ペットフードコーナーへ行くと、新鮮な野菜やローストチキンの写真が主張し「ナチュラル」や「ホリスティック」という言葉が踊るパッケージがずらりと並んでいます。しかし、こうした高価なペットフードと安いドライフードには、たいした違いはありません。今回は、ペットフードとは一体何なのかを解説します。

「チキン」は何を意味するのか?

犬も猫も肉が大好きです。彼らの野生の親戚は、小動物を内臓も含めてガツガツと食べてしまいます。ですので、ペットフードに動物性組織が豊富に含まれているのは当然のこと。でも、もしあなたがペットフードの材料がヒレ肉や、あるいはパッケージラベルを飾るチキンやサーモンのようなものだとイメージしているとしたら、あなたもペット同様、何も考えていないと言わざるをえません。

「市販のペットフードを買うということは、人間にはとても食べられないものを買うということだ」と、Marion Nestle氏とMalden Nesheim氏が、その著書『Feed Your Pet Right』で書いています。ペットフードに実際どんなものが入っているのかを知りたい人は、この本に目を通すことをお勧めします。とはいえ、ペットフードの中にペットに与えてはいけないものが入っているわけではありません。300ページに及ぶ分析の結果、研究者らは市販のペットフードは基本的には問題がない、と結論づけています。ただし、そこに含まれる肉類のほとんどは、スーパーでは決して見かけることのないものだということは理解しておきましょう。

たとえば牛肉をとりあげてみます。AAFCO(米国飼料検査官協会)は、「食肉処理された動物から取り出された汚染されていない肉で、骨格筋、舌、横隔膜、心臓、食道などに見られる横紋筋に限られる。付随する脂肪、皮、腱、神経、血管は含んでも含まなくてもよい」と定義しています。チキン(鶏肉)の定義も同様ですが、この場合、足の骨も含まれます。

ペットフードを作るために、わざわざ食用動物を屠殺する必要はありません。食肉産業には、私やあなたが決して買おうとは思わない廃棄物がたくさんあるからです。あなたが愛犬に与えているペットフードが、「チキン」が主要な原材料だとうたっているとしたら、鶏の首や背中から機械的に分離された、肉のスラリー、皮、軟骨などが入っていることを意味します。犬にとっては栄養価が高く、おいしい食べ物です。ご興味があれば、こちらの動画で製造過程がわかります(ただし、気分を害する危険があるので注意)。

Video: HOO Vincent / YouTube

ペットフードのラベルによく表示されている用語の意味は次のとおり。

  • 肉副産物(By-products)には、食肉処理された動物から取り出された、動物にとっては食べられるが人の食用肉としては扱われない、汚染されていない部位が含まれる。たとえば、牛の肺、脾臓、腎臓、脳、肝臓、血液、骨、脂肪など。チキンの場合は、頭や足も含まれる。
  • ミール(Meals:チキンミールやフィッシュミール)は、レンダリングされている。食べられる部分(肉や副産物)を取り除き、残ったものに熱を加え、乾燥して粉末にしたもの。

肉以外の原材料

ペットフードブランドの多くは、たとえば「チキン」など、肉が一番多く含まれる原材料だと強調しています。それはそれでOKですが、混合割合がどうであれ、ペットフードにはほぼ間違いなく、穀物、野菜、ビタミンやミネラルなどが含まれています。

パッケージの表記を見れば、肉がどれくらいの割合で含まれているかがわかります。AAFCOは肉の最低含有率とラベルの表記について、次のように定めています。

  • チキン100%(100 percent chicken)とは、文字通りの意味。完全に鶏の肉だけから作られる(まれに、機械的に骨抜きした鶏肉のスラリーが含まれていることがある)。
  • チキンドッグフード(Chicken dog food)は、少なくとも95%(ウェットフードなら70%:水が重量に含まれるため)が鶏肉でなければならない。
  • チキンレシピ(Chicken recipe)は、鶏肉も含まれるが、それ以外の原材料も含まれることを意味する。少なくとも25%が鶏肉でなければならない(ウェットフードなら10%)。
  • 本物のチキンを使用(Made with real chicken)は、少なくとも3%の鶏肉が含まれているという意味。
  • チキンフレーバー(Chicken flavor)という表記に、最低含有率の定義はない。原材料リストに鶏肉が含まれてさえいればOK。同じことがミートフレーバー(meaty)にも言える。肉が少しでも含まれていればOK。なかには、香味成分を粗びきの穀物にスプレーしただけのものもある。

ウェットフードがいくら肉の塊に見えるからといって、上記のような問題がないと思っているなら、それは間違いです。Nestle氏とNesheim氏は次のように書いています。

缶入りペットフードの製造は、低級な肉の切り落としを肉の塊に見えるように再構成することから始まる。そのためには、肉の小片をゼリーの中に閉じ込め、加熱して凝固させるか、押し出し成形された植物性タンパク質で肉のように見せかける。「プレミアム」とか「スーパープレミアム」と銘打たれたペットフードのなかには、実際に肉の塊が入っているものもあるが、多くの商品はそうではない。

通常、ペットフードには塩が1%ほど含まれています。ですので、食品表示で塩より後に書かれている原材料は、ほんのわずかしか含まれていないということになります。そして、少なからずそれは、パッケージに写真が大きく載っているフルーツや野菜だったりします。

Nestle氏とNesheim氏は、その著書の中でペットフードに含まれないものを特定しています。たとえば、肉副産物の中に毛や角、歯、蹄は含まれません。巷の噂とはちがって、木くずやモーターオイル、古いブーツが入っていることもありません。原材料の定義のなかに、「加水分解された革のミール」というものがあります。これは、革のくずを調理加工したものですが、どこのブランドも使っていません。Nestle氏とNesheim氏は、「州の飼料管理局が許可していないものと思われる」と書いています。

一方でNestle氏とNesheim氏は、保護施設で安楽死させられた犬や猫に何が起こるかを追跡し、その終着地がペットフードの原材料を製造するレンダリング工場の場合があることを突き止めました。また、安楽死に使う薬剤の痕跡が、ペットフードのサンプルから検出されたケースもありますが、ほんとうにわずかな量です。ですので、こうしたことが広範囲に行われているとは思えませんが、Nestle氏とNesheim氏、それからSnopesも、まったくそういうことが起きていないとは断言できないとしているのは気になるところです。

肉以外の原材料に問題はある?

栄養学的に言えば、ペットも捕食した動物の内臓や胃の中の内容物といった、あまり食欲をそそらないような部分に含まれているビタミンなどの栄養素を取得しなければなりません。猫や犬は、人間の食卓やゴミなどから食べ物を漁るように適応してきた歴史があります。ですので、犬や猫の食べ物が、野生にいる仲間の動物とは違うのはわかります。しかし、彼らは本当に毎日穀物や野菜を食べる必要があるのでしょうか?

最近では、人間やペットの間で穀物があまり食べられなくなってきましたが、穀物には何の問題もありません。犬や猫は穀物を消化することができるし、栄養のバランスがとれているかぎり、穀物はすぐれた原材料になりえます。三大栄養素をバランスよく摂ることが大切なのであり、穀物はそれにうまくフィットします。

ただし些細ながら、気をつけねばならないことが2つあります。ひとつは、大麦や大豆を食べると犬はおならをたくさんするということ。もう一つは繊維が豊富に含まれている、穀物や野菜、カラギーナンやグァーガムなどの添加物を食べると、犬はうんこを大量にするということです。でも、高価な「プレミアム」ペットフードを食べさせていれば、その量は比較的少なくなります。

では、人間と同じように穀物不使用のペットフードを与えればいいのでしょうか? それでもOKですが、穀物が入っている安価なペットフードと栄養素的に等価なフードを買おうとすると、比較的高くついてしまいます。穀物不使用のペットフードはたいてい、小麦やコーンのかわりに、エンドウ豆粉やジャガモなどのデンプン成分が含まれています。表示を見て栄養的に条件を満たしているなら、安いほうを選んで節約したほうがいいでしょう。

では、パッケージに踊っている、耳に心地よいお馴染みのワードは? そのほとんどは、あなたが思っているようなことを表しているわけではありません。「ナチュラル」の定義はあまりに曖昧で、ほとんど意味がありません。「ホリスティック」の公式な定義はありませんし、人間の食べ物では決まった意味がある「オーガニック」も、ペットフードに関する法律では、基準を満たさないフードでもオーガニックと呼べてしまう抜け穴が存在します。「ヒューマングレード」も意味のないバズワードです。ペットフードのなかには、そのようにうたっているものがありますが、AAFCOはこのワードを誤解を招きかねないものと考えています。とどのつまり、ペットフードはあなたがふだん食べているものとはまったく違うものなのです。もっとも、あなたの愛犬は気にしないと思いますが…。


Image: Monkey Business Images / Shutterstock.com

Source: Amazon, AAFCO 1, 2, YouTube, Snopes

Reference: Wikipedia, 日本畜産副産物協会

Beth Skwarecki - Lifehacker US[原文