今、時短への取り組みが盛んになってきていますが、それでも避けられないのが、成果を出すこと。とりわけ目標がある職種なら、やはり目標を達成することでしょう。
最近は週に4~6日、ほぼ毎日研修に奔走しているのですが、若手・中堅にかかわらずこんな質問をよくいただきます。
「残業をするなと言われるいっぽうで、目標の達成も求められる。どうしたらいいですか?」といったジレンマ。
答えは簡単。徹底的な「逆算思考」にあります。今回は、短時間で、より確実に目標を達成する鍵となる「逆算思考」を紹介します。
逆算思考には「目標の細分化」が必要不可欠

逆算思考には、目標の細分化が必要不可欠になってきます。
ただし、半期・四半期・月間単位の目標だけでは、細分化は足りません。無自覚のうちに「達成トレンド」から逸脱してしまいかねないからです。
後になって取り返すのが難しくなるということは避けたいところ。
週単位、できれば日単位まで目標を細分化し、「この1週間/この1日でどこまでやるのか」を設定するのです。
やるべきことが明確になるばかりか、無自覚のうちに「達成トレンド」から逸脱している、といったことはなくなります。
ヨミ(見込み)管理で達成の確度を高める

逆算思考には、(数値目標がある職種の場合)目標に対して足りない数値=「見えない数字」を把握することが重要となってきます。
この「見えない数字」の精度を高めると、達成の確度をより高めることができるのです。私がリクルートグループに勤めていた時に鍛えられた「ヨミ管理」はおすすめです。
ヨミ管理とは?
ヨミとは「見込み」のことで、次のよう4段階に分類されます(基準は事業や組織で異なります)。
- Aヨミ(確度80%以上)
- Bヨミ(60%以上)
- Cヨミ(30%以上)
- Dヨミ(29%以下)
たとえば、週間目標が100万円だとしましょう。その場合、ヨミの内訳は次のようになります。
①週間目標:100万円
②成約済:30万円
③ヨミ:54万円
※ヨミの内訳
- Aヨミ:30万円×80%=24万円
- Bヨミ:30万円×60%=18万円
- Cヨミ:30万円×30%=9万円
- Dヨミ:30万円×暫定10%=3万円
「②+③=84万円」なので、目標まで16万円足りないことがわかります。
この場合、早めにA~Cヨミの結論をもらうことが最優先事項です。そしてうまくいかなかったときに備えて、ヨミを増やす対策を講じる、というわけです。
リクルートグループに在籍していた時は、これを1日単位で行なっていたので、より確実に目標を達成することができました。
逆算思考、ちゃんとできてる?

目標の進捗状況について尋ねられた時、次のように答えられることが理想です。
「問題ありません。目標に対して、今の段階で達成に必要な額は、XX円です。
あと〇日で達成できるよう、打ち手を△△に絞って進めています。このように進めれば、計算上は達成できます。
ただ、リスクは、□□です。●●で対処することを考えています。」
これが逆算思考ができている人のイメージです。
あなた自身がどれだけ逆算思考ができているか、チェックしてみませんか? 数値目標を持つ職種用の設問ですが、イメージを持っていただけると思います。
【逆算思考のセルフチェック】
1.目標達成の期日を“自分で”決めている
指示された期日ではなく、リスクヘッジをした前倒しの期日を決めている。「バッファ」と呼び、10~20%余裕をもたせるのが一般的。
2.前倒しの期日までの「残日数」を言える
例えば、残日数が10日で、目標達成まで200万円足りない場合、「1日あたり20万円が必要」といったように「1日あたり、どこまで達成すれば良いのか」を明確にすることができる。
3.目標に対して、見えない数字を把握している
「見えない(足りない)数字」を知ることは、目標達成への難易度や対策を講ずる上で必要不可欠。
4.見えない数字に対し、3倍の仕込みをしている
見えない数字が200万円の場合、600万円分の仕込み(商談・DM・セミナー等)をしている。前提は、30%程度しか成約に至らないとの計算。業種・職種によっても、仕込みは3倍が良いのか、5倍が良いのかは異なる。
5.想定される最悪の事態にも備えている(景気が悪くなっても対応できる等)
景気悪化・競合の値引き・為替相場の変動等、想定される逆風への対策ができている。
いかがでしょう。数値が明確ではない職種であっても、「1・2・5」は適用できるでしょう。
もし答えが全部「Yes」なら、逆算思考型だと言えます。いっぽう、ほとんどが「No」なら、積み上げ型だと考えて間違いありません。
まず、上記の設問が「Yes」になるよう、目標達成に向けたプロセスを設計しておきましょう。
逆算思考で着実に計画設計を

今回は、「逆算思考」で目標達成力を高める方法を紹介しました。目標は、一所懸命に頑張れば達成できる、というものではありません。
確実な達成は「逆算思考」で計画を組み立てることが鍵です。
やるべきことを絞ってリスクヘッジをすることで、ムダな残業をすることなく、よりタフに、よりスマートに目標を達成することができるでしょう。
今回のメソッドが、あなた個人、もしくは職場のご同僚のお役に立てれば幸いです。
伊庭 正康 株式会社らしさラボ 代表取締役

リクルートグループ入社。残業レスで営業とマネジャーの両部門で累計40回以上の表彰を受賞。その後、部長、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年、株式会社 らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理等、年間200回以上の研修に登壇。リピート率は9割以上。近著、『メンバーが勝手に動く最高のチームをつくる プレイングマネジャーの基本(かんき出版)』『計算ずくで目標達成する本(すばる舎)』『できるリーダーは、「これ」しかやらない: メンバーが自ら動き出す「任せ方」のコツ(PHP研究所)』『仕事の速い人が絶対やらない段取りの仕方』(日本実業出版社)』『数字を上げる人のセールストーク・営業のキホン(すばる舎)』等多数。「無料メールセミナー」も好評。
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