敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ子育て術「HOW I PARENT」シリーズ。今回は作家のローラ・ジューンさんの子育て術です。

ローラ・ジューンさんって何をしている人?

ローラ・ジューン(Laura June)さんは、最近出版した回顧録『Now My Heart Is Full,』の中で、親になったおかげで、アルコール中毒だった母との辛い記憶からどれだけ救われたか書いています。

そんなジューンさんに、娘のゼルダちゃんとの生活を語ってもらいました。

ジューンさんは、赤ちゃんでも独りの時間が必要だという主義で、母親になったおかげで今まで以上に創造性が高まったそうです。

氏名:ローラ・ジューン

居住地:ニューヨーク州アーモンク

職業:ライター

家族構成:夫のジョシュ、娘のゼルダ(4歳半)、チワワ

──最初に、家族とキャリアについて。ここまでの人生は概ね計画通り?それとも予想外のことが多かった?

私はまったく何も計画していませんでした。

27歳で夫と出会い、29歳で結婚しました。2人とも子どもを持つかどうかは2013年の夏まで決めかねていました(先延ばしにしていたのはほとんど私の方でした)。

その後、すぐに妊娠して2014年2月に娘のゼルダが生まれました。私はキャリアに関しても人生に関しても全く計画を立てておらず、成り行き任せでしたが、まるで魔法のようにうまく物事が運んだのは実にラッキーでした。

──朝のルーティンは? 子どもにスムーズに外出の準備をさせる裏ワザは?

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ローラ、ジョシュ、ゼルダ
Photo: Sylvie Rosokoff

娘が大きくなるにつれて、仕事の仕方は全く変わりました。

娘が17カ月のときモンテッソーリ式のスクールに入学させました(ここは、働く親のために子供を長時間預かる託児所の役目も果たしています)。

娘が3歳になるまで、私はいつも遅れて登校する子どもに対して「だめね。先生に失礼じゃないの」と思っていました。

でも、自分の子どもが少し大きくなった今では、親たちがいつも遅刻する理由がわかりました。

私の娘は、ぐずぐずしたり私を遅刻させる天才なんです。

私がどんなに早く起きても、どんなに早く外出の支度を始めても、午前9時までに学校に到着できません。学校は自宅からたった4分で行けるところにあるのにですよ。娘と一緒に改善の努力はしていますが、そろそろ諦めの境地に達してきました。

諦めてもいいかなと思う理由の1つは、私は自宅で仕事をするので、オフィスに決まった時間にいなければならない仕事スタイルに比べるとスケジュールの融通がかなりきくからです。

30分ぐらいで、大急ぎで朝食を取りコーヒーを飲み、神経質な老犬に餌と薬を与え、お弁当を詰めて、娘に服を着せ、娘のカバンに荷物を詰めなければなりません。

娘を学校に送っていったあと、やっと自分の1日が始まります。シャワーを浴びて、本当の服を着てメールを見ます。

小さな子どもに「何か質問はある?」と聞いてはいけない

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──パートナー以外に、誰からどの程度育児を手伝ってもらっている?

この点も、娘が大きくなるにつれて変わりました。

娘が生後6ヵ月のとき、私は仕事に戻り、以来自宅で文章を書く仕事をしています。

当時は、娘の面倒を見てくれるナニーがいて、我が家の生活にすっかり溶け込んでいました。私がずいぶん家にいたので、彼女と一緒に食事や仕事をして、何かを決めるときも一緒にして、ずいぶん長時間過ごしました。

今はゼルダが週5日学校に行くので、たまにベビーシッターを頼むときもありますが、弟と弟のガールフレンド(私の親しい友人なんです)が、いつも近所にいるので、一晩あるいは週末に娘の面倒を見てくれたりします。

これほど信頼できる人たちに子どもを預けられるのはラッキーです。

娘も生まれたときから知っている人たちで、お互いに大好きなので、叔父さんと彼女に会うのを楽しみにしています。ニューヨーク市ではこんな好運に恵まれた人は少ないので、私は本当にラッキーだと思います。

── 「これがないと生きられない」というガジェット・アプリ・チャート・ツールは?

ゼルダのナニーから勧められたBaby Connectというアプリを、ゼルダが6ヵ月のときから3歳になるまで使っていました。

最初はこれでゼルダの食事と睡眠をトラッキングしていましたが、結局睡眠だけになりました。

私は娘が夜の睡眠を十分とれているか、お昼寝したかにこだわりを持っていましたし、ゼルダの面倒を見る人なら誰でも情報を入力することができる点も便利でした。

ですから、私が家にいないときは、アプリを開いて見て、「よしよし。ゼルダは今日、お昼寝をしたのね」とわかるわけです。

でも、それ以上に、台所にテープで貼ってある紙のカレンダーを使っていますし、ToDoリストとしてはGoogle Keepを使っています。

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──子育てをするようになってから仕事のやり方は変わった?

はい。私ははるかに効率的になりました。

娘の学校の時間が9時から5時15分までなので、私が仕事できる時間はその間に限られます。

たっぷり時間があるように見えますが、仕事の合間に家事もずいぶんこなしています。電気の修理屋さんに電話したり、洗濯機を回したりですね。

ちょっと考える時間や休憩が必要なときは、自宅の周りをぶらぶら歩いたり、食料品の買い出しに一っ走りしています。

でも、総合的には、娘の存在が私の創造性を高め、より熱心により速く仕事をせざるを得なくさせています。

私を含めて、ライターというものは、先延ばしが大好きです。私は今でも先延ばしはしていますが、以前よりずっと少なくはなりました。

──今のリラックス方法は?

ゼルダが寝た後は、仕事を少しすることが多いですが、ベッドや自分のオフィスに座って仕事をするよりも、夜はキッチンカウンターに立って、スナックを食べながら友人たちとチャットするんです。

Slackのルームにもいくつか入っていて、1つは母親たちだけが参加しているルームなので夜はたいていとても活発になります。

私がシャワーを浴びる頃には、ジョシュが帰宅するので、一緒に外に出てポーチで暗闇の中に座り、話をしたり音楽を聞いたりします。今でも誰より夫と話すことが一番楽しめます。

毎晩1時間か2時間そうやって一緒に楽しんでいます。以前はもっと映画やテレビを見たりビデオゲームをしたのですが、今は、平日の夜は、ただ一緒に座って遅くまで語り合います。

──親として一番誇らしく思う瞬間はどんなとき?

私が本気で心から誇らしく思えるのは、ゼルダをよく眠らせたときだけです。

もともと子どもが持っている資質を自分の手柄みたいに思うのは気が引けるので、誇らしく思うときなどほとんど無いと思います。

我が子を育てるという考えは、私には実に魅力的です。親と子の間で一方通行でなくお互いに働きかける関係だから。

それにより親の側も成長できます。でも、ゼルダが生まれた瞬間から、私はとても頑張ってゼルダが良く眠れる子にできたと思います。

彼女はたくさん眠りますし、寝付きも良く、睡眠スケジュールも整っています。さらに重要なことは、睡眠に対する態度が良いことです。

ベッドに入って横になり、お話を読んでもらうのが好きですし、暗い所で独りになっても平気です。ですから、私以外の人にゼルダをベッドに入れてもらっても大丈夫なので安心しています。

いつかこの「良い睡眠」フェーズが終わるかもしれないという不安はあるものの、ほぼ5歳になった今も安定した状態です。このことを誇らしく思っています。

たとえ、娘が生まれつきこういうタイプで、私からの影響は全くない可能性があるにしてもです。

──一番情けないと思う瞬間はどんなとき?

親として情けないと思う瞬間は山ほどあります。

たとえば、こんな最悪のことがありました。

娘がまだ生まれたばかりの頃、揺りかごで横になっているのに、なかなか眠ってくれません。それで、私は口汚く罵りの言葉を吐いてしまいました。

私の場合、すっかり自暴自棄になりフラストレーションを感じて忍耐を失ったときが最悪です。

今は娘も少し大きくなって聞きわけが良くなりましたし、私も親として成長したので、こういうことはずいぶん無くなりましたが、それでも、忍耐を失って娘にぞんざいになってしまうと、いつも「私って最悪」と思います。

だって、娘はわざと私にフラストレーションを与えているわけでもなければ、まして、私を傷つけようと思っているわけでもないのですから。

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──子どもにはあなたのどんなところを見習って欲しい?

3人家族の我が家では、お互いにオープンで正直であることが何より大切だと思っています。

私が育った家庭では、家族がお互いに心を閉ざしていたので、家族で悩みを話しあう機会がほとんどありませんでした。

それは家族の在り方として好ましくないことだと思ったので、娘には、どんな状況でもありのままに受け入れられている自分、愛されている自分、サポートされている自分を感じて欲しいと思っています。

──お気に入りの変わった儀式はありますか?

ゼルダはひとりっ子でいつも注目を独り占めしているせいだと思いますが、ベッドタイムの儀式には家中みんなが参加すべきだと主張します。

それで、家にお客が泊まるときは、大人が全員ベッドサイドに並んで、くすぐったり(くすぐられるのが大好きなんです)ハグやキスをしていいよ、と娘に言われるのを待ちます。

娘はベッドタイムはとてもお行儀が良いのですが、1日の終わりに家中の注目を集めたがるんです。仕方がないですね。

──今までもらった子育てに関するアドバイスで心に残っているものはありますか?

私の母は、7年前に亡くなりました。

ゼルダが生まれる前でした。でも、私の一番小さい弟がまだ赤ちゃんだったころ、私は6歳ぐらいだったと思いますが、赤ちゃんでもたまには独りの時間が必要なのよ、と母が言ったことを覚えています。

「弟が起きるときは急かさずに数分待って自分で起きるようにさせてね。そして急かさずに考える時間をあげてね」と母は私に頼んでいました。

これは私の娘にも応用できる素晴らしい作戦だと思います。娘が起きた音がしたとたんに私が子ども部屋に入っていくと、娘の機嫌は最悪になるようですし、娘を独りにしておくと、ときにはまた眠りに落ちています。

──子育てで一番難しいことは何?

家族の力学にもう1人増えると、必ず複雑さが増します。

私は複雑な人たちとの関係も好きですが、赤ちゃんがいるときは、両親で子育てをしている家族だと、どうしても素早く効率的な決断をする術を学ぶ必要があります。

ゼルダが生まれた当初は、私たち夫婦にはこれは難しいことでしたが、ゼルダが少し大きくなった今は、3人で物事を決めるようになりました。

3人で議論して、意見を尊重し合うのはとても大変なときがあります。3人のうちの1人が子どもで必ずしも大人と同じ理屈で動いていないですしね。

でも、これはとても充実感があり、私の生活を複雑で素敵な人たちで満たすことにしたのは、ベストな決断だったと思います。すべてが大変になりましたし、独りのほうが簡単で、勝手に決断しても何のおとがめも無いのですが。

── 1日のうちで一番好きな時間はいつ?

平日は、ゼルダを学校に迎えに行った後、2人きりで過ごす夕方の時間です。

週末は、家族3人でベッドの中でぬくぬくしながら話をする朝の時間です。

──子育て中の親がクリエイティブになるコツは?

私はクリエイティブな仕事をしているので、これは重い話ですね。

でも、クリエイティブな仕事についていない人であっても、クリエイティブな趣味を持って、その趣味をする時間を作ることは大事だと思います。

私は植物を育てたり、縫物やキルトを久々にやってみようとしています。

問題はそのための時間を作れるかどうかであって、疲れすぎているせいで自分の中にあるクリエイティブなエネルギーが無いということではありません。

子どもが生まれた当初は自分の創造性が失われた時期もありましたが、結局は戻ってきました。そして、今はこれまで以上にクリエイティブになったと感じます。たびたび、娘と一緒にいろいろなものを作って色を塗っています。

──子育てとキャリアを両立させている親御さんたちに伝えたい一言

自分とパートナー(もしいればですが)の期待値をうまく管理することです。

私の気分が最悪だったのは、すべてをしようとして何もできていないと感じたとき。

今でもそんなところはありますが、家が散らかっていたり、何かをするためには別のことに目をつむる必要があることを受け入れると、自分にもう少し優しくなれます。

めちゃくちゃを受け入れることがベストな選択であることもあります。完璧主義だと(以前の私はそうでしたが今は違います)、なかなかそういう姿勢にはなれません。

──他に読者に伝えたいことは?

娘が大きくなるにつれて、私が娘のためにできることは、娘と一緒にいない時間を作ることだと気づきました。

つまり、仕事の時間だけでなく、私自身のための時間や夫と2人で過ごす時間を作ることです。

私が幸せだと、娘もとても幸せになり、それが目に見える形で現れるからです。

他人の力と親の態度が揃えば、子どもは納得する

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Michelle Woo – Lifehacker US[原文

Photo: Sylvie Rosokoff