みなさんは「バリュー・プロポジション」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。これはマーケティング用語のひとつで、2011年に発行されてベストセラーになった『100円のコーラを1000円で売る方法』という著書で一躍注目されるようになりました。
この本の著者であり、マーケティング戦略アドバイザーである永井孝尚さんのロングインタビューが、IBMのWebメディアMugendai(無限大)に掲載されていました。そこでは「自分を正当な対価で売り込む」といった、ビジネスパーソンにとっても目からウロコの話が満載でした。
顧客の要望を全て受け入れない。「自社や自分にしかできないこと」で売り込む
まず、「バリュー・プロポジション」とは一体どのようなものを指すのでしょうか。Mugendai(無限大)のインタビューで、永井さんは以下のように説明されています。
一言で言うと、①顧客が望んでいて、②競合他社は提供できず、③自社が提供できる、そういう価値のことを言います。「図表1」(下の図)にあるように3つの円を描いた時、赤く塗られている部分がそれに当たります。出発点は顧客ですが、その要望を全部受け入れれば良いわけではありません。大切なのは顧客が何に価値を感じるか、そのニーズを徹底的に絞り込むこと、そして他社と同じことはやらないことです。

永井さんは、IBMに勤めていた頃に携わったコールセンター事業が自社にしかできない価値の高いものだと気付き、バリュー・プロポジションのなんたるかを体験したと語ります。
ピンチの温泉街が「星空」で復活。バリュー・プロポジションは個人にも応用できる
バリュー・プロポジションの具体的な例として、永井さんは長野県の阿智村を引き合いに出しています。かつては温泉街として賑わった阿智村も、バブルの崩壊などで観光客は減る一方。しかし同村は、環境省が「日本で一番星空が輝いて見える場所」に認定するほど、夜空の美しい場所だったのです。
地元の人達は、その強みを活かすべく奮闘。都市圏の若いカップルをターゲットとし、ロマンチックな星空を楽しむナイトツアーなどを展開すると、初年度には6500人だった来場者が、2016年には11万人にも達したそうです。これにより、温泉旅館も常に満室になるほど盛り返したとのことで、まさにバリュー・プロポジションの見事な成功例だと語っています。

そして永井さんは、バリュー・プロポジションは企業だけではなく個人にも当てはまる戦略だと語っています。
市場が細分化している今こそ、ビジネスパーソンのバリュー・プロポジションは大切になっています。例えば掃除機は、昔はひとくくりでしたが、今は吸い込み型、サイクロン型、ルンバにふとん掃除機などと特化し、トップシェアの会社はそれぞれ違う。市場や企業が細分化して行くのに合わせ、働く人たちもニーズに特化するべきです。そうすれば消耗戦に巻き込まれず、戦わずして勝つことができます。
入社間もない人も、チームの中で自分が得意分野を生かしトップになってやろうと強みを磨いて行けば、やがて課で1番になり、部で1番になり、会社で1番になり、業界で1番になれます。他人と同じ価値で勝負するのではなく、バリュー・プロポジションを考えて、自分が1番になれるエリアを決めて広げて行くことが大切です。

他にも、ルース・ベネディクトが著書で述べる「罪の文化と恥の文化」を元に、欧米と日本を比較しています。日本の「恥の文化」が革新的な挑戦を妨げているようだが、「失敗は、貴重な学びである」と考えることが大切という思いなど、マーケティングの専門家として大変興味深いロングインタビューは、Mugendai(無限大)よりぜひ続きをお楽しみください。
Image: Mugendai(無限大)
Source: Mugendai(無限大)