敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ子育て術「HOW I PARENT」シリーズ。今回は愛娘が高校を卒業するまで毎日紙ナプキンにメッセージを書いてお弁当に忍ばせたW. ガース・キャラハンさんの子育てハックです。
W. ガース・キャラハンさんって何をしている人?
W. ガース・キャラハン(W. Garth Callaghan)さんは、娘のエマさんが小学生の頃から、紙ナプキンに「為になる引用」や「父親の想い」を書き留めて、娘のお弁当の袋に忍ばせていました。
そのうちに、この『一言紙ナプキン』は父と娘をつなげる特別な存在になりました。キャラハンさんは、たとえ自分が娘のそばにいられなくなっても、娘が学校を卒業するまで毎日欠かさず父親からのメモを読めるようにしたいと思いました。
2011年から5回も癌の診断を受けたキャラハンさんは、この『一言紙ナプキン』が結局はエマに残せる唯一のものになると考えました。彼が書いた回想録『Napkin Notes: Make Lunch Meaningful, Life Will Follow,』は、リース・ウィザスプーン主演の映画になりました。
今秋、エマさんの大学入学を控え、キャラハンさんに、これまでの子育てを振り返っていただきました。
氏名:W. ガース・キャラハン
居住地:バージニア州リッチモンド
職業:「Napkin Notes Dad(一言紙ナプキンパパ)」兼 作家
家族構成:妻のリサと娘のエマ(18歳)
──『一言紙ナプキン』を始めた経緯は?
エマが小さかった頃、私は普通のオフィスに通勤して仕事をしていたので、毎日8時間から10時間娘と一緒にいる時間を失っていました。
仕事のスケジュールが許す以上に娘とつながりを持ちたかったので、紙ナプキンに言葉を書いて幼稚園に娘が持って行くお弁当の中に入れるようになりました。
ときには、クッキーやキャンディを入れて特別なお弁当にすることもありました。娘が私の書いた言葉やお菓子をどう思っていたかわかりませんでした。
娘が高校生になると、私は朝のコーヒーを飲みながら台所で娘のランチを作るようになりました。あるとき、私がまだ紙ナプキンにメッセージを書いていない日がありました。
すると、娘はランチの袋を手に取って中を覗き、「一言紙ナプキンは?」と私に歩み寄って聞きました。ああ、娘は大事に思っていてくれたのだ、とそのときわかりました。それで、毎回娘のお弁当に「一言紙ナプキン」を入れることにしました。

私は5回も癌と診断されました。
最初に診断されたときは、頭が真っ白になり天地がひっくりかえった気がしました。2013年、3回目の診断をされたとき、エマが高校を卒業するまでの分のナプキンメッセージを書くことを決めました。
私は完璧とは無縁ですし、物事が思うように運ばない日もありました。何度か学校にナプキンメモを持って行ったこともあります。
校長先生に「このメモをエマのお弁当の袋に入れてくれますか?」と頼むときの決まりの悪さを想像できますか?
──朝のルーティンは? スムーズに朝の準備をする裏ワザは?
私は4年にわたり毎日化学療法を受けてきました。そのせいで、忘れっぽくなっています。
朝のルーティンを成功させる鍵は計画的になることで、前の晩から始めなくてはいけません。私は自分のスケジュールと家族のスケジュールをあわせて把握するようにしています。毎日同じルーティンをこなすことで、何かを忘れる確率を減らしています。
すべての準備が整うと、仕事を始める前に800ワード以上のメモを数分かけて書きます。

──パートナー以外に、誰からどの程度育児を手伝ってもらっている?
我が家は一般的な家庭以上に助けが必要だとは思いませんが、私の健康状態が家族の生活に多大な影響を与えているので、やはり外の助けがなくてはやっていけません。
友人や教会の仲間が進んで車に相乗りさせてくれたり、私の具合が悪いときはスープを届けてくれたり、処方箋を取ってきてくれたり、食料品の買い出しや庭の手入れまでやってくれます。
幸いにして、常に他人に頼る必要はないのですが、この強力なサポートの輪がなければ、我が家はやっていけません。
── 「これがないと生きられない」というガジェット・アプリ・チャート・ツールは?
私はガジェット好きを自認しています。
記憶しておく必要があることを全部記憶できないので、Google Pixelは常に見ています。この電話が撮影する写真が大好きです。
ToDoリストの管理はWunderlistを、物事の分類にはEvernoteを使っています。医学的治療はすべてEvernoteに記録しているので、いつでも簡単にアクセスできます。
体調についてはPatientsLikeMeでトラッキングして、他の腎臓癌患者の参考になるようにしています。
──子育てをするようになってから仕事のやり方は変わった?
親になって実感したのは、仕事は大事ですが、それ以上に次世代を育てる方が大事だということ。
私は、子どものソフトボールの試合を決して見逃さない父親になれるような働き方をしています。仕事で出張することが多かった時期もありましたが、毎回出張の前に「一言紙ナプキン」を書いて、エマのお弁当に必ず1枚入るようにしました。
──夜のルーティンは何をしている?
今受けている治療の最大の副作用は疲労が激しいこと。そのため夜7時には休む必要があります。
娘が学校に行っていた頃は、我が家は夜遅くまで球場にいて、エマのチームを応援していました。卒業して、永久にオフシーズンになったので、熱心に読書していますね。今は、Carol Dweck著『Mindset』を読んでいる途中です。次は、Neal Stephenson著『Cryptonomicon』を読むつもりです。
──今のリラックス方法は?
ビデオゲームをするのが好きです。XBOX Oneで『Halo』の全バージョンができますし、PCで『Star Wars Galaxies』もできます。
ジムにも熱心に行くタイプですが、それほど運動がうまくできるわけではありません。
今日は担当医からマラソンのトレーニングをしているように動きなさいと言われたので、ちょっと頑張る気になりました。
──親として一番誇らしく思う瞬間はどんなとき?
- エマが特別支援学級のチームとバディボールをするとき、とても親切に優しく教えてあげたとき 。
- キャッチするのが到底不可能に見えるゴロをショートにいたエマがキャッチして、3塁に難なく返球したとき。
- 我が家の生活を綴るとても私的な内容の本を書いていいかエマに聞くと、「パパ、ぜひ本を書いてちょうだい」と熱く答えてくれたとき。
──一番情けないと思う瞬間はどんなとき?
エマが18カ月のとき、ベッドの上でぴょんぴょん跳ねていたので、「そこで跳ねてはいけないよ」と私は言いました。今となっては、自分がなぜそう言ったのかわかりません。
ベッドの上で跳ねることがそんなに悪いことだったのでしょうか。私は冷静さを失い、エマに「今度ベッドの上で跳ねたらお尻を叩くよ」と言いました。
エマは跳ねるのをやめて、私の目をまっすぐ見つめてから、さらに何回か跳ねました。そうなると、他にやりようはありませんでした。
2人で彼女の部屋に座り、2人とも泣きながら、私は娘のお尻を1回思い切り叩きました。私の心も一緒に打ち砕かれました。
──子どもにはあなたのどんなところを見習って欲しい?
試行錯誤することの価値を知り、試行錯誤が上手になって欲しいと思います。
──お気に入りの変わった儀式はありますか?
秋に農作物をものすごくたくさん収穫しに行くというおかしな習慣があります。
「運べるだけお取りください」と書いてあるカボチャ畑に出向き、たった10ドル払って山ほどカボチャを運ぶ技を習得しました(コツは、最初にカボチャを積み込むときヘタを下にして並べること)。
シャーロットビルの果樹園でリンゴ狩りもします。すごくたくさんもぐので、車に2往復もしなけば積みきれません。我が家の最高記録は70ポンド(30kg)以上のりんごをもいだことです。
我が家と友人間でしているおもしろい習慣としては、キャンプをしているときに限って、みんなで下痢の歌を歌うこと。実際にはキャンプ中に下痢で困ったことはないと思いますが、キャンプファイヤーの周りで歌うととても楽しい歌です。
──今までもらった子育てに関するアドバイスで心に残っているものはありますか?
Rachel Macy Staffordさんが「子どもにかけられる6つの大切な言葉」について書いていて、そのアドバイスに胸を撃たれました。
私の物の見方がすぐに変わり、娘の次のソフトボールの試合に出たときから実践しています。
その6つの言葉とは「I love to watch you play(パパは君が試合しているのを見るのが大好きだよ)」です。
──子育てで一番難しいことは何?
子どもの前で上手に失敗できるようになること。
── 1日のうちで一番好きな時間はいつ?
月並みな感じがするかもしれませんが、毎日の一瞬一瞬です。
私は転移性の腎臓癌で、完治する見込みはゼロ。誰かから「どうしてる? 元気?」と聞かれると、「地上で暮らす1日1日が良い日だね」といつも答えます。
── 親と子どもがつながる方法の見つけ方は?
子どもと共有できる小さな儀式を見つけましょう。
たとえば、2階の窓から紙飛行機を飛ばす、おそろいのTシャツを着て映画に行く、好きなお話を一言一句暗記する、映画『Big』に出てくるようなラインダンスができるようになる、など何でもいいのです。
── 他に読者に伝えたいことは?
紙ナプキンに一言メモを書きましょう。ポストイットや普通の紙に書いてもいいですよ。
子どものお弁当を詰めない人は、どこか確実に子どもの目にとまるところに入れてください。去年私は180枚の『一言紙ナプキン』をエマに書きました。
そのうちの5枚はかなりうまく書けていたので、エマが自宅に持ち帰り台所のメッセージボードやエマのドレッサーに貼ってあります。
これは、ある朝エマの車のシートに置いたメモで、その後は、年中エマのドレッサーに貼ってあります。

あと、子どもが何かしているときに親がスマホを見ていると、子どもはちゃんと気づいていますよ。子どもをごまかせると思わないでください。
Michelle Woo – Lifehacker US[原文]
Photo: Napkin Notes Dad