BIZREACHが運営するウェブメディア「BIZREACH FRONTIER」では、FinTech、VR/AR、人工知能など、最先端の分野にチャレンジし、いま、ではなく未来、「次の時代の当たり前」になるサービスや技術を作らんとする日本の企業を紹介しています。

ライフハッカー[日本版]では、毎週その中から1本の記事をセレクト。前人未踏の領域へとチャレンジする日本企業をご紹介していきます。

アプリやサービスに限定されない、独自の経済圏を築く

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「テクノロジーでお金の在り方を変える」というミッションを掲げ、ビッグデータと人工知能(AI)を駆使したDatanomics(データノミクス)構想を目指している株式会社メタップス。「Datanomicsとは、Data(情報)とEconomics(経済)をかけ合わせた造語であり、データを扱ってどうビジネスを展開するのかを追求する、メタップスだからこそ実現できるものだと考えています」と語るのは、同社のデータサイエンティストの有井勝之氏だ。

有井氏は大学を卒業後、アクセンチュア株式会社に入社。そこからBNPパリバや楽天株式会社を経て、メタップスに入社した経歴の持ち主だ。担当してきた領域はさまざまだが、「総じてデータを活用し、どうビジネスに生かすのか」という業務内容はほぼ一貫していたと語る。

「インターネットが普及、発達し、膨大な情報を誰もが簡単に受け取れるようになった今、明らかに情報の持つ価値はなくなってきています。情報の非対称性がビジネスになる時代は終わりを迎えつつあり、インターネット時代にふさわしい、新しいビジネスを作る必要があります。それを実現できると思ったのがメタップスでした。前職までは良くも悪くも、データや人材といった土台は用意されていたので、逆にそれも含めてゼロからやってみたくなったんです」

現在、メタップスはお金の流れを予測する人工知能「Laplace(ラプラス)」をコアテクノロジーとして据えた研究開発を推進している。自社で収集できるデータに、世の中にあふれるオープンデータを組み合わせることで、お金の流れを可視化するだけでなく、新たなサービスの種を見いだすことも可能になるという。

「世の中の多くのマーケティングツールは、特定のサービスやアプリ内の動きを調べるのには問題ないかもしれません。しかし、ソーシャルゲームのアプリ1つ見ても、そのアプリは誰かのスマートフォンの画面上では他のニュースアプリや画像共有アプリと並んでいます。そういう点まで考えているサービスや企業はほぼ見かけません。そして、あらゆるサービスに『決済する』という行為はついてまわります。お金の流れを予測するということは、世の中の動きすべてを予測することにつながる、非常に面白いテーマだと考えています」

思い込みでは見えなかった、真実をあぶり出す

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「メタップスにはいくつかの関連会社があり、ユーザーのさまざまな消費行動を予測、分析するための土台ができあがっています」と語るのは、有井氏と同じくデータサイエンティストの西口真央氏だ。

大学在学時から今でいうデータマイニングを学び、ソーシャルゲーム会社や人材系企業などを経て、メタップスに入社。キャリアを通じてビッグデータを軸としたサービス改善やマッチングビジネスの創出などを担当してきたという西口氏は、「人間の消費行動にはパターンがあります。それを分析することで、ユーザーの意思決定のポイントが見えてくるのです」と語る。

「当然ですが、人間がお金を支払ったり、受け取ったりする瞬間には、必ず意思決定があります。この意思決定を科学することができれば、あらゆる分野に応用可能ですし、これからの時代はそこまでしないと事業としては本気でスケールしないのではないかと思います」

それを行っている企業の1つがAmazonだろう。世界最大級の倉庫業として知られるAmazonも、現在は「Amazon Web Services」に代表される世界最大手のクラウドプラットフォーマーとして君臨。その後も人工知能を搭載した「Amazon Echo」などを発売し、2016年末にはリアル店舗への参入を見据えた「Amazon Go」の構想を発表している。「ああいったコングロマリットな事業展開をできる企業が、本当に強く、生き残る企業だと思います」と、西口氏は語る。

「メタップスもAmazonも、データやファクトを軸としてビジネスをやっている点は同じです。また、ユーザーの購入意欲をくすぐるタッチポイントを研究し尽くしているという点でも同一です。異なるのはオンラインなのかオフラインなのか、対象がECビジネスなのかエンターテインメントやゲームアプリなのかといったところですが、これは取るに足りないものだと考えています。商材やマッチングの質に違いこそあれ、『これに決めた』という意思決定する瞬間は存在します。そのパターンを見つけ出すことで、メタップスは一歩先を行こうとしています」

たとえば、ソーシャルゲームについて。特定の1つのソーシャルゲームをプレイし続けているユーザーと、複数のソーシャルゲームを同時並行してプレイしているユーザーを比較すると、後者のほうが課金率、そしてゲームの利用継続率が高いという傾向があるという。これも、ゲーム単体の利用状況を計測しているだけでは見えてこない1つの真実だ。なぜ、そうしたことが起きるのかという真実を、感覚ではなく、データからメタップスは解き明かそうとしている。

労働の「義務感」を払拭(ふっしょく)できる時代を作る

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インターネットの登場により、情報量は爆発的に増加した。そのことが「人間をより優柔不断にしてしまうのではないか」と、西口氏は懸念している。

「デーティングアプリなどで、好みの異性たちから大量の『いいね!』が送られてきたら、人間は誰だって迷ってしまうでしょう。選択肢が広がったことが悩みにつながるのです。恋愛の悩みならまだいいかもしれませんが、これがお金や家族の生命に関わることならどうでしょうか。『情報が多い=幸せ』は本当なのか、ということをよく考えています」

膨大な数の選択肢から最適な選択肢を一緒に考えてくれるパートナー。それが人工知能の目指すべき役割だと西口氏が語れば、有井氏もその意見に同意する。

「今、さまざまな人工知能と呼ばれるものが市場に出ていますが、いずれも人間の意思決定を促すまでには至っていません。これはビジネスとしても、テクノロジーとしてもチャンスです。そして、メタップスは本気でここを押さえにいこうとしています。お金の流れ、意思決定の流れがきちんと見えてくるようになれば、今ほど人間は必死に働かなくてもよくなるでしょう」

やるべき仕事が少なくなることは、ネガティブな話ではないと有井氏は言う。仕事を「やらなくてはいけないもの」から「やりたいこと」に変える、大きなチャンスだと考えている。

「本心を言ってしまうと、僕自身は何もせず暮らしていたいのですが(笑)。分かりやすくいうと『お金稼ぎ』を人間に代わって人工知能がやってくれる時代が来るのなら、働くという義務から解放されることになります。そうなると、よりパーソナライズされた仕事が生まれると思うんです。やりたいことをやって暮らせる時代が来るし、そのやりたいことが仕事になる可能性だって十二分にあるわけですから」

その第一歩としてあるのが、パートナーとなる人工知能技術の確立にある、と両氏は語る。人工知能に任せられる点は任せてリソースを極力抑え、より本質的で創造的な部分に人を回し、全体を効率化していく。「Laplace」の主要ターゲット層はマーケターになるが、「マーケターがよりクリエイティブに向かう流れは不可逆だと思います」と有井氏は言う。

「僕もかつてファッション関連の事業をやっていて、デザイナーの方たちと接する機会も多かったのですが、彼らは本当にエモーショナルに生きているな、と思いました。彼らの感性や価値観は、僕の理解が及ばない部分も多くありましたが、振り返って考えてみれば、そういうエモーショナルな考え方を数値化することに、どこも成功していない。彼らが何を考え、どんな心の声に従っているか。これも意思決定の1つであり、メタップスの研究開発の対象だと考えれば、こんなにワクワクすることってないんです」

研究対象の抽象度が上がるほど、その目的達成は困難になるが、それこそが「サイエンティスト」という肩書を持つ彼らの知的好奇心をくすぐるのかもしれない。西口氏も同意するように「ちょっと視点を引いて俯瞰(ふかん)すると、世の中の物事にいろいろな共通項が見えてくるようになります。この課題とこの課題の根っこにあるものは1つだよね、といったことが見えてくるとすごく面白いですし、その課題を程よく解きほぐして、解決できるレベルに落とし込むことがうまい人が、メタップスには多くいると思います」

Datanomics構想の実現に向けた道のりはまだまだ長いかもしれない。しかし、独自の経済圏を築くというチャレンジを通じて、日本、ひいては世界の働き方、楽しみ方を変革しうる可能性を秘めているメタップスに、大きな期待を寄せずにはいられない。

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