外国人から見た日本人の特長の1つが「よく、うなずくこと」。海外ドラマや映画で登場する日本人は、何かにつけ、やり過ぎだろうと思うくらい、うなずいていることがあります。
しかし、英語のことわざ「A nod is as good as a wink.=うなずきは目配せと同じほど心が伝わる」もあり、気持ちを伝える仕草であることには変わりませんが、どうやら使い方が違うようです。
そこで、作家で心理学者の晴香葉子(はるか・ようこ)さんに、日本人がよく行う「うなずき」の行動心理について話を聞きました。

なぜ、日本人はうなずく回数が多いのか?
晴香さん:うなずきは、「肯定・同意・承諾」するときに使う仕草です。首を下げるだけで、相手に自分の意思を伝えることができます。ある調査によると、日本人はアメリカ人の2倍以上もうなずくそうです。日本人は、話の途中でも頻繁にうなずき、相手がうなずくと自分もうなずいたりします。アメリカ人は、話の終わりや、納得したとき、自分の考えがはっきりしたときなどにうなずく傾向があるので、その数に違いが出るわけです。
また、うなずくことは、会話のストレスを低減し、親しみを感じやすくなるので、好感度が上がるなどの心理効果がわかっています。日本人は「和を以て貴しとなす」ではありませんが、知らず知らずのうちに、この効果を理解してうなずいているのもかもしれませんね。
うなずくタイミングやパターンでわかる、相手の心理
晴香さん:うなずく仕草にはパターンがあり、その動作を理解することで相手の心理がわかり、うなずき方を変えることで自分の気持ちを伝えることもできます。ここでは代表的な3つのパターンをご紹介します。話の切れ目や同意を求めるときにうなずく
誰もがご存知のことだと思いますが、相手に対して「同意」を示しています。さらに、相手の考えが「理解」できたときにも見られます。
話の切れ目に関係なくうなずく
話の途中でよくうなずくのは、「無関心」「退屈」など心の表れです。
「うん、うん」といった、短く細かいうなずきが頻繁に続いたときは、話を早く切り上げたい、本題に早く入って欲しいときなどによく見られます。前述の通り、話に飽きた心理に加えて、ストレスを低減するためにうなずいていることもあります。
自分が話した内容に対して、自分でうなずく
自信家と心配性の人、両極端の人に多いうなずき方です。自信家の場合は、自分の話したことを脳で再認識して、もっともだと自分で思ったときは、大きくうなずくこともあります。
「〇〇でね(うなずく)、そのあとに(うなずく)」など、話の途中で何度もうなずいているときは、自信がなかったり、味方になってほしい、寄り添って欲しい、同意してほしいと思っている傾向があります。
相手のうなずき方を理解した対処法
晴香さん:会話の途中、自分が話しているときに、相手が細かく頻繁にうなずきはじめたら、"話に飽きてきた"もしくは"心ここにあらず"などのサインなので、話題を変えて相手の興味を引いてみましょう。もしかしたら、相手が話したいことがあるのかもしれないので、さり気なく会話のバトンを相手に渡します。自分がうなずく側に変わることで、親しみや好感度がアップにつながります。
ときには、目を輝かせてうなずいてくる人がいます。話の内容に興味津々なのかもしれませんが、サービス精神が旺盛で、目立ちたがり屋の場合もあります。初対面だとしても、うなずき方でキャラクターがわかれば、相手のよいところを積極的に褒めることで親近感が生まれてきます。
また、ビジネスなどの場面で力強くうなずいてくる人は、やる気のある意思表示です。こちらも同じようにうなずくことで、お互いの積極性が伝わり、良い関係構築がしやすくなります。
うなずきは、会話の最中によくある仕草ですが、独り言や頭で考えているときにも勝手にしているときがあります。前述の自信家もしくは心配性の両極で考えると、このうなずきはどちらなのか? 今の自分を知る尺度にもなりそうですね。
(文/香川博人)
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