明晰夢は眠っているときにできる最高の体験ですが、たんなる現実逃避の手段ではありません。
実際、多くのメリットが知られています。ただ、そのメリットを享受するには、まずは脳を鍛えなければなりません。夢は重要であることを、脳に教え込むのです。
さあ、夢の旅人の皆さん、Lifehackerがお届けする明晰夢ワークショップ第2回の始まりですよ。明晰夢を見るための最初のステップを紹介した第1回はこちらから。
明晰夢のメリット
メリットが多いのですから、やってみない手はありません。何よりも、明晰夢は楽しい! 本当に楽しいんですよ。私の初めての明晰夢体験は10代のときでした。ちょうど明晰夢に関する本を読み始めたばかりのころ、家族との旅行中のホテルで、それは訪れたのでした。ビギナーズラックというやつでしょう。
夢の中で、友だちと話している自分に気が付きました。実在しない友だちでしたが、夢の中では友だちだと認識していました。場所は、高校のフットボール場。そうやって雑談をしているうちに、目が覚めるような現実に気が付いたのです。
自分は今、家族と旅行中のはずだ。それなのに、なぜ学校にいるんだろう? 急に時間が止まったように感じ、あらゆるものが鮮明になりました。
芝は本物のようで、肌に注ぐ太陽の光が温かく感じられました。そして、いま話している相手は知らない人であることを、はっきり認識しました。
「これは夢なのかな? 夢だったら、飛べるはず」
その瞬間、足が地面から離れ、その友達の上を静かに飛んでいました。
「飛べる。どこへでも行けるんだ!」
そう思ったとたん、飛べる嬉しさのあまり、どんどん高度が上がっていきました。やがて雲に到達すると、ベッドの中で世界を見る計画を立てている自分に気が付いたのです。
その時は明晰状態を維持できず、夢はあまり長続きしませんでした。
でも、目覚めたときの快感は今でも忘れません。人生でいちばん楽しい睡眠であり、また経験してみたいという気持ちでいっぱいでした。
明晰夢は、それ以外にも多くの機会をもたらします。
まず、内省と深い瞑想のための神聖な場所になりえます。そこでは、現実世界のように中断されることなく、本当の自分と話し、大きな判断についてじっくりと考えることができます。
また夢は、現実世界における活動の練習の場にもなります。夢の世界を心のリハーサルスペースと考えることで、仕事のプレゼンを反復したり、スポーツのトレーニングに集中したり、試験前の勉強を進めたりできるのです。
クリエイティブ系の人なら、明晰夢は芸術的インスピレーションの無限の源となりえます。夢の世界はキャンバスであり、そこではなんでもクリエイトできます。
そして、夢は実験や不安の克服ができる安全地帯でもあります。そこは、悪者に立ち向かったり、社交的になる練習をしたり、昇給を交渉する勇気を見つけたり、人前で話す恐怖を克服したりできる場所です。
明晰夢のリスク
明晰夢は、精神的に安定している人にとっては一般的に非常に安全です。しかし、リスクもいくつか考えられるので、注意が必要です。
睡眠麻痺は、レム睡眠中に誰にでも起こることです。これは、夢に身体が反応しないようにするためと言われています。しかし、一部の人は、明晰夢のトライ中、夢と覚醒の間の状態にあるときにこれを経験します。
いわゆる金縛りの状態で、頭は起きているのに体を動かせず、さらに夢の幻は感じたままとなり、恐怖を感じることも。この種の睡眠麻痺は一般的ではないものの、明晰夢の実験中には確実に起こりうる現象です。
とはいえ、完全に目を覚ますか、逆に完全に睡眠/夢の状態を誘導するかのどちらかの方法で、この状態から抜け出すことができるので安心してください。これについてはまた後日紹介します。
最大のメリットである現実的な感覚が、最悪の落とし穴になることもあります。
明晰夢の状態は、景色、動き、幸せ、さらにはセックスといった多幸感をもたらすことがありますが、その一方で、スペクトラムの逆側の感覚も起こりうるのです。
つまり、明晰夢で恐怖、悲しみ、痛みを感じることもあるということ。
とはいえ、そのようなネガティブな感覚は、夢の状態よりも、世界をコントロールできない覚醒状態で起こることが多いものです。それに、夢の中で死んだからと言って、リアルライフで死んでいるわけではありません。夢で何度も死んだことがある私が言うのですから間違いありません。
「夢の閉所恐怖症」になる可能性もあります。それは、夢のシナリオの中で明晰状態になり、操作も覚醒も不能になること。しかもそれは、通常の夢とは異なり、非常に鮮明な状態です。
さらに、現実逃避の手段として明晰夢を使うと、現実に戻れなくなる恐れがあります。だって、何でもできる自分だけの世界にいつでも行けるのに、通常の世界で時間を過ごしたいと思えますか?
もちろん、明晰夢はレムサイクルの間しか続きませんし、好きなように明晰状態になるには何年ものトレーニングが必要です。ですから、夢での現実逃避セッションの実害は、ちょっと生々しいことを別にすれば、映画やゲームのそれとあまり変わらないと言えるでしょう。
それでも、これらのマイルドなリスクを怖いと感じるなら、あなたは明晰夢に向かないのかもしれません。あるいは、境界性人格障害など、現実とそうでないものの区別が難しくなる精神障害に苦しんでいるなら、従来の方法で眠ることをお勧めします。
明晰夢が夢と現実の混乱をもたらし、症状を悪化させるかもしれません。
繰り返しますが、これらのシナリオは可能性としてはあるものの、比較的精神状態が健康な人が、入念な練習で徐々に明晰夢を習得する場合には、あまり起こりません。
明晰夢は、スイミングプールのようなものと考えてください。おぼれる可能性はあるものの、泳ぎ方さえ学べば、恐れることは何もなく、自由に泳ぎ回れるのです。
夢日記を始めよう
夢の中で覚醒する方法を学んでも、記憶に残せなければ意味がありません。
歩く前に立ちあがる方法を学ばなければならないのと同じです。実際、あなたはすでに明晰夢を見ているかもしれません。でも、覚えていなければそれを認識できないのです。
脳は、夢を自動的に忘れるようにできています。
脳は、夢での経験が現実でないことを知っているのです。目が覚めた瞬間、脳は夢での経験を心の奥に閉じ込め、現実世界の記憶の余地を作ろうとします。でも、それを防ぐのはそんなに難しくありません。それが夢日記です。
目が覚めてすぐに手に取れるよう、ペンとメモ帳を常に枕元に置いておきましょう。引き出しにしまったり、ベッドの下に入れてはいけません。書くのに手間がかかる筆記用具も避けましょう。手を伸ばして、持って、すぐに書けるように準備しておくのです。
スマホも不向きです。というのも、授業中にノートを取るのと同じで、手書きすることによってのみ、夢を記憶に残すことができるのです。もちろん、芸術的スキルがあってすぐに絵を描けるのであれば、それに越したことはありません。
訓練中も、明晰夢を狙うときも、少なくとも7時間は良質な睡眠を取りましょう。ジムにいる時間が短いと強くなれないのと同じで、一貫した十分な睡眠がなければ明晰夢はほぼ不可能です。
それと、目覚まし時計はベッドからあまり離れたところに置かないように。目が覚めて夢を記憶に焼き付けるためには、ほんのわずかな時間しかありません。
目覚ましを止めるのにその貴重な時間を取られている場合ではないのです。できるだけ早く寝て、目覚ましを使わずに起きましょう。
目が覚めたら、今まで夢の中で経験していたことを数秒間振り返り、速やかに日記に書き留めます。これをできるだけ頻繁に行うことで、新たな記憶のニーズに合うように、脳が徐々に覚醒プロトコルを書きかえていくでしょう。
やがて、素晴らしい夢から覚めると、「これ、取っとく?」と脳が言います。あなたは「もちろん!」と答えながら、夢日記を手にするのです。
夢の旅人たちへ:しっかり寝て、夢を見続けましょう。
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Patrick Allan(原文)