今や経済ニュースで当たり前のように取り上げられるようになったビットコイン。ところが、仮想通貨は今後私たちの生活の中でどう使われるのか、なかなかイメージが湧きません。
そう思っているときに出会ったのが『いまさら聞けないビットコインとブロックチェーン』(大塚雄介著、ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)という本。ビットコインやブロックチェーンをわかりやすい言葉で解説したこの本はふつうに読んでも仮想通貨について知っておくべきことがよくわかるおすすめの本なのですが、その中に非常に気になる記述が。なんと、ビットコインで店頭決済ができるようになっているのだそうです。
そこで今回は、ビットコインを使ってランチを食べてみることにしました。
1. 準備編:取引アプリでビットコインを買う
今回は、『いまさら聞けないビットコインとブロックチェーン』で紹介されていたビットコイン取引アプリ『Coincheck』を使用しました。同書の著者・大塚雄介さんが運営しているサービスでもあります。このアプリを使えば、国内およそ4200店舗以上でビットコインによる店頭決済が可能とのこと。

まずはメールアドレス&パスワードを入力 or Facebookアカウントを使ってアカウント登録を行い、各種個人情報を入力します。

本人確認書類をアップロードします。審査が通れば即日でアプリ上でビットコインを売買したり、決済に使ったりできるようになります。2〜3日して登録した住所に本人確認完了のハガキが到着するので受け取りをお忘れなく。

ビットコイン購入画面に進みます。ビットコインを買うために、日本円を入金することになります。銀行振込、カード払い、コンビニ払いが選べます。筆者はコンビニ払いを利用したのですが、3000円入金するのに手数料は756円...! ちょっとお高い...。カード払いでも手数料は発生し、銀行振込では振込手数料を負担する必要があります。
購入を決定する瞬間まで変動を続ける円⇄ビットコイン交換レートにドキドキしつつも、ビットコインを購入します。3000円が0.0215 BTCになりました。小数点以下の数字になると、目減りした感じもしますね。
2. ビットコイン店頭決済に対応したお店に行く
準備が整ったので、Coincheckでの決済に対応しているお店に向かいます。今回は、対応店舗の中から東京・永田町の「tiny peace kitchen」を選びました。


レジで希望のメニューを選び、「ビットコイン決済で」と告げると、QRコードを提示されます。

Coincheckで決済用のQRコードを呼び出し、スマホ上でお店側のQRコードと重ね合わせればすぐに決済は完了。ビットコインを購入するまでは少し手間がかかりますが、決済自体には何のストレスもありません。

取引履歴を見ると、0.00941 BTCを支払っていました。円⇄ビットコインのレートの関係で、1307円相当を支払っている計算ですが、今回注文したメニューは日本円だと総額1300円。レートは随時変動するので、このように微妙な損をすることもあるのは仕方なさそうです。


ここで、「これってビットコインで支払う意味はあったのだろうか?」という疑問がふと頭をよぎります。
決済の手間自体はSuicaやApple Payのような電子マネーと大差ありませんが、手数料が高いため店頭支払い用にわざわざビットコインを買うのは現実的ではありません。レート変動の影響を常に受けるのも気になる人は気になるでしょう。
ではなぜ、こうしたサービスが存在しているのでしょうか?

せっかくなので、ビットコイン店頭決済について知るきっかけとなった『いまさら聞けないビットコインとブロックチェーン』の著者であり、今回利用したビットコイン取引アプリ「Coincheck」を展開する大塚雄介さんにもお店に来ていただいて、お話をうかがうことにしました。
大塚さん:このサービスは、5万円で買ったビットコインが今は15万円になっている...含み益を利確(※)したいが、利確すると多額の税金が発生してしまう...。ならビットコインのまま使ってしまおう、といったニーズに対するサービスなんですよ。今、そうしたニーズがある程度あるわけです。 ※含み益=株や債権、外貨(ビットコインなどの仮想通貨も含む)が購入時より値上がりし、売却すれば利益を得られる状態のこと。利確は「利益確定」。この場合だとビットコインを売却して利益を得ることを指す。また、Coincheckはタブレットに無料アプリを入れれば使えるため、カードリーダーなどの初期設備投資が不要です。カード会社などが介在しないため、手数料も決済額の1%で済むため、お店にとってもメリットがあります。カード払いだとお店側は手数料は数%を負担しなければなりません。
海外から旅行で訪れた人にとっても便利でしょうね。
つまり、ビットコインでの店頭決済は単純に一般消費者をターゲットにしたサービスではなく、すでに投資などの目的でビットコインを保有している人向けのサービスだったのです。
今回の私のように、試しに使ってみたという人間はビットコイン購入に必要な日本円を入金するときの振込手数料やコンビニ払い手数料が気になってしまいますが、ビットコインをある程度長期的に保有するつもりがあるなら同行振り込みを使えばいいだけなので、ビットコイン店頭決済を電子マネーなどと変わらない感覚で使えるはずです。
まとめるなら、ビットコイン店頭決済を生活の中で活用できるか否かは、「そもそもビットコインを運用するつもりがあるのか否か」に左右されるということになるでしょう。では、今ビットコインを保有し、運用してみるべき理由はあるのでしょうか? 次回は大塚さんにインタビューしてこの点を明らかにしますので、お楽しみに。
(神山拓生、取材協力/tiny peace kitchen)