敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ子育て術「HOW I PARENT」シリーズ。今回はソーシャルゲーム会社Zyngaのシニアプロデューサーを務めるタミ・シグムンドさんの子育て術です。

タミ・シグムンドさんって何をしている人?

タミ・シグムンド(Tami Sigmund)さんは、『FarmVille』、『Words With Friends 2,』、『Zynga Poker』、『CSR Racing 2』を世に出したソーシャルゲーム会社Zyngaのシニアプロデューサーです。

11年間ビデオゲームの制作に従事してきたシグムンドさんは、ゲーム業界をゲームに熱狂して社会から取り残されている人たちがもっと参加しやすい場所にしたいと思っています。

そんなシグムンドさんに、キャリアと2歳半の息子を育てるシングルマザーとしての生活についてを聞いてみました。

氏名:タミ・シグムンド

居住地:テキサス州オースティン

職業:ソーシャルゲーム会社Zyngaのシニアプロデューサー

家族構成:私、息子のヘンリー(3歳)、救助犬ラブラドールのケソ

──最初に、家族とキャリアについて。ここまでの人生は概ね計画通り?それとも予想外のことが多かった?

私の人生で計画通りに行ったことなどほとんどありません。

でも他にやりようがなかったのです。高校を出ると、大学では専攻を何度か転々と変えましたが、結局どれも向いておらず、最後は看護のコースに落ち着きました。

学校時代は、『EverQuest』ゲームに夢中になってエネルギーをもらい(間違いなく不健康ですね)、ゲームに関する趣味のブログを運営していました(今はやっていませんが)。

ゲーム業界で連絡できる人たちが何人かできて、2007年にMetaplaceという新しいゲーム会社用のコミュニティを管理する仕事をオファーされました。

そのとき、2年間費やした看護学校から離れ、夢を追いかけるという決断に直面しました。そんな夢が自分にあったことさえ、それまでは気づいていませんでした。

そのチャンスに飛びついた私は、サンディエゴに引っ越してからは、PopCap、 Playdom、 Disney、 Riotなどのゲーム会社で働き、現在のZyngaに至っています。

途中で夫(今は元夫です)に出会い、2015年9月に男の子を授かりました。

子どもを持つことは計画していましたが、その後すぐ離婚することは計画外。去年の夏に息子と親友と一緒にオースティンに引っ越して、今はフルタイムのビデオゲームプロデューサーの仕事と子育てを両立しています。

子育ては今でもサンディエゴに住んでいる息子の父親と一緒にしています。私が仕切っているんですけどね。

──朝のルーティンは? スムーズに外出の準備をする裏ワザは?

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Photo: Tami Sigmund

私は生活のあらゆる面をルーティン化しています。

もしかしたら、ゲームプロデューサーを生業にしている影響かもしれません。

普段は朝6時半には起きてシャワーを浴び、身なりをざっと整えたら、7時ごろにヘンリーを起こします。たまにヘンリーが早起きしてしまい、やむなく私の部屋で『Daniel Tiger』のビデオを見せることもあります。

私が身支度を終える前にヘンリーが化粧品をトイレに投げ込まないようにさせる秘策です。

ヘンリーを幼児用トイレに座らせて、一緒に歯を磨き、洋服を着せます。日によっては、ここまでスムーズに進み7時半には朝食を食べに階下に降りていることもあれば、ヘンリーといちいち小競り合いになって、8時まで食事を始められないことも。

コツは、どのステップでもヘンリーに選択させることです。

服を着るときは、ヘンリーに着たい服を選ばせるので、ヘンリーが「自分で決めた」ことになります。

階下に降りるときは、「ママにだっこしてもらって降りる?それとも自分で歩いて降りる?」と聞きます。でも、「階下に降りない」という選択肢は絶対に許しません。

基本的に私が彼にして欲しいことをさせるようにしますが、やり方は彼が選びます。

対立や癇癪も避けるようにしています。

子どもの言いなりになっているように見えるかもしれませんし、そのせいで我が子がわがままな人間にならないで欲しいと思いますが、朝のルーティンをこなすにはこれしかやりようがありません。

ああ、幼児ってまったく!

8時半までに車で5分の学校まで子どもを送って行き、9時までにオフィスに着けるようにしています。

他人の力と親の態度が揃えば、子どもは納得する

他人の力と親の態度が揃えば、子どもは納得する


──誰からどの程度育児を手伝ってもらっている?

いろいろな人の助けをかなり借りています。

テキサスには家族はまったくいませんが、ヘンリーの父親が遠くから完璧な子育てを私と一緒にしてくれています。

2人でヘンリーのためになることなら何でもしようと早い段階で決めました。お互いにヘンリーが側にいるときは、平和で文化的であるようにしています。

ヘンリーの父親がたびたびオースティンに飛んできて、3人で動物園や遊び場に行くなど、家族として一緒に過ごしています。主な休暇は家族として3人で過ごしています。

ヘンリーの父親は金銭的サポートを十分にしてくれて、ヘンリーの学費も半分払っていますし、一緒に特別なことをしにヘンリーを連れ出します。従来の家庭環境が無くても、ヘンリーが自分は普通の人より「欠けている」ものがあると感じていません。

それから、長年の親友であるケイトリンと一緒に暮らしているので、彼女から大いに助けてもらっています。

彼女がいるおかげで私はトイレに5分間安心して入っていられますし、私が仕事で手が離せないときは、代わりに息子を学校に迎えにいってくれます。

それに、駆けずり回って雑用を片づけたり、子どもから離れて楽しみたいときに、急に子守を頼んでも引き受けてくれます。

私の両親も我が家を訪ねてきたときは、助けてくれています。

ヘンリーもFacetimeでおじいちゃんとおばあちゃんと話すのが大好き。テクノロジーのおかげで、離れたところにても祖父母と話せてつながりを持てるのは素晴らしいですね。

それから、フルタイムのプレスクールが無いと絶対にやっていけません。

ヘンリーは、ウォルドルフ式アウトドアファーム(シュタイナー教育)のスクールに通っていて、私が専業主婦だったら息子に与えたいと思うような家庭的な環境を提供してくれています。

本当にありがたく思っています。この学校が近くにあるので今の家に住んでいるぐらいです。

── 「これがないと生きられない」というガジェット・アプリ・チャート・ツールは?

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我が家のkitchen helper

飛行機に乗っているとき、車で長距離移動しているときやヘアカットをしているとき、iPadは天の恵みです。

息子のトイレトレーニングを始めたときは、ご褒美シールを使っていましたが、お菓子のオレオがヘンリーの人生に登場すると、すぐに効果が無くなりました。

あと、ガジェットと言えるかどうかわかりませんが、ヘンリーのkitchen helperがかなり私の役に立っています。これがあると、ヘンリーが料理に参加できますし、私が料理している間、足元でうろうろしなくなります。

それから、個人的には、YNAB (You Need a Budget)でお金の管理をしています。私はお金の管理は苦手なのですが、YNABがあると、自分が財務の天才ではないかという気分になれますし、私の生活を本気で変えてくれました。

──子育てをするようになってから仕事のやり方は変わった?

もちろん変わりました。

ビデオゲーム業界は要求が多く、過酷な長時間労働で有名ですが、今の私にはできません。

私の職場はずいぶん融通をきかせてくれますが、それでも、できるだけ効率的に働いています。

オフィスに9時から5時までいて(ゲーム業界のプロデューサーとしては稀なこと)、その間に最大のアウトプットをしなければなりません。

職場にいるときは、私の電源スイッチは常に「オン」で、1日に山ほど仕事を詰め込みます。

もともとダラダラしたタチではありませんでしたが、今は働くシングルペアレントとして、家庭と仕事の両方で守るべき砦があるので、ある程度きちんとした秩序が必要なのです。

──今のリラックス方法は?

ヘンリーがベッドに入り、夜の片付けを終えてからやっとリラックスできます。

夜8時ごろになると、これから2時間どのように過ごすか考えます。

多くの夜は、この時間は昼間に終わらなかった仕事を片づける時間になりますが、ビデオゲームにのめり込んだり、テレビを見たり(今は『Dear Black People, Sharp Objects)』を見ています)できるときもあります。

週末は「自分の時間」を十分とれません。

私もカラオケや映画に行けるように、週に1晩ベビーシッターを頼むようにしていますが、「ママの時間」が早く始まるので、早めに帰宅しています。

週末にヘンリーがお昼寝することにするときは、ヘンリーが起きているときできなかった雑用をして過ごすことが多いです。

そして、ほとんどの夜は10時ごろになると、Kindleで読書に没頭します(今はStephen Kingの『The Outsider』を読んでいます)が、10時半にはたいてい眠りに落ちています。

もしかしたら、私は常にストレスがある状態でも、あまりリラックスする時間がなくても生きていけるようになったのかもしれません。

──親として一番誇らしく思う瞬間はどんなとき?

「息子が初めておまるで用を足せたとき」かな(2日前のことなんですけどね)。

でなければ、「息子が初めてプレスクールに行った日」かもしれません。

でも、正直言って、子育てに関して最も誇りに思った瞬間は、オースティンに引っ越すことにして、シングルペアレントとして生後20カ月の息子を抱えながら、それをかなりスムーズに成し遂げたことです。

ここに引っ越してきたことは、子育てに関して私ができたベストな決断だと思っています。なぜなら、希望通りのクオリティの生活を息子にさせられる経済的余裕が持てているから。

このことは、サンディエゴという美しい土地で常に悩みの種でした。私はカリフォルニアが大好きですが、そこでは、家庭と仕事のバランスが取れた生活ができるようになるとは思えませんでした。

──一番情けないと思う瞬間はどんなとき?

ヘンリーが微熱があるとき、解熱剤をのませてプレスクールに行かせていることに罪悪感を感じています。

ほとんどの働く親が少なくとも月に1度はしていることかもしれませんが、みんな口をつぐんでいます。

病欠や有給休暇の日数には限りがあるからです。

私の生活では、息子が最優先ですが、仕事があってこそ、請求書を支払い息子を養えるのです。ヘンリーはPFAPAと呼ばれる定期的な発熱を繰り返しています。これは、自己炎症疾患で、伝染性はなく、本人もそれほど辛いわけではありません。

それで、息子に解熱剤をのませて登校させると、私は1日中罪悪感に苛まれて、結局早めに息子を迎えに行きます。でも、こうすることで、私は大事な会議に出られるのです。人生はときに過酷です。

──子どもにはあなたのどんなところを見習って欲しい?

私は「穏やかな親」でありたいと思っています。

もちろん完璧にはできていませんが、たいていヘンリーのお手本になるように振る舞っていると思います。

息子がこういうふうに振る舞う人間になって欲しいという振る舞い方で子育てをしています。

安全が脅かされそうなとき以外は、絶対息子に怒鳴りません。子どもを実年齢以上の理解力のある人間として扱うJanet Lansburyのメソッドを活用して、息子には物事を詳しく説明します。

──お気に入りの家族の儀式はありますか?

まだ生活に根付いた儀式は多くないのですが、アウトドアで過ごす時間を大切にしています。

週末や祭日は、新しい遊び場を探したり、ハイキングや動物園、プール、テーマパークなどに出かけてとても活動的に過ごしています。

オースティンは、今は夜8時でも気温が39℃もありますが、アウトドアの楽しみには事欠きません。私はアウトドアのアドベンチャーを綴るブログさえ持っています。もっと頻繁にアップデートしないといけないんですけどね。

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Photo: Tami Sigmund

──今までもらった子育てに関するアドバイスで心に残っているものはありますか?

知り合いからのアドバイスではありませんが、癇癪を「電車に似たようなもの」と説明しているこの記事は素晴らしいので、私が息子とすったもんだするときはいつも頭の中で思い出しています。

内容はシンプルで、「さまざまな感情があることは、さまざまなトンネルがあるのと同じこと。私たちはトンネルをくぐって旅をしている列車なのです」と言うこと。

私の場合、対立を避け、困難な感情を避けようとして、自分の感情を完全に封印することが多いです。

特に子どもを育てているとこのような感情の扱い方は問題があります。ですから、私はまずトンネルを思い浮かべ、息子がどうやってトンネルの向こう側に出るか考えます。制止も遠慮もダメ。物事に対処するために通過しなければならない流れです。

──片親でする子育てで一番難しいことは何?

何もかも? あはは。冗談です。

正直言って、物理的に最も大変なのは息子と私が揃って病気になったとき。2人揃っておなかを壊して、吐き続けた週末は特に大変でした(プレスクールで感染したみたい)。

子どもが具合が悪いのを見るも、病気の子どもの面倒を見るのもとてもつらいですが、親子揃って病気になったら…これ以上の地獄はありません。

ずっとつらい状態でいなければなりません。

自分も具合が悪いのに、毎晩眠らず子どもを看病して、毎朝子どもを起こし、食事を作り、子どもを楽しませるなんて、想像を絶する過酷な仕事です。

やる価値はもちろんありますが、「退屈」ってどういう感覚か思い出すこともできません。

── 1日のうちで一番好きな時間はいつ?

お昼寝の時間以外にですか? だとしたら、朝です。

子どもはたっぷり寝たのでご機嫌、今日はどんなおもしろいことがあるのかなとワクワクしながらコーヒーを飲み、水泳教室に向かいます。

長い1日の終わりには、私はヘトヘトになっていますが、朝はすべてが白紙に戻って、またスタートする感じがします。

── 子どもがビデオゲームをすることについてどう思う?

私にとってビデオゲームはテレビや映画と同じ感覚です。

ダメなものは山ほどありますが、素晴らしいものもたくさんあります。

私は、自分でしたことが無いゲームのリサーチには、Common Sense Mediaのお勧めを参考にしています。

うちの息子は今はまだビデオゲームをするには小さすぎますが、もう少し大きくなったら息子がやりたいと思うようなゲームであって欲しいと思います。

個人的には、戦闘物より、何かを作り上げていくゲーム((MinecraftTrove)かパズルゲーム(Professor LaytonZelda)が好み。流血や武器とは無縁の素晴らしいゲームがたくさんあります。

大きくなるにつれ子どもは、『Fortnite』、『Call of Duty』、『GTA』のような戦争ゲームや生き残りゲームにどうしても出会ってしまいますが、こういうジャンルのゲームに関して私からアドバイスするとしたら、親は、子どもがゲームのコンテンツを扱えると思ったら、子どもと一緒に座ってゲームをすること。

そして、子どもとゲームについて話をしましょう。

それからボイスチャット機能がついているゲームには要注意。大人の監督下にない「よその子ども」がマイクをつけていると、とても危険なことがあるからです。

──子育てとキャリアを両立させている親御さんたちに伝えたい一言

自分を同僚と比較しないでください。

家族がいるせいで、子どもがいない同僚より仕事が劣っているのではという悩みにとらわれがちです。

子どもが病気で家にいなければならないときや、職場にいる時間が短くなっても、罪悪感を感じないでください。

生活とはバランスであり、人によってリズムが異なる振り子が生活の中のさまざまなポイントで振れています。仕事の質は職場で過ごす時間の長さとは無関係です。

育てなければならない子どもがいるということがモチベーションになり、子育てをしていない同僚にはない活力になることだってあるんです。

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Michelle Woo – Lifehacker US[原文

Photo: Courtesy of Tami Sigmund