敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ。
今回は科学雑誌の発行や教育的な科学コンテストを運営する米国の非営利団体Society for Science & the PublicのCEOを務めるマヤ・アジュメラ(Maya Ajmera)さんの仕事術です。
98年の歴史を持つSociety for Science & the Public(以下Society)は、非営利科学誌『Science News,』を発行し、学生を対象にしたSTEM(科学、技術、エンジニアリング、数学)分野のコンテストを運営しています。
現在そのCEOを務めるマヤ・アジュメラさんは、以前、助成金を提供するGlobal Fund for ChildrenというNPOを設立しています。
アジュメラさんに、仕事のこと、幼少期から大学までどのように科学を学んできたか、書類が散乱するデスク、リラックス方法などを聞いてみました。
氏名:マヤ・アジュメラ
居住地:ワシントンDC
現在の職業:Society for Science & the PublicのCEO、科学雑誌『Science News』の発行人
現在のPC: MacBook Pro
現在の携帯端末:iPhone
仕事の仕方を一言で言うと:マルチタスク人間
── これまでの略歴と現在の仕事に至るまでの経緯は?

おもしろいことに、今している仕事のほとんどは、若い頃から関わってきたことと関連しています。
子どもの頃は、科学に興味があり、父が科学雑誌『Science News』を読むのを見て育ちました。そのうちに自分でもその雑誌を読むようになりました。
7年生のとき植物学の研究所で働き始め、理数系に強い高校に進学し、Westinghouse Science Talent Search(Societyが主催しているコンテストの1つです)に出場。大学は神経科学を専攻していました。
大学卒業後、特別研究員の奨学金をもらって東南アジアを旅したことがきっかけで、公共サービスと若者の機会を拡大する方向にキャリアの舵を切るようになりました。
この東南アジアの旅の間に、駅のプラットフォームで教育を受ける子どもたちを見て、「自分がやらなければ」という気持ちになり、コミュニティベースで最も恵まれない若年層を助ける組織のサポートに特化したGlobal Fund for Children (GFC)をゼロから作り、18年間トップを務めました。
5年ほど前にSociety for Science & the PublicのCEO職に就くことを要請され、『Science News』の発行人も引き受けました。
これでパズルのピースがカチっとはまった感じです。
Societyは、人類の発展に大いに貢献する科学に対する理解を促し、その価値の認識を促進するNPOです。
世界的レベルの科学コンテストの運営者として最もよく知られており、Societyが発行する科学誌『Science News』は受賞歴があります。また、助成金とリソースを教師、学校、その他の教育とSTEMを推進する新規NPOに提供しています。
最後になりましたが、私は、もう20年以上、子どもの本を書いています。
その中でも、『Children from Australia to Zimbabwe』『Faith』『To Be an Artist』『Be My Neighbor』は、私のお気に入りの本です。今夏上梓予定の次の本が『Back to School』。
子どもの本を書くことは創造性を発揮できるので、精神的に健全でいられます。
過去を振り返ってみると、STEM教育を拡大させたいという自分の興味に大きなインパクトを与える組織のトップを務める幸運に恵まれているのは素晴らしいことです。
サイエンス・フェアやSTEMを学ぶことに興味がある若者にどれほど大きな意味があることかわかっています。昔は私もそういう若者の1人だったから。
それに加えて、NPOの運営方法と起業家のスキルを前職で習得したおかげで、現在の役職に就いて、100年近い歴史のある組織の埃を払い、活気を与えることができています。
──最近の1日の流れは?
仕事の日は、戦略会議や資金調達会議など、とにかく会議の連続です。あとは山ほどのメールの処理ですね。
現在は、Regeneron Science Talent Searchの準備に追われています。
これは、高校生を対象にしたわが国で最も古く権威ある科学と数学のコンテストで、Societyはこの大会を開催するためにあると言えるぐらいの大きなイベントです。
私は、ロジスティックスから表彰式のスピーチ(新しいテレプロンプターを使う予定です)、大会が終わった後に予定されている高校生たちのCapitol Hill訪問、評議会まで、あらゆることの会議に参加しています。
それから、来たるSociety100周年記念祝賀についての会議やInternational Science and Engineering Fair(高校生を対象にした最大の科学とエンジニアリングの国際フェア)の新規スポンサーを見つける会議にも参加しています。
── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?
カレンダーがないと生きていけません。
地下鉄やLyftに乗車中に新聞を読むので、『New York Times』と『Washington Post』のアプリも欠かせません。
WhatsAppでインドにいる親戚や大好きな友人たちと連絡を取り、Spotifyでクラシック音楽を聴いてリラックスしています。
お天気アプリと株式市場アプリは日に何度かチェックしています。
そうそう。Orangetheoryのフィットネス・アプリも気に入っています。Twitterで数人をフォローしていますし、自分でもTweetしようとは思っていますが、それほど熱心にはできていません。
── 仕事場はどんな感じ?

Societyの建物にぴったりの古い木の机があります。
Societyはとても古いブラウンストーンを張った建物に入っていて、そこが長い間私たちの拠点になってきました(Societyはもうすぐ100周年です)。
この建物は古くて修復が必要ですが、私のオフィスは自然光がたくさん差し込むので、気に入っています。
私の机にも紙の書類がありすぎるので、ペーパーレスにできたらと思いますが、無理ですね。旧式の人間なんです。
── お気に入りの時間節約術やライフハックは?
たまにLyft(アプリでリクエストする配車サービス)を使って通勤しています。
公共の交通機関を利用すると電話ができないのですが、Lyftで配車された車中にいるときは電話ができるから。
2つのNPOのCEOを務め、ジョンズ・ホプキンス大学大学院のセミナーで教鞭を取り、6歳児の母でもあるので、何かと助けが必要なのです。
幸い、ハウスキーパーとナニーがいますし、Instacart(食料品の即日配達サービス)も使っています。すごく恵まれていると自覚していて、申し訳ないと思うぐらいですね。
──仕事場で採用しているプロセスで、興味深いもの、珍しいもの、こだわりがあるものは?
私には直属のチーフたちがいて、各部署を担当しています。
隔週で1時間の会議をして、各部署からトップラインの報告を受け、組織の諸問題を話し合っています。とても効率的ですし、複数の建物に部署が分散しているので、チーフ全員が他部署のことを知るには良いやり方です。
それから、各チーフとオフィスで週に1度15分間の1対1のミーティングをします。これにより、私は保留になっている事をチェックできますし、個人的に話すこともできます。常にチームメンバーのために時間を取れるように努め、迅速に話し合えるようにしています。
── どんな人たちからどのように仕事を助けてもらっている?

エグゼクティブ・アシスタントがいないとやっていけません。彼女は、私のスケジューラーであり、物事を確実に成し遂げるために必要な人です。
それからスタッフ主任もとても頼りにしています。私に寄せられた特別なリクエストをすべて扱い、私が注意を向けるべき重要なものを選別する手助けをしてくれます。
たとえば、私は最近ニューオーリンズで開催されるSTEM Ecosystems Conferenceに招かれて話をすることになっていますが、そのプレゼンテーションを作るにはずいぶん考えて手間をかけなければなりません。
なにしろ400人の出席者の前で行うプレゼンです。スタッフ主任がそのプロジェクトを主導してくれています。彼女は、評議会のサポートと管理もしていて、エグゼクティブ・チームには無くてはならない存在です。
私生活では、娘が生後4カ月の頃から来てくれているナニーがいないと、私は仕事ができません。娘が学校に通うようになった今でも、このナニーは私たちの生活に欠かせません。
夫もすばらしいパートナーで、家事を平等に分担しています。私が毎週日曜日に食料品の買い出しをして、夫は毎朝娘に学校に行く支度をさせます。おかげで私は20分長く寝てから階下の台所に降りていきます。
他には、週に1回トレーナーについてワークアウトをしていて、ストレス解消になっています。週に2、3回ジョギングできる気候になるのが待ち遠しいです。
たくさんの人たちに助けてもらっているおかげで、現在のキャリアを歩む機会を得ていることに感謝しています。
──ToDoは、どうやってトラッキングしている?
小さな黒いノートをどこにでも携帯しています。
1日の終わりに、翌日すべきことをすべて書き出します。現時点で、そのノートは何十冊にもなり、過去10年、20年をさかのぼって自分がしたことをチェックできます。
──どのように充電したり休憩していますか?
日中はオフィスの中を歩いて同僚たちに挨拶して回るのが好きです。天気が良い日に少し長い休憩時間が取れると、外に散歩に出かけます。
オフィスの近所にスターバックスがあったのですが、最近閉店してしまったので、ショックです。
自宅では、6歳の娘を中心に過ごしています。今日あったことを娘と話します。娘はカードゲームとボードゲームに夢中なので、私たちは一緒にTroubleをして遊ぶのが大好きです。
読書も楽しみの1つ。
ベッドの横のナイトテーブルには『New Yorkers』誌が山積みになっていて、読むべき記事に印がつけてあります。
たまに、寝る前にテレビを見てぼーっとするときもあり、『Murphy Brown,』『Homeland,』『Grey’s Anatomy』『The Crown』『This Is Us』などを見て、後ろめたい喜びを感じています。
あと、夫とAmazonで『Homecoming』、Netflixで『The Bodyguard』などのシリーズ物をまとめて見たこともあります。
──今、何を読んでいる? おすすめの本は?
今は、Lisa Brennan-Jobs(Steve Jobsの娘)著『Small Fry』を読んでいます。
ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で講座を持っていることから、最新のイノベーションやポリシー、子どもや若者に関わる国際的発展におけるリーダーシップの考え方をキャッチしていくために、たくさん読書しています。
最近読んだAnand Giridharadas著『Winners Take All』と、Walter Isaacsonが書いたレオナルド・ダ・ビンチの伝記もとても良いのでお勧めします。私は伝記が大好きなんです。
──今日あなたがされたのと同じ質問をしてみたい相手はいますか?
- CRISPR (Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)研究の先駆者であるFeng Zhangさん
- ベンチャー・キャピタルのAmplo 社CEOのSheel Tyleさん
- Apple で特別なプロジェクトに携わるDivya Nagさん
- Birchbox社の共同設立者兼First Round Capital社のパートナーでもあるHayley Bay Barnaさん
- Instrumental社(製造テクノロジー企業)の設立者兼CEOのAnna-Katrina Shedletskyさん
いずれもSocietyの科学コンテストに出場した人たちです。
──これまでにもらったアドバイスの中でベストなものは?
情熱にケチをつける人や物事を否定的に見る人には関わらないようにすることです。
批判してくれる人は必要かもしれませんが、「君には無理だ」とか「そんなことできやしないよ」と言う人は遠ざけるべきです。
──挑戦中の課題は?
アメリカで科学者やエンジニアになりたいと思っているすべての若者がその機会を得られるようにしたいと思っています。
教育、特に良質なSTEM教育を受けられるかどうかは、子どもが育つ環境に大いに左右されてしまう現状を何としても変えたいと思っています。
Societyが、科学コンテスト、支援活動、非利益活動を通して、この問題の解決に向けて強力なステップを踏んできたことを誇りに思います。でも、まだこの先も長い道のりがあります。
戦い続ける準備はできています。
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Nick Douglas – Lifehacker US[原文]