12月、日本では「歳末たすけあい」と呼ばれる募金活動があり、私の住むアメリカでも多くの団体が寄付金集めに注力する季節です。
団体や活動にお金を寄付したことはあるけれど、その具体的な使い道や寄付が及ぼす影響について考えたり、知っている人は私を含めてあまりいないのではないでしょうか?
あなたなら現金を受け取ったらどう使う?
貧困国を援助する場合、現金がいいのか物品がいいのかという論点を聞いたことがありますが、それについて興味深い実験が行なわれました。
カリフォルニア大学バークレー校の経済学者ミゲル氏は、貧困国の人たちに直接現金を提供する非営利団体Give Directlyと協力して、現金がどのように使われているかを探ったのです。
この実験では、ケニアの田舎の貧しい人たちが現金をもらう人ともらわない人に分けられ、1万500世帯ほどが約1000ドル(約11万円)を受け取りました。これは平均で対象家庭の年収の75%にあたるほどの額です。
また、その地域に注入された現金は地元のGDPの約17%に相当したそうです。
研究者たちがその現金の行方と影響を1年半にわたって調査したところ、食料や薬、生活必需品の購入のほか教育費などに使われたことがわかりました。
地元ビジネスにもお金が注入され、売り上げや収益が上がり、雇用者の給料アップにもつながったそうです。
地元ビジネスにも還元されるというポジティブな循環については、現金1ドルに対して地元の経済活動が2.6倍に増えたことがわかりました(インフレは1%未満だったそうです)。
直接的・間接的に効果があるのは「現金」
この実験では、受け取った現金の使い道は受取人それぞれに任されました。
また、現金は寄付とは呼ばれずに「unconditional cash transfer(無条件の送金)」と表現されています。この点からも、慈善事業というよりも一種の助成金のような扱いだったと思われます。
この実験に参加したGive Directlyは2008年に設立された非営利団体で、特にウガンダ、ケニア、ルワンダの貧困家庭にスマホを使って現金を送っています。そしてどうお金が使われているかもモニターしています。
「NPR」の中で、Give Directlyの共同設立者でプレジデントのフェイさんは次のように語っています。
(物品や職業トレーニングといった形での寄付より)現金での援助のほうがずっと効果的であり、お金を受け取った人はもちろん、受け取らなかった人たちにも間接的に良い影響がある。
たしかに、現金ならその人が必要なものを買ったり、必要なことに使うという自由があります。
ミゲル氏は、非営利団体や政府が何らかの援助をする際には、受け取る人の利益だけではなくもっと幅広い経済的な影響を理解することが大事だと述べています。
ささやかな額だけど誰かの役に立てばと漠然と寄付をしていましたが、それが実際にどんな影響を与えるのかについてはあまり意識を向けたことがありませんでした。
額は少なくてもそれが大きな影響を生むこともある。それを意識しながら、今年の寄付をしたいと思います。
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Image: Lemon Tree Images/Shutterstock.com
Source: Give Directly, NPR