Popular Science:AmazonとBlue Originの創設者ジェフ・ベゾス氏が、2020年には月への配送サービスをはじめる構想があることを明らかにしました。ここ40年以上、人類は地球周回軌道をまわるばかりでしたが、ここへきてにわかに月への帰還ラッシュが起きようとしています。2月24日、NASAが、2019年にも月周回軌道への有人飛行を行う可能性があることを公表しました。27日には、SpaceXが、2018年に2人の民間人を宇宙船Crew Dragonで月の周回飛行に連れていく計画があることを発表しています。そして、ジェフ・ベゾス氏がアクションを起こしました。
ワシントンポストの独占インタビューで、ベゾス氏が所有する民間宇宙企業Blue Originが、Amazonのように、月への貨物配送ルートを構築する計画であることを明かしました。この提案はすでにNASAとトランプ大統領の政権移行チームに送られたと伝えられていますが、政権移行チームの中には、人間を再び月に送る意欲を示している人たちがいます。
提案の詳細は公表されていませんが、ワシントンポストの記事によれば、およそ次の内容だったということです。
- Blue Origin社は、月との間で人間ではなく貨物をやりとりするための月着陸船を開発したいと考えている。着陸船にはおそらく、New Shepardロケットの着陸に使われている技術と同じような技術が適用される。
- 同社はシャクルトン・クレーター付近に月着陸船「Blue Moon」を着陸させたいと考えている。このクレーターの縁部は常に太陽光が降り注ぎ、太陽光パネルの設置には最適。底部は氷で満たされており、月面に居留地を築くのに適した場所でもある。さらに、水はロケット燃料にもなる水素と酸素に分解できる。シャクルトン・クレーターは、こうした条件に恵まれたまさに一等地と言える。
- Blue Originの公算では、月への配送設備は2020年には準備可能である。
- 月着陸船「Blue Moon」は、NASAの「SLS」や、United Launch Allianceの「Atlas V」、Blue Originが開発している「New Glenn」など、さまざまなロケットで打ち上げが可能である。
- ベゾス氏はこの事業に私財の一部を投じる予定だが、さらなる投資とNASAの協力が必要となるだろう。
現実的には、月面に居留地を構築するまでに3年以上はかかると思われます。現在、NASAやそのほかの団体が、宇宙飛行士が地球の大気外で安全に作業するための、耐放射線ハウジングの開発に取り組んでいますが、まだ完成には至っていません。とはいえ、ベゾス氏は、月に居留地をつくる計画が進められるなら、Blue Moonを使って、居留地に必要な物資を運ぶことを構想しています。
SpaceXも貨物船を月に着陸させる能力を持っています。Blue OriginもSpaceXも、ロケットを宇宙に打ち上げたあと、ブースターを地上に着陸させることに成功しています。SpaceXはさらに一歩進んでおり、ロケットをより遠くへより高速で打ち上げることができるうえ、同社の宇宙船「Crew Dragon」のカプセルが、スラスター噴射を用いて着陸できる能力があることを証明しています。NASAは、推進着陸技術に関するデータとの交換で、SpaceXの火星プロジェクトに協力することを約束しています。
現在、SpaceXは、月よりも火星にフォーカスしているように見えます。イーロン・マスク氏の目が少しばかり月に向きはじめたのだとしても、Blue Originの月プロジェクトが淘汰されることはないでしょう。結局のところマスク氏は、火星移住という高価な夢のために、どうにかして資金を調達しなければならないのですから。
Amazon's owner wants to extend its delivery range--to the moon|Popular Science
Sarah Fecht(訳:伊藤貴之)
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