Inc.:多くの人にとって、独立は夢のようなもの。自分でスケジュールを決められ、運命を自分でコントロールでき、自分でプロジェクトを選べ、社内政治のごたごたに巻き込まれることもありません。ですから、個人起業家を夢見る人が多いのは頷けます。


しかし、不幸の裏には幸いが、幸いの裏には不幸があるもの。独立後の生活も例外ではありません。以下に、独立後に直面することが多い、代表的な困難をいくつか紹介しましょう。



1. 認められるまでに時間がかかる


あなたが独立を決めた理由は、定期的に仕事をくれる複数のクライアントと強固な関係を確立できたからかもしれません。でも、そこからの拡大は一筋縄ではいかないことを覚悟しておいてください。ブログ「CreativeLive」のHanna Brooks Olsenさんは、こう書いています。



成功している同業者にたくさんのクライアントがいても、その関係を築くのにきっと何カ月、いや何年もかかっているはずです。ですから、フリーになって最初の数カ月は、ほとんど仕事がないと覚悟しておいたほうがいいでしょう。




2. 破産もありうる


これは、上記1番の結果として発生します。事業を軌道に乗せるには、想像よりも多くの時間が必要です。そのため、お金も想像以上に早くなくなっていきます。「Fast Company」の創設者であり作家でもあるSuzan Bondさんは、こう言います。



自分のやりたいことで持続可能なビジネスを構築するには、時間がかかります。初めてのクライアントや初めてのプロジェクトは、あなたの理想と異なる場合があるのです。ですから、金銭的な滑走路を長く取っておきましょう。




起業家のStephanie St. Claireさんは、まったく同じことをこのように表現しています。



旅先でお金がなくなってしまうことはよくあります。長旅に備えていたはずなので、それはまったく予想外に訪れます。青い空と白い雲の中を飛行中、突如としてあなたの飛行機「起業号」のエンジンがプスプスと音を立てはじめます。燃料計の針は、ゼロに近づいています。こうなったら最後の手段。眼下に見える、今は使われていない滑走路に不時着するしかありません。「銀行残高14ドル」という名の滑走路に。




3. 好きなことに割ける時間は意外と少ない


フリーランスとして独立するからには、好きなことがあるのでしょう。執筆、デザイン、プログラミング、コーチングなど、内容は人それぞれ異なると思います。でも、あなたの売りが何であれ、そのために使える時間はわずかでしかありません。前述のSt. Claireさんは、こう述べています。



好きなこと(私の場合は、コーチングと執筆)に費やせる時間は15%程度です。残りの85%は、マーケティング、管理、営業、戦略立案、大量のメールへの返信に取られてしまいます。生き残れるかどうかは、「第1にビジネスオーナーであり、第2に好きなことのクリエイターである」という事実をどれだけ早く受け入れられるかにかかっています。




4. 会社員時代よりも働かなければならない


会社員時代のように決まったスケジュールで働くことがなくなるので、勤務時間が短くなったと感じる人が多いでしょう。でも実際は、仕事に関係するタスクに年がら年中取り組んでいることになり、会社員時代より実際の労働時間は長くなることがほとんどです


デジタルマーケターのRoger Bryan氏は、「The Muse」でこう話しています。



起業したとき、それまで50時間だった労働時間を100時間以上の労働時間とトレードすることになるなんて、誰も教えてくれませんでした。ですから、新しく起業する人に私からアドバイスをするなら、成功するまではすべての時間を投じるつもりでいることでしょうか。長期的に見れば、それだけの価値があると思います。




5. 交渉スキルを磨かなければならない


会社員時代は、そこまでタフな交渉を必要とすることはほとんどなかったかもしれません。しかし、フリーランサーはいつでも交渉する覚悟が必要です。怖がっている場合ではないのです。


「Hongkiat」で、Samar Owais氏はこう述べています。




成功するには、妥当なフリーランス料金を自ら交渉できなければなりません。単価交渉を失敗すると、いつまでも低い単価のまま身動きが取れなくなります。誰もあなたの単価を上げようとはしてくれません。




6. 健康が損なわれる


わずかに歩けば冷蔵庫があります。職場やバス停まで歩くことがなくなります。このように、家で1人で働くのが健康と胴まわりに悪いのは言うまでもありません。


「CreativeBloq」で、Chirstopher Phin氏がこう告白していました。



かつては通勤で1日4.8kmは歩いていました。それ以外に、フロア内の同僚に話しに行ったり、建物間の移動などもありました。スリムだったことは一度もありませんが、何とか肥満寸前でとどまっていました。でも今や、ベッドから職場までほんの1歩でたどり着けます。その結果、WiFi対応のスマート体重計が、情け容赦ない数値を記録し続けています。




身体的健康だけではありません。起業には、精神的な健康への悪影響も指摘されています。抑うつ、不安、燃え尽きなどのリスクが高まるのです。



7. 自分のことがよくわかる


会社勤めの場合、社内のしきたりに1日のリズムが規制されます。でも、独立してすぐ、自分で地図とコンパスの役割を果たさなければならないことに気づくでしょう。そのプロセスで、どんどん自分のことに詳しくなっていきます。


前述のBondさんは、警鐘を鳴らします。



初めての自由で、ゼロからルールを決めなければならない状況では、方向感覚を見失いかねません。



Bondさんによると、新人フリーランサーは、自分のエネルギーレベルと生産性を最大にできる働き方、時間帯、場所を慎重に考える必要があるそうです。


もっと大きな疑問が生じることもあるでしょう。Phin氏はこう言います。



会社では、ルーチン以外にも制約があります。どんなに好きな仕事でも、毎日多かれ少なかれ、何らかの指示を受けるでしょう。でも、フリーランサーの場合、今日は何をしようという疑問から毎日がはじまります。それがきっけになって、自分がその日に何をしたいのか、翌日に何がしたいのかを発見できることもあります。




8. 税金に腹が立つ


今でも税金が嫌いですって? そんなことを言うと、熟年のフリーランサーに「まだ何も知らないくせに」と嘲笑されますよ。


Olsenさんは言います。



大半のフリーランサーは請負で仕事をしています。つまり、都度税金を払うのではなく、4半期または1年ごとに納税しています。そのためにお金を貯めておくことが非常に重要です。でも、稼ぎが十分でないときはそれが何よりも苦しいのですが。



ありがたいことに、税金に関するガイドや情報は巷にあふれています。でも、悲しいかな、どれを読んだところで、税金に対する怒りが収まることはありません。



8 Tough Lessons You'll Learn Your First Year as Your Own Boss | Inc.


Jessica Stillman(訳:堀込泰三)

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