専門店ができるほどブーム真っ盛りの「ホットサンド」。
そのホットサンドの魅力に憑かれ、Facebookで「ホットサンド倶楽部」というコミュニティを立ち上げたのが、大林千茱萸(ちぐみ)さん。
これを、フォロワー数7500人を超えるまでに成長させた大林さんは、2018年10月末にはレシピ集の『ホットサンド倶楽部 もっと! いつでも、どこでも、おいしいレシピ!!』(シンコーミュージック・エンタテイメント刊)を出すなど、ホットサンド界の一翼を担うホットなお方です。
さて、ホットサンドといえば、カフェで注文する定番レシピ。「自分で作るには敷居が高い」と思っていませんか?
実は、流れとコツさえつかめば作るのは難しくありません。今回はホットサンド作りのイロハを、大林さん宅で教えていただきました。
ホットサンド作りに必要な道具は?
そもそも、ホットサンドを作るには、どんな道具が必要なのでしょうか?
答えはシンプル。「ホットサンドメーカーが1つあれば大丈夫です」と大林さん。
ホットサンドメーカーは、主に「直火式」と「電熱式」があります。
「直火式」は四角いミニサイズのフライパンを2枚、向かい合わせたような形状をしています。把手をつかんで開き、そこに具を挟んだパンを収めて、また閉じて火にかけられるという、いたって簡単な構造です。
真ん中が縦にくぼんだタイプ、猫などの焼き柄が入れられるタイプなど、バリエーションはあります。まずは、基本形の四角いタイプだけを用意しておけば大丈夫だそう。
ホットサンドの作り方:その1「かき揚げホットサンド」
一口にホットサンドと言っても、使用できる具材はまさに多種多様。大林さんのレシピ集を見ると、納豆、イカ、カボチャ、みたらし団子、おでん、とんかつなど…ほぼなんでもアリの世界。
今回は、初めてチャレンジする人でも失敗しにくく、驚くほどおいしい意外な素材ということで、メインの食材は「かき揚げ」。これは、惣菜屋で売っているふつうのかき揚げで構いません。
パンも普通の食パンでOK。ホットサンドメーカーからはみ出る大きさであれば、周囲をカットし、具材と一緒に挟めばよりボリューミーになり一挙両得だとか。
さらに、「グルテンフリーが良いなら米粉パンを、ライ麦パンや全粒粉パンやバゲット、ベーグルなど、パンはどんな種類でも使えます」と大林さんは言います。
他に用意するのは、めんつゆ(希釈タイプを薄めず原液で)、七味唐辛子、練からしを少々。
手順1:めんつゆをパンに塗る
めんつゆを、まんべんなく両方のパンに塗り広げます。
大林さん「めんつゆは接着剤代わりにもなり、端っこがはがれるという、よくある問題が予防できます。つゆだくにした方が、味が濃い目でパンチのきいた風味になります。また、こんな感じで水分を加えた方が、出来上がりがふっくらするという利点もあります」
手順2:かき揚げをパンに乗せる
めんつゆを塗り終えたら、片方のパンにかき揚げを乗せます。次いで、練からしをめんつゆで溶いて、かき揚げに塗ります。
大林さん「初心者ですと、かき揚げがパンからはみ出たらどうしようと心配しますが、多少はみ出ても気にする必要はありません」
そして、七味唐辛子をパンにパラパラと振りかけます。
手順3:パンをホットサンドメーカーにセット
かき揚げの乗っていない方のパンを、乗っている方のパンにかぶせ、手で軽くプレスして余分な空気を逃がします。これをホットサンドメーカーに移して、再度プレスします。こうすれば、きれいに焼けるそう。
今まで見てきたとおり、大林さんは、まな板の上でめんつゆを塗るなどの工程を済ませてから、ホットサンドメーカーに乗せています。最初からホットサンドメーカーにパンを置いて、調味料を塗ったり、具材を乗せたりするのはアリでしょうか?
大林さん「簡単な具材ならアリですが、ホットサンドメーカーの上だと途中でソース類を塗る、キャベツ類など細かい具材を挟む場合はコンロまわりが汚れてしまう。オススメは安定感のあるまな板の上ですべてを組み立てることです」
手順4:ホットサンドメーカーを火にかける
ホットサンドメーカーを、ガスコンロの上に乗せて火にかけます。
最初は強火で、ホットサンドメーカーが十分熱くなったら、火を弱めます。
大林さん「冬の早朝は少し時間がかかりますが、それでも5分もあれば完成します。何度もひっくり返す必要はありません。それは1回で十分で、片面2~3分ずつ焼くのを目安にしてください。また、パンの焦げ具合をチェックするため、開けて確認してもかまいません」
パンの表面全体に多少焦げ目がついたら完成です。カットするため、まな板にいったん戻します。
手順5:カットして器に移す
食べやすい大きさに切り分けます。波刃のパン切りナイフでなく、よく切れる通常のナイフ(包丁)を使います。
大林さん「まず、刃先の部分を使って、切り取り線を作るイメージでパンの片側に浅い切り込みを入れます。その切れ目に包丁の刃全体を合わせ一気に押し込むと、きれいに切れます。あとは、好みの器に移し替えて完成です」
ホットサンドの作り方:その2「カレーホットサンド」
ホットサンドは、汁気の多い具材を使って作ることもできます。例えばカレー。
手順1:サイコロ状に切ったパンとカレーを混ぜる
具材を挟むための2枚のパンとは別に、1枚のパンを用意します。このパンは、サイコロ状に切っておきます。
大林さん「今回使うカレーは、レトルト食品ですが、事前に温めておく必要はありません。最初は冷たいままでも、ホットサンドメーカーに入れるとすぐに加熱できますので」
サイコロ状のパンはカレーに投入します。パンが充分にカレーを吸い込むよう混ぜ合わせます。
手順2:パンを凹ませて具材を乗せる
汁を含んで嵩の大きくなった具材をパンに乗せる前に、スプーンの腹でパンを押し凹ませ、「堤防」を作ります。
大林さん「凹みは浅くて大丈夫。これは液だれしないための工夫です。こうしたシンプルな工夫で、ホットサンドは、より仕上げがきれいに、そしておいしくなるのです」
具材を乗せ、好みで粉チーズを軽く振ります。
この後の工程は、かき揚げホットサンドと同じ。汁漏れもなくきれいにカレーホットサンドが出来上がりました。
食べてみると、かき揚げホットサンドもカレーホットサンドも、想像を超えるおいしさ。安い食材でも、ワンランク上の風味にアップするので、ホットサンドメーカーの購入費用(数千円)は、すぐに元が取れます。
大林さんは、「ホットサンドは、冷蔵庫の余りものの活用に最適」と語るように、家庭内のフードロス対策にもなって一石二鳥。
興味がわいたら、ホットサンドを食生活の一部に取り入れてはいかがでしょうか。
大林千茱萸(おおばやし ちぐみ)さんプロフィール
Facebook「ホットサンド倶楽部」の部長。「昭和天皇の料理番」として宮内庁東宮御所大膳課主厨を務めた渡辺誠氏に師事し、フランス料理と国際儀礼を学ぶ。テーブルマナー講師にして、映画『100年ごはん』(2013年)の監督でもある。本作は“観て+食べて+語る”形式で、世界の250か所で上映。いまも映画と共に旅を続け世界の食事情をリサーチしている。『ホットサンド倶楽部 もっと! いつでも、どこでも、おいしいレシピ!!』は、2012年刊の『こんがり! ホットサンドレシピ100 はさんで焼くだけ、おいしくたのしい』に続く第2弾のレシピ集。

Source: 『ホットサンド倶楽部 もっと! いつでも、どこでも、おいしいレシピ!!』
Photo: 鈴木拓也
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