もし毎月現在の収入にプラスして5万4000円をもらえたら、あなたはそのお金を何に使いますか?

そんな夢のような話、と思われた方。実はこれ、アメリカの最年少市長として有名なMichael Tubbs氏主導のもと、米カリフォルニア州ストックトンで実際に行なわれた社会実験なのです。

この実験は、ベーシックインカムに関する興味深い取り組みとして、プロジェクトを開始したときにこちらの記事で取り上げていました。

実験前には「人々はお金を手にすると働かなくなる。経済に悪影響だ」など、有識者からのネガティブな見解もありましたが、プロジェクトをはじめてみたら意外な成果が見えはじめているとのこと。

いったい人々の行動や意識にどのようなインパクトがあったのでしょうか?

米国でベーシックインカムの検証がスタート。その課題と可能性とは?

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お金と引き換えに手に入れた時間

時計を両手で抱えるところ
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The Guardianによれば、今回支給されたお金で人々が最も価値を感じたものは時間だったとのこと。

これまで、「少しでも多くのお金を稼ぐために」といくつもの仕事をかけ持っていた人が仕事を減らしたり、長時間労働をしていた人が働く時間を減らすことで、代わりに親孝行をする時間・休息をとる時間・コミュニティの集まりに参加する時間が確保できたというのです。

「タイムイズマネー」とはよく言ったものですが、まさに時は金なり。いや、一旦過ぎ去ると取り戻せないのが時間ですから、今回被験者は5万4000円でお金よりも貴重なものを手に入れたと言えるでしょう。

住まい・キャリア・ストレスレベルが改善

木々の下で両手を広げるビジネスマン
Image: Rawpixel.com/Shutterstock.com

ある被験者は家族と一緒に過ごす時間が増えただけではなく、今よりも年収が上がる会社へ転職するための準備と求職活動をする時間を確保し、仕事を変えることに成功したというのです。

そのほかにもCBSでは、次のような変化が起きたとも紹介しています。

  • これまでは犯罪の多いエリアに住まざるを得なかったが、今回の資金を元手により安全な住居へ移ることができた
  • お金に少し余裕ができたことでよく眠れるようになってストレスが軽減された
  • お金にまつわる不安が軽減されたことで娘に感情的にあたらなくなった

以上のように、さまざまな面でこの5万4000円の価値を実感している被験者が多くいるのだそう。

この結果から気づいた2つのこと

お金と時計をそれぞれ持つ人
Image: TheaDesign/Shutterstock.com

この結果だけをみると「やっぱり世の中お金が必要なんだ」と思われる方が多いでしょう。

確かに今の私たちにとっては必要不可欠なものです。今回の結果をみても、衣食住環境、仕事、身体的・精神的な負担など、お金に余裕があれば解決できるものも多くあります。

しかしそれ以外で、今回の結果から改めて気づかされたことが2つありました。それは「忙しいときほど立ち止まって物事の優先順位を見極めること」「お金と時間の関係」です。

「忙しい」「時間がない」が口癖になっていませんか?

たとえば、日頃から「これやりたいな」「あれやらなきゃな」と思っていることをつい時間がない、忙しいと言い訳して後回しにしてはいませんか?

今回転職に成功した人は、お金に余裕ができたことでじっくりと次のキャリアを考える時間を確保することができ、実際行動に移せたわけですが、この一連の流れから私たちが学べることはたくさんありますよね。

日々生活していくためにお金は必要ですし、そのためには仕事をしなければなりません。

ただ、そのことに囚われて、収入を上げるための行動(たとえば副業の可能性を探る・本業の仕事のスキルアップのために勉強するなど)が置き去りになってしまっていては、一生今のサイクルから抜け出すことはできないのです。

私たちはつい目の前のことに囚われがちですが、忙しいと感じるときこそ一旦手をとめて、何に時間をあてるべきなのか、今どのような行動が必要なのかを見直すべきなのです。

その費用はコスト?それとも投資?

今回多くの人がお金に縛られなくなったことで価値のある時間が手に入ったと証言していますね。これは私たちの生活でも同じことが言えるでしょう。

「節約」というとお金のイメージがありますが、私は常にお金時間、それにかかる手間なども含めて総合的に判断を下すように意識しています。

たとえば、同じものが近所のスーパーより100円近く売られているからといって、遠くのスーパーまで買い物に行くことがいつも正しい判断とは限りません。

その遠くまで行く時間や体力、車ならガソリンも消費しますが、「そのリソースをそこにあてるだけの価値がその差分の100円にあるのか?」といった考え方が重要だと思います。

普段は外食をしない、カフェでお茶も飲まない、と決めて数百円~数千円節約するのもいいでしょう。

ですが、たまの息抜きでそうした時間を確保することがその後の自分の仕事の生産性アップにつながるなら、その費用は「コスト」ではなく「投資」と考えることもできます。

お金は大切ですが、お金に常に追いかけられる人生だといつまでも終わりが見えず、お金よりも大切なものを見失いがち。

自分にとっての幸せとは何か?」もあわせて、バランスを見失わないようにすることが大切です。


このプロジェクトは現在も進行中とのこと。より長期的なスパンでのプロジェクトが、どのような結果をもたらすのか引き続き注視したいですね。

新しい年を迎えるこのタイミングで今一度日頃の自分の行動、そしてそれに伴う時間やお金の価値について、見直してみるのも良いかもしれません。

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Image: Vasilyev Alexandr, Gwoeii, Rawpixel.com, TheaDesign/Shutterstock.com

Source: The Guardian, CBS