ランチタイムは、午後からの仕事の能率を左右するという意味で、とても重要な時間です。さらに、同僚や仕事相手とのコミュニケーションの時間、読書や勉強など自己研鑽の時間、人によっては仮眠=パワーナップの時間として、さまざまな形で有効活用が可能な時間でもあります。

そこで、有能なビジネスパーソンはどのようにランチタイムを過ごしているのかを知るべく、今回は起業家・個人投資家の山口豪志さんにランチタイムの過ごし方についてお話を聞きました。

ランチタイムはミーティングの時間として積極的に利用しているそう。ディナータイムより、ランチタイムのほうが人に会いやすいといいます。

山口豪志(やまぐち・ごうし)

2006年から日本最大料理レシピサイト「クックパッド」を運営するクックパッド株式会社にて、広告事業・マーケティング事業に関わる。その後、2012年より3人目の社員としてランサーズ株式会社に参画し、ビジネス開発部部長として大手企業との事業提携・協業、広告企画の販売開始などを実行。2015年5月に株式会社54を創業し、現在は常時約30社のスタートアップ企業のアドバイザーとして「事業戦略策定」「BtoBアライアンス支援」「広報部門立ち上げ」などのコンサルティングを行っている。

「ランチミーティング」は会ってもらえるハードルが低い

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今回取材を実施したのは、山口さんがランチによく利用するという「新・日本青年館」内のレストラン
Photo: 開發祐介
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Photo: 開發祐介

── まずは1日のスケジュールを教えてください。

朝は5時〜6時に起きて、8時〜8時半には家を出ます。9時には出勤して仕事を開始。お昼は少し早めにとることが多くて、11時30分ごろから食べはじめます。もしくは、少しずらして12時30分ごろということも。でも、食べない日もあります。

基本的に週2〜3日はランチミーティングをいれています。ランチ後は、18時ごろまで仕事をして、19時ごろから会食というパターンが多いです。1日2件夜の会食があることもあり、はしごすることも多いです。家に帰るのは、夜24時〜1時。翌日の用意をして、2時には寝るようにしています。

──どういった時にランチミーティングをしますか?

ある程度話すテーマや議題が決まっている場合は、オフィスアワー(業務時間内)の打ち合わせで十分ですが、もう少しカジュアルに「お互いを知りたい」「情報共有をしたい」「企画をざっくばらんに考えたい」というときはランチの時間を利用して、食事しながら会話します。

また、誰かと誰かをつなげたいというときや、オフィスアワーでわざわざ会議室をとってやるほどではないけど、関心があるかどうかヒアリングしたいときにも最適です。それでもし話が進みそうだなと思えば、オフィスアワーに打ち合わせを入れたり、夜の会食につなげたりできますからね。

──ランチミーティングのメリットはなんでしょうか。

オフィスアワーに、何人も集まって打ち合わせをするのはハードルが高い。しっかりと準備していかなければいけません。でもランチミーティングは、もう少しカジュアルに会えるのがメリットかもしれません。

また、夜と比べて時間がきっちりと決まっているのがいいと思います。人によっては長く時間を取る人もいますが、ランチタイムであれば、だいたい1〜1時間半が目安です。話題が乏しかったら引き上げられるし、盛り上がったら次の打ち合わせの日程を決められます。

そういったハードルの低さや時間がある程度決められているというのもあって、ランチの誘いは断られにくい気がします。オフィスアワーだと、何を話すか考えないといけないじゃないですか。打ち合わせをしたことによる、アウトプットの質も考えないといけないし。ランチだともう少しカジュアルなので、相手も来やすいというのはあると思います。

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Photo: 開發祐介

──日本では一般的に、夜の会食がコミュニケーションの場になっていますが、昼と夜をどう使い分けていますか?

どっちがいい悪いではなく、使い分けが大切だと思っています。僕の場合、夜だと人数を多く設定したり、あまり知らない人を混ぜ合わせるかもしれません。「岡山出身の人で飲む会」とか、大雑把なくくりで出会いを作るなら夜がいいかと。

昼は、会議室よりはカジュアルだけど、夜と比べるともう少しテーマが定まっています。この人とこの人を合わせたらおもしろいなとか、夜よりも意図が明確です。

また、私は30代なのですが、20代、30代、40代とランチに行くことはあっても、50代、60代の方々とは夜の会食に行くことが多い気がします。

ランチミーティングにオススメのお店

──ランチミーティングに誘う時に、心がけていることはありますか?

人をつなげるような席だと、事前に参加者の方に意図を伝えるようにしています。逆に誘われるときは、あまり細かく聞きません。というのも、私が誘われるときは、事業の相談など言いづらいこともあると思いますので、席についてから話を伺います。

また、夜の飲み会だと大人数でやりますが、ランチは多くても4〜5人くらいがベストだと思います。それにも理由があって、たとえば3人だと1人が待つ時間が生まれてしまうんです。4人なら、1人だけ待ちぼうけをくらう可能性も減ります。5人だと、2対2や1対1で話してもらって自分が休める時間を作れるので、5人もアリ。休んでいるときに会話の振り方を考えたりしています。

──お店選びのポイントは?

ゆっくりと話せる環境が大切かなと思っています。席がゆったりしているとか、お店が広いとか。今回利用させてもらっている「新・日本青年館」のレストランは、広くて雰囲気も良く、ご飯もおいしいのでオススメです。窓側の席から球場が見えるというのもポイント。わざわざ来てもらうので、その場の雰囲気を楽しんでもらうことも重要だと思っています。

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窓からは神宮球場が見下ろせる。この日は大学野球の試合が開催中。
Photo: 開發祐介

──その他でオススメのお店はありますか?

五反田に行くことが多いのですが、駅直結のショッピングモールremyに入ってる「やさい家 めい」というお店がおすすめです。景色のよい、オーガニックの野菜がおいしいレストランです。比較的店内がゆったりとしているので、ランチミーティングでよく使います。

また、単純に情報共有するだけの場としては立ち食い寿司がオススメです。私は五反田の「魚がし日本一」という立ち食い寿司屋さんによく行きます。

「最近どう?」からはじまって、「事業の調子は?」「仮想通貨どうかな?」とか、30分くらいの短い時間で寿司ミーティングをします。スピーディーに近況をキャッチアップするのには最適です。ただ、初めて会う人と行くには、あまり適していないかもしれませんね(笑)。

──ちなみに、知らない人からSNSなどでランチに誘われたらどうしますか?

Facebookなどでまったく面識のない方から「お会いしたい」と連絡をいただくこともあるのですが、あまりそれに返信することはありません。最近は特にスパムなどもありますし、講演に来ていただいたり、知人からの紹介だったり、共通の知り合いがいたりするところからきっかけが生まれることが多いですね。

「食」はテンションを切り替えるスイッチだ

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この日食べたのは「日替わりランチ」1,500円。プラス1,000円でドリンクとサラダバーがつく。
Photo: 開發祐介

── 人と会わない時のランチタイムは、どう過ごされていますか?

食べないことが多いですね。ランチを食べないと午後も仕事に集中できますよ。今年の5月にファスティングをしてみたんですが、「食」にはテンションを切り替える力があると気がつきました。

午前中に集中していてある程度テンションが乗っているときは、その調子を保つためにランチを食べずに黙々と仕事をします。逆に、気が乗らないときは、お茶をして気分を変えたりとかも。食は、テンションを切り替えるためのスイッチになっています。

午前中は資料作りなど集中する仕事をいれて、午後はディスカッションやミーティングをいれるようにしています。

── 一般的な会社員がランチミーティングを取り入れるとすれば、まずどんなことから始めたらいいですか?

勉強会や交流会で知り合った気になる人を、ランチに誘うのがいいと思います。交流会は意味がないという意見もありますが、その場で出会った面白いと感じた人と「次」を作りたいというなら、まずはランチに誘うべきです。ランチなら気軽にいけますし、カジュアルに相手のことを知れます。

誘い方のコツとしては、「御社の近くまでたまたま行く機会があるので、ランチに行きませんか?」と言うこと。わざわざ会うためだけにランチを誘うと、相手が気を使ってしまいますからね。

取材協力

新・日本青年館

住所:東京都新宿区霞ヶ丘町4-1

TEL:03-3401-0101

Photo: 開發祐介