同僚から新しいプロジェクトを手伝うよう頼まれたとしましょう。気持ちよく快諾できる場合、そのメリットは明白です。チームメンバーとして期待される答えですし、興味深い新たな職務を担う準備ができていることをアピールする絶好の機会になるからです。
一方、本当は断りたい場合はどうでしょう。「ノー」と言うことに罪悪感を覚える必要はない、と説く記事も数多くありますが、それでも、断るのは悪いと感じる人は多いものです。それで、自分がどれだけ役に立つ人間かを示そうとして、ただでさえ厳しいスケジュールに、さらにもう1つ予定をねじ込んでしまうわけです。
その結果どうなるかは、あなたもご存じでしょう。よかれと思って「イエス」といったものの、それが完全に裏目に出てしまうのです。残業時間は増えますし、どんな人でも能力には限りがありますから、結局予定通りに課題をこなせずに終わります。「イエス」といったばかりに、締め切りの延長を願い出て、何もかもうまくいかない人に成り下がってしまうわけです。
とはいえ、「あちらを立てればこちらが立たず」的なジレンマに陥る必要はありません。面倒くさがりだと思われることなく、上手に「ノー」と言う方法はあるのです。言い方を少し改めるだけで、提案されたプロジェクトへの参加を断ることが、すべての人にとって最高の選択肢だという印象を与えられるはずです。
「残念ですが、今は[プロジェクト名]で手一杯です。お話があった案件には、[日付]までは全力集中できません」
新プロジェクトについて打診を受けた時、ありがちな返答は、「とても無理です、超忙しいので」といったものでしょう。あるいは「えっ、いいですよ」という答えもありえますが、こちらだと1週間の徹夜勤務を迫られるかもしれません。どちらの返答にせよ、周囲はあなたについて、仕事をうまくさばききれていないという印象を覚えるでしょう。
一方、例に挙げた断り方であれば、仕事を抱え込みすぎることを防ぎつつ、相手に前向きな印象を与えることができます。大量の仕事に飲み込まれて身動きが取れないのではなく、この人は自分のスケジュールを完璧に把握していて、予定が空く正確な日付がわかっているのだと思ってもらえるわけです。新たな仕事の依頼をしてきたのがあなたの上司で、断る理由として挙げたプロジェクトをその上司が把握していなかった場合は、これまでの経緯を説明しましょう。あなたが担当する業務量がどれだけ多いかわかれば、上司もある程度の負担軽減を考えてくれるかもしれません。
その後、あなたの読みが外れて、早めに予定が空いたら、先日断った依頼に再び応じることもできます。この場合も、自ら課した締め切りよりも仕事を早く上げられる人、というイメージも持ってもらえるはずです。
もちろん、相手があなたの断り文句を真に受けて、あなたが語った予定が空く期日まで待ってから声をかけてくる可能性はあります。これはつまり、どうしてもあなたに参加してほしいということですから、プロジェクトに興味はあるが、本当に忙しくて断ったのであればありがたい話です。逆に、相手の顔を立てつつ、そつなく断りたいだけであれば、以下に挙げる2つの選択肢のうち1つを選んだ方が良いでしょう。
「[必要なスキル]について、私はあまり詳しくないのですが、ジャネットはよく知っているはずですよ」
頼まれた仕事がつまらなそうだからと言って、本人の了解も得ずに同僚に押し付けるようなことをしたら、ひどい人だと思われるのは当然です。ここでは、おもしろそうなプロジェクトだけれど、あなたの得意分野ではない場合の断り方を考えます。
そのプロジェクトに関わる人たちにとって時間は問題にならないのであれば、あなたがこれから必要なスキルを身につけて参加するという方法もあるかもしれません。また、上司があなたの成長を期待して、不慣れなプロジェクトに参加を促すこともあるでしょう。でもここでは、時間的余裕がないケースを考えます。あなたも、プロジェクトに参加を呼びかけた人も、忙しいのであれば、必要なスキルを持つ同僚に手伝ってもらうほうが望む結果をより早く得られるはずです。
さらに言えば、良い仕事ぶりを評価されるのは誰でも嬉しいものです。ですから、プロジェクトを依頼してきたマイケルが、同僚のジャネットのところに行って、こう言ったらどうでしょう。「今週もし時間があれば、僕がクライアント向けに作成しているプレゼン資料について、意見を聞かせてくれないかな。ミシェルから、君が写真の修整を得意にしていると聞いたので、資料の見た目をもっと魅力的にする手伝いをしてもらえないかと思って」。これなら、みんなが気分良く仕事を進められるはずです。
ジャネットは、すぐれた能力を持っていると認められてまんざらでもないでしょうし、マイケルも、すぐれた手助けをしてくれる同僚を教えてもらえて、あなたに感謝するでしょう。そして、自分の代わりにジャネットを推薦したあなたは、山積みになっている仕事を片づけるのに集中できますし、「初心者向け写真修整術」といったものをググって夕方の時間を無駄に費やさずに済むというメリットも得られます。
指名されてジャネットが喜ぶかどうかわからない時は、前もって打診しておくか、あるいは彼女が嫌なら断れるように、一言添えると良いでしょう。たとえば、「この手の仕事ならジャネットがすごく上手だけれど、今彼女はすごく忙しいはず」と言っておくだけでも違うはずです。
「この件であれば、[リソース名]がいつも役に立っています」
依頼された案件について、あなたがその部署で一番頼りになる立場であった場合、持ち込まれた話を別の同僚に振るのは筋が通りません。こうした場合は、相手があなたに依頼してきたそもそもの理由を考えてみましょう。チームのメンバーが周囲に協力を求めるのはなぜでしょう? それは、助けを必要としているからです。
ですから、あなたに「無理だよ、忙しいんだ」と断られたら、相手は落胆するはずです。あなたがどれだけ人当たり良く接しても、断った理由がもっともなものでも、さらには参加できないことを謝ったとしても、相手ががっかりすることに変わりはありません。あなたにこれ以上関わってもらえないという事実だけが残るからです。
あなたとしても、こうした状況はなんとかしたいはずです。プロジェクトにしっかり関わるだけの時間はないとしても、アドバイスやアイデア、先例となるプロジェクト、あるいは役立ちそうなリソースを示すために数分を割くことくらいはできるでしょう。わざわざアプローチしてきたのですから、相手はあなたの意見に価値を置いているはずです。上に挙げた表現を使えば、プロジェクトに参加することなく、きちんと相手に答えを返し、参考になる材料を与えることができます。
頼んできた同僚としては、実際にあなたが時間を割いてプロジェクトに参加してくれることが理想だったはずです。残念ながら、この願いを常に受け入れられるとは限りませんが、あなたが有能で親切だという印象を残しつつ、うまく断る方法はあります。この場合、言葉遣いに気をつけることが肝心です。
3 Better Ways to Turn Down a New Project (That Don't Involve Saying "No") | The Muse
Sara McCord(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)
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