対策

たとえば買い物では、

・食品は包装してあるものを選び、買わない商品には触れない

・レジ係が商品に触れる必要がないようにバーコード面を上に

・非接触決済を利用

といったやり方をぜひ検討してみましょう。

物理的接触を減らそうとするとき問題になるのは重い扉ですが、

・ドアなどを押すときは肘や背中で

といった方法が提案されていて、ドアを肘で押すための3Dプリントできる補助具を紹介してくれています(カスタマイズしたものを購入することも可能です)。


30の方法をご紹介してきましたが、ここではカバーしきれていない課題も275の方法の中から探せます。

検査体制(パルスオキシメーターの常備)からペットの扱い方(猫も自宅隔離)まで、幅広いテーマが取り上げられていますので、ニュー・ノーマルへの切り替えのためにも、一度目を通しておくことをおすすめします。

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Image: iWissawa/Shutterstock.com

Source: BioRISC