Inc.:何かを覚えなければならないとき、あなたはどうやって記憶に焼き付けていますか? おそらく「メモを取る」がほとんどなのではないでしょうか。
それは、私たちが子どものころに身につけた学習習慣といえます。教室で先生が黒板に書いた内容を、まるで義務かのようにせっせとノートに書き留めていたものです。
大人になってもその習慣が続いている人は多く、何かの研修プログラムや重要なプレゼンに参加すると、必死になって演者の言葉を書き留めている(あるいは打ち込んでいる)人をたくさん見かけます。
ところが、カナダのウォータールー大学の研究によると、「クレヨンを使うともっといい結果になるかもしれない」というのだから驚きです。
落書きが効果的
同大学の研究チームは、あらゆる記憶力トリックについてガチンコのデスマッチを開催しました。論文の筆頭著者は、大学院生のJeffrey Wammes氏。
まず、実験協力者をいくつかのグループに分け、40ワードのランダムなリストを覚えてもらいました。各グループは、何度も書き留める、各単語のメンタルイメージを作る、特徴を列挙する、などさまざまな記憶力トリックを使って取り組みます。その中で、あるグループにはよりクリエイティブな方法をとってもらいました。各単語を、スケッチ、落書き、または絵に描くのです。さて、もっとも記憶力がよかったのはどのグループでしょうか?
絵を描く方法を、他のさまざまな暗号化手法と対決させましたが、常に前者の勝利でした。単語を書き留めた人よりも、絵を描いた人のほうが2倍近く思い出せるケースも多くありました。
実際はクレヨンだけでなく、古いペンや鉛筆でも同様の結果になるはずです。
研究グループは、この理由について「絵を描くためには頭の中でさまざまな情報を統合する必要があるからではないか」と考察しています。さまざまな情報とは、手を動かす物理的感覚、書こうとしている単語の定義、自分で描く絵の心理的イメージなどが含まれます。
理由がどうあれ、この結果は落書きで集中力が高まるだけでなく、脳が処理しているアイデアを絵に描くことで記憶力が改善するという過去の研究と一致するものでした。
才能は不要
「そんなこと言われても私はピカソにはなれないし...」と言う人もいるでしょう。確かに、絵が苦手な人は多いかもしれません。でも、心配無用です。研究チームによると、スキルは不要なのだとか。
重要なのは、描く絵のクオリティーは問われないということです。つまりこの記憶術は、芸術的才能にかかわらず、誰でも使える可能性があります。
Wammes氏によると、時間が4秒しかなくラフなスケッチしかできなくても、記憶力は大幅に改善したそうです。
確かにこの方法、芸術的才能は不要かもしれませんが、背景はどうでしょうか? そもそも現実世界において、無関係な単語のリストを覚えなければならないシチュエーションなどほとんどないでしょう。もっと複雑な情報を覚える場合にこの方法で記憶力が高まるかどうかはわかりません。そのあたりについて、研究チームはさらなる研究を進めているようです。
とはいえ、今の段階でトライしてみても何の損もないはず。
セールストークや安全手順書を覚える必要があるのなら、ただ書き写すのではなく、プロセスの各段階ごとに絵を描いてみてはいかがでしょう。記憶に残りやすくなるかもしれません。
Want a Better Memory? Science Says Do This | Inc.
Image: Pao Laroid/Shutterstock.com