敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ子育て術「HOW I PARENT」シリーズ。今回は「世界中の知られざる不思議」を紹介する情報サイトAtlas Obscuraのクリエイティブディレクターを務めるディラン・サラスさんの子育て術です。
ディラン・サラスさんって何をしている人?
ディラン・サラス(Dylan Thuras)さんは、「人間より猫の方が多い日本の島」や「医学の不思議を陳列するアメリカの有名博物館」、「科学的に説明できないオーストラリアのピンク色の湖」など「世界中の知られざる不思議」を紹介するサイト、Atlas Obscuraの創設者兼クリエイティブディレクターです。
また、最近は「世界の素晴らしいもののサンプル集」と称して、『The Atlas Obscura Explorer’s Guide for the World’s Most Adventurous Kid』という子ども向けの本も共著しました。
私生活では2児の父親でもあるサラスさんの子育て術を聞いてみました。
氏名:ディラン・サラス
居住地:ニューヨーク州ローゼンダール
職業:Atlas Obscuraの共同創設者兼クリエイティブディレクター
家族構成:妻のミシェル・エネマーク(フリーランスのアニメ制作者です)、息子のフィニアス(3歳半。愛称はフィン)、娘のジーン(17カ月)
──最初に、家族とキャリアについて教えてください
10年前、Atlasは情熱を注げる大好きなプロジェクトでした。
当時の私はフリーランスの編集者をしていたので、Atlasの仕事は夜中や週末にしていましたが、年ごとに進化してどんどん規模が大きくなっていきました。
2013年には、私は会社のあらゆる面を監督しながら、昼も夜も無理を重ねて働きました。その頃、息子のフィンが生まれることになり、こんな仕事の仕方をしていたら、積極的に子育てに参加する良い父親にはなれないと突然悟りました。そろそろ違うことをするべきときだったのです。
それで、お金を工面してCEOを雇い、私はクリエイティブディレクターになりました。その後、2人目の子どものジーンが生まれ、今度は都会を離れることに決めました。
今は、ニューヨーク都市圏から2時間ほど北にあるローゼンダールという町に住んでいます。
妻と私は、当面仕事より家庭生活を優先することに決めました。それには幾分か犠牲がつきものです。
チャンスを逃したと感じることもあります。でも、人生は長いですが、子どもが小さい時期はあっという間に終わります。
もちろん、子育ての渦中にいるときは、永遠にこれが続きそうな気がして、「やれやれ。いったいいつになったら大きくなって手間がかからなくなるの?」と言いたくなります。
でも、そうつぶやいた後で、こんな状態もせいぜい5年ぐらいだと気づきます。
そう思えば、ヒーローにならなくてもいいし、すべてを一度にしなくてもいいと思えるようになります。ですから妻は今は仕事を持っておらず、私もオフィスに行くのは週に2回か3回にしています。
子どもたちとこれほど多くの時間を過ごせるぐらい融通の利く仕事ができて、信じられないほど幸運だと思います。

──子どもがいる自宅で仕事をするってどんな感じ?
家で仕事をしていると、次々といろんなことが降ってくるので、仕事と家庭の境目はいつも曖昧になります。
突然子どもたちが2人揃って叫び出して手が付けられなくなり、パートナーから助けを求められることもあります。その代わり、日中散歩したりできるといった、利点もあります。
私が裏庭で小さな建築プロジェクトをしていたときは、フィンと私がそれぞれ自分の道具箱を持ち寄って作業しました。こういうことができるので、家で仕事をする価値は十分にあります。
──朝のルーティンは?
我が家の朝は何でもアリです。娘には5時半起床というとんでもない習慣があるので、妻と私は交替で娘と一緒に起きます。
朝食は、普段はグラノーラかオートミールといったシンプルなものです。
フィンはウォルドルフ・スクール(シュタイナー学校)に通っているので、前の晩に息子のお弁当を詰めます。その時点で妻か私のどちらか寝ている方は8時半ごろまで眠ります。
起きている方は、相手に優しくしてあげてもいいという気分のときは、コーヒーを持って来て、「あと10分で起きる時間だよ」と言います。息子は9時に学校に行きます。
そのあと、ジーンは昼寝をするか、誰かと一緒に出掛けます。
──パートナー以外に、誰からどの程度育児を手伝ってもらっている?
残念ながら、私たち夫婦の実家は両方とも遠く離れています。
私の実家はミネソタ州です。妻の母が最近亡くなったので、今年の夏は大変でした。
たまにベビーシッターに来てもらいますが、定期的に助けてもらうことはありません。ある程度は意図的にそうしています。とは言え、大人は自分の時間を持つことも必要だと思うときもあります。

── 「これがないと生きられない」というガジェット・アプリ・チャート・ツールは?
最初の子どもが小さかった頃は、Wonder Weeksという子育てアプリを使っていました。
息子の育児が不安で、私たちはそのアプリに釘付けになりました。でも、娘が生まれると、もうそのアプリは卒業しました。
言い古された言葉ですが、子どもも2人目となると、親は1人目のときとはまったく違うというのは真実です。
私は今生きているこの世界のことを見るのが好きなので、スクリーンで見る番組は厳選したものを見ています。
Netflixに素晴らしい番組がいくつかあり、たとえば、『Puffin Rock(日本版ではウーナとババの島)』は良いと思います。他には、『Hilda(日本版ではヒルダの冒険)』という新しい番組も良さそうな感じがするので試しているところです。
今は、子どもより私のスクリーンを見る時間の多さが心配です。注意力散漫での子育ては問題です。
日に何度も携帯電話を見るのは、実際的な理由がいろいろあるせいかもしれませんが、ついつい見てしまうこともあるはずです 。
1日に携帯電話を見た回数をトラッキングできるMute というアプリを使い始めたので、何とか45回まで減らすようにしています。
── 子どもたち用の持ち物は?
私たちはすごく外出の手際が良いわけではありませんが、外出に役立つものは持っています。
旅行用のベビーカーはシートが外に飛び出して車のシートになるので、1つ大きいものを余分に持ち運ばないですみます。
あと、どんな椅子にも取り付けられる折り畳み式の子ども用補助シートも持っています。食事に行きたいレストランには、子ども用のハイチェアが足りないかもしれません。
「旅行用キッズパック」というそれ1個あれば用が足りる究極のバッグを作りたいといつも思っています。でも、子どもは時の経過とともに大きく変化するので、そのパックも常に変わり続ける必要がある点が問題です 。

──親として一番誇らしく思う瞬間はどんなとき?
フィンとジーンが遊びながら身の回りの世界と深く関わっているときです。
田舎暮らしの良い点の1つは、フィンが庭で独りで遊んでも安全で、親の私たちはそれを見守っていられることです。
彼がクリエイティブで自由な空間に没頭しているのを見ると、「ここで暮らすことにして良かった」と思います。

──子どもがクリエイティブで自由な空間に入るためにしていることは?
たとえば、今暮らしている環境がそうです。都市で暮らしていた頃も、できなくはありませんでしたが、ずっと複雑でした。
それ以外には、親が監視していない時間を息子にたくさん与えることです。ある程度まで、息子の生存能力を信頼することです。
小さな鋸とハンマーを使わせていますし、ナイフを手に持っていろいろな物を切らせます。親はそこにいますが、息子には自由が利くように長いリーシュをつけている感じです。
子どもは実に有能です。そして、親が子どもに自由をたくさん与えるほど、子どもの能力は高くなり責任感も強くなります。
──お気に入りの家族の儀式はありますか?
とてもささやかでシンプルなことですが、我が家では食事のときにキャンドルを灯します。
たまにはフィンが火をつけて食事の終わりに吹き消すこともあります。とてもささやかなことですが、ちょっとした魔法です。
最近、私は息子と裏庭でキャンプをしているのですが、息子は私がテントを張るのを手伝って、2人で小さな焚火をします。
こんなことを言うと、なんと牧歌的な家庭生活をしているんだろうと思われるかもしれませんが、実際には、ドタバタで、家は散らかっているし、慌ただしくて、やることが多すぎて参っています。
──子どもの癇癪に対処するコツは?
ときには癇癪(かんしゃく)を起しても放っておいていいと思います。
子どもがイライラしていたら放っておいて、気が鎮まってから対峙すればいいでしょう。
子どもが気持ちに余裕を持てるようにしてやり、「イライラしているんだね。それでも大丈夫だよ」と認めてあげます。
──子育てで一番難しいことは何?
目の前の瞬間に本気で集中して大事にすることです。
今は世の中の動きもニュースのサイクルも恐ろしく速い時代ですし、誰もがSlack、メール、Twitter、Instagramに気を取られています。
ですから、誰にとっても、目の前の瞬間に意識を集中させる生活をすることは、大変です。でも、私はできるだけそうしたいと思っています。かなり失敗してはいるんですけどね。
Michelle Woo – Lifehacker US[原文]
Photo: Courtesy of Dylan Thuras