あなたがiPhoneを持っているなら、プロっぽい動画を作るために必要なものをすでに手にしているということです。iPhoneを使えば、初心者、セミプロを問わず、スマホで撮ったとは思えない、かっこいい動画を撮影することができます。以下にそのやり方を説明します。

iPhoneですばらしい動画が撮影できることは知ってるよ、とあなたは言うかもしれません。しかし、どれほど素晴らしい動画を撮れるかはわかっていないと思います。とりあえず、2015年のサンダンス映画祭で初演された87分の映画「タンジェリン」の予告編を見てください。

すごいでしょ? この映画はすべて、iPhone 5Sで撮影されています。タンジェリンは、質の高い映画をつくるのにハリウッドのような巨大な予算が必要ないことの証となりました。もちろん、この映画を撮影したクリエイターたちの創造性とスキルにも賛辞を贈らねばなりません。なお、ほかのスマートフォンでもすばらしい動画を撮影することは可能ですが、今回紹介する機材や機能は、基本的にiPhoneを前提としています。

映画制作の基礎とiPhoneの機能を理解する

最高の機材を活かすも殺すも、使う人次第です。カメラのアングルと動き、照明といった、基礎的な映画製作技術を学ぶことは非常に重要です。

なかでも照明は、雰囲気を作ったり、特定の細部を強調するために重要です。iPhoneの動画は、自然光が潤沢にあるほどきれいに撮影できます。予算に余裕があるなら、StudioPROなどの優れた照明機材の使い方を学びましょう。100ドル以下で自作することも可能です。覚えておきべきそのほかのコツは以下。

  • 常にランドスケープモード(横向き画面)で撮影する。これが一番の基本です。ポートレードモードにすると、完成動画に見苦しい黒いバーが出てしまいます。
  • カメラのレンズを定期的に掃除する。マイクロファイバーの布でほこりや油分を拭き取るだけです。10秒もかかりません。
  • ズーム機能は使用しない。iPhoneのズームは、光学ズームではなくデジタルズームなので、細部がきれいに撮れず、画質もよくありません。デジタルズームを使うと、動画がざらついた感じになってしまいます。もっともiPhone 7 Plusなら、デュアルカメラレンズを使って、画質を損なわずにズームが可能です。
  • 露出ロックを使用する。 iPhoneは自動的に被写体にピントを合わせ、カメラに入る光の量、すなわち露出を調整してくれます。しゃべっている人を撮影する場合、この自動調整機能のせいで動画がガタガタしてしまうことがあります。 オート露出/オートフォーカス(AE / AF)ロック機能を使用するには、画面を、AE / AFボックスが表示されるまで長押ししてください。これで、フォーカスがロックされ、指を上下にドラッグすることで露出を調整できます。どちらの機能も、動画をシャープに保つのに役立ちます。
  • 機内モードにする。不必要な通知のせいで撮影を邪魔されたり、ノイズが入るのを避けるためです。機内モードにするには、設定画面を開くか、画面を上にスワイプしてコントロールセンターを表示し、飛行機のマークをタップします。
  • アタッチメントレンズを利用する。多くのサードパーティー企業が、iPhoneに物理的に取り付けて、写真や動画の見え方を変えられるレンズをつくっています。たとえば、魚眼レンズや広角レンズで雰囲気を変えることができます。必須ではありませんが、創造性と様式の可能性が広がります。olloclipのようなマルチレンズキットもあります。
  • タイムラプスやスローモーション機能を利用する。iPhoneにはノーマルなビデオに加えて、タイムラプスやスローモーションを撮影する機能が標準でついています。カメラアプリを開いたら、画面下部を左にスライドして、スローモーションを探してください。タイムラプスやスローモーションを撮影するときは、カメラを三脚(または空のトイレットペーパーロールを利用したDIYホルダー)に固定するようにします。

iPhoneがすばらしい点は、パワーとシンプルさを兼ね備えているところです。プロのように見える動画を簡単なインターフェースで撮影することができるので、より多くの時間を撮影技術の習得にあてることができます。

ジンバルや三脚でiPhoneを安定させる

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プロのカメラマンは、ステディカムやジンバルのような洗練された道具を使って、カメラを安定させ、クオリティの高い動画を撮影しています。最新のiPhoneには、手ブレを補正する光学式手ブレ補正機能が搭載されていますが、iPhoneを安定させるには、やはり三脚が一番です。

移動しながら撮影するには、ステディカムとジンバルが理想的ですが、基本的に三脚よりも高価です。私は「ゴリラポッド」を使っています。この三脚は様々な地形や環境にうまく適応し、セットアップも簡単です。

iPhoneを安定させるには、両手で持って、できるだけ体に近づけるようにします。さらに、肘をどこかに付けて体を支えられたらベストです。

マイクをアップグレードして音質をあげる

残念ながら、iPhoneの内蔵マイクだけでは十分とは言えません。とくに、騒々しい環境で撮影したり、特定の音にフォーカスしたい(たとえば、鳥の鳴き声や車の音に邪魔されずに、人の声を録りたい)ときには困ります。指向性のある音をきれいに録るためには、ラベリアマイクかショットガンマイクに投資することを検討してください(両方持っている人もいる)。両方は買えないという人は、どんな動画を撮影するのかで判断してください。インタビューや説明会の撮影、旅行動画など、動画の種類によって、それぞれのマイクの向き不向きがあります。

  • ラベリアエマイク:テレビのニュースやインタビューで、見たことがあると思います。このマイクは無指向性で、有線のものなら安く買えますが、コードを隠すのが結構たいへんです。シャツの襟にマイクを付けて、シャツの下にコードを通すことも可能ですが、体を大きく動かすと、シャツとマイクが擦れてノイズになってしまいます。マイクのヘッドをモールスキンで覆ってノイズ対策にしている人もいます。静かに座っている人や立って動かない人の声を拾うには、ラベリアマイクが最適です。

  • ショットガンマイク:ショットガンマイクは、よりナチュラルに音声を録音できます。指向性があり、録りたい音源がある方向にマイクを向けて使います。カメラに映らない両サイドからの雑音をカットするのに最適です。屋外で撮影するなら、風の音を遮るために何らかの防風装置が必要です。

マイクをできるだけ音源に近づけることが理想的です。撮影するシーンによっては大変ですが、良い音を録るためには重要なことです。iPhoneをもう1台用意して録音専用にしたり、有名なポッドキャスターやフィールドジャーナリストがやっているように、外部マイクにZoom H1などのICレコーダーを接続して使うこともできます。

撮影を開始する前に必ずマイクのテストを行ってください。簡単な機材チェックをさぼったばかりに、撮り直しになるのは最悪です。また、プロっぽくこんなことをやってみましょう。大きな音で手をたたき、後で音声トラックを編集するときの基準点を設定するのです。あとで複数の音声トラックを同期させるときに役立ちます。

標準のカメラアプリよりも優秀なビデオアプリを使って撮影する

カメラアプリの録画ボタンを押せばただちに撮影を開始できますが、FiLMic ProiOSAndroid)などのアプリを使えば、フォーカスからホワイトバランス、フレームレートまで、動画の仕上がりを細かくコントロールできます。音声のコントロール機能や、RODE VideoMic GOのような外部マイクとの互換性もあります。タンジェリンの製作者も、このアプリを使って、高度に様式化されたルックを実現しています。このアプリを使った素晴らしい動画の事例がほかにもあります。

とはいえ、10ドルは決して安くはありません。とくに初心者の人は、FiLMic Proは無数の調整機能をそなえており、習得に時間がかかることに注意してください。

大金をはたかなくても、iPhoneやスマートフォンで本当に美しい動画を簡単に撮影することができます。一番いいのは、必要な準備さえ整えたら、本当にどこででも撮影が行えることです。ストレージの空き容量が十分あることを確認し、データは定期的にバックアップしてください。撮影した動画は別保存しながら、空きスペースをつくりますが、くれぐれも誤ってデータを消してしまわないように注意してください。

Stephanie Lee(原文/訳:伊藤貴之)

Illustration by Sam Woolley. Image by sridgway.