情報が氾濫する現代。インターネットやソーシャルメディアを通じて入り込む「他人の思考」やある種の洗脳に踊らされ、自分本来の望みではなく「他人の欲望」を達成することを自分の幸せと勘違いしてしまっている人が多いように思います。「もっともっと!」と欲望を満たしたつもりが、満たされない。その結果、心と身体のバランスを崩してしまう人も。
大事なのは、「ブレない自分軸」を作ることです。
日々迫り来る情報に翻弄されず、しっかりと地に足をつけ、自分の内側からふつふつと湧き上がるものをちゃんとキャッチする。そして、肉体を使ってその「自分本来の望み」を具現化していく。それができたときに、人は本当の意味での満足感を得るのではないでしょうか。
「ブレない自分軸」とは、精神的に安定しているということ。そして、その前提として身体的にも安定しているということです。
では自分本来の状態を取り戻し、感情や思考を安定させさせていくためにはどうしたら良いのでしょう? 今回は「ブレない自分軸」を作る方法を東洋医学とセラピストの視点からお伝えします。
心や精神のバランスをとる「経絡とツボ」
心と身体はつながっています。西洋医学的な観点から言っても、心が感じたことは脳に伝わり、ホルモン系や自律神経系を通じて身体に影響を与えます。
たとえば、強い緊張感を要求される仕事をしているとき、人は交感神経優位となり、消化吸収の臓器はその働きを止めてしまいます。そして仕事から解放されてホッとすると副交感神経優位に導かれ、急にお腹が減ったり、トイレに行きたくなったりしますね。
これは心と身体のつながりのシンプルな例です。過度なストレスが続いてしまうと人は心身のバランスを崩し、さまざまな不定愁訴や病の原因となります。
東洋医学ではまた違った考え方で心と身体のつながりを説明します。
それが、言葉だけは知っているという人も多い「経絡」や「ツボ」。東洋医学ではこれらを「精神」や「感情」のバランスを取るのに役に立てています。
たとえば、怒りやフラストレーションは「肝」や「胆」の経絡と関係していますし、思い悩みくよくよすることは「脾」や「胃」と関連があります。悲しみは「肺」「大腸」、喜びは「心」「小腸」、そして恐れの感情は「腎」「膀胱」の経絡が司っていると考えられています。
「経絡」とは五臓六腑を貫くエネルギーラインであり、全身をつなぐ線路のようなもの。そして「ツボ」はその線路上にある重要な駅のようなものだと言えます。電車やバスを乗り継ぐことで日本全国どこへでも行けるように、経絡やツボを刺激することで全身を刺激し、バランスを取ることができます。
ツボや経絡に対する刺激は、単に肩こりや腰痛などの局所のトラブルを改善するだけではありません。身体全体の臓器の調整や、感情や精神を含めた「その人の全体の生命バランス」を調整してくれるのです。
自分軸を作る「腎」の経絡とツボ
こうした東洋医学特有の考え方を「ブレない自分軸を作る」方法に応用していくことができます。どの経絡やツボが「自分軸」に関わっているかは、その道の専門家に聞くのが一番! ということで、「東洋医学にしかできない身体の改善」をテーマに鍼灸治療を行なっている「康鍼治療院」の鈴木康玄先生にお話をお伺いしました。
身体の軸を作るのは「腎」の経絡による働きです。また、人の成長も「腎」から始まります。「腎」の経絡は足の裏から始まり、下腿部の内側、体幹部の前面などを通って鎖骨の下にまで走行しています。
「腎」は、活動や成長の出発点となり、身体や体力の維持をするのに必要なエネルギーである「精」を維持します。「精力」の「精」と考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。「腎」が司る「精」を育てることが自分の軸を作ることであり、それを育てていくことが主体性を持った人生を歩むことにつながっていきます。
ケアとして大事なのは「丹田」に意識をおいて、呼吸や動きを作ること。丹田は「臍下丹田(せいかたんでん)」と言われる、おヘソの少し下のエリアで、「気」を耕すための田んぼとなるところです。「気持ちの落ち着き」のためには、この丹田の感覚を育む必要があります。丹田の意識は、精神の落ち着きとともに、身体を使ったり動いたりするときの土台・軸としても機能するからです。身体の安定は心の安定。丹田が安定する事は身体の軸を作り、身体の軸が出来てくる事が精神の軸を作ることになるのです。そしてもう1つ「ブレない軸」を作るのに大事なのが、「腎」の経絡が始まる場所である「足裏」に意識をおくこと。腎の経絡は足裏から始まり丹田へと昇っていくため、腎経がしっかり機能することは丹田を安定させる事につながります。歩くときに足裏のことをしっかり意識する、足裏のマッサージなどがオススメです。足裏の感覚を大事にすることで、丹田と腎経絡がしっかりと結びつき、文字通り地に足がついてきます。
1. 身体の軸を作る丹田呼吸のワーク
鈴木康玄先生のお話にあった、丹田の感覚を育てる簡単なワークをご紹介しましょう。もしワークをしているとき、そのまま寝てしまっても構いません。寝ることは「腎」の働きを良くし、「精」を充実させる最も素晴らしい手段の1つです。
- まずは身体の力を抜いてリラックス。仰向けに寝る、イスや床に座る、いずれの状態でも大丈夫です。一番心地よくいられる体勢をとりましょう。
- 丹田(下腹部)に両手を重ねて置きます。手を置くことで丹田に意識が集まり「気」が充実していきます。
- 手のひらの温もりを感じ、丹田に意識をおいたまま深い呼吸をしていきます。まずは口をすぼめてスーッと息を吐いてゆきましょう。このとき下腹部が凹んで行くのを感じてみてください。
- 息を吐き切ったら、自然な流れで鼻から息を吸い込み、下腹部がふくらんでゆくのを感じます。良い香りを嗅ぐようなイメージをしたり、実際に好きな香りを香らせておくと、深く呼吸しやすいと思います。
- 3〜4の呼吸を力み過ぎないように、ゆったりと自然に繰り返します。
2. ブレずに大地とつながる、足裏のワーク

次にご紹介するのは、「ブレない自分軸」が作られる足裏ワークです。足は私たちを目的地へと運んでくれる大事な乗り物でもあります。軸作りと同時に足の疲れも取れて一石二鳥ですので、ぜひお試しください。
「湧泉(ゆうせん)」というツボの名前を聞いたことはありませんか? 足の裏上部に「人」という字のようなシワがあると思いますが、その中央の凹んでいる部分です。ここは文字通りエネルギーが湧き出る泉。1日の終わりに、あるいは始まりに、足裏に意識を向けましょう。以下のワークは入浴しながら湯船の中で行うことも可能です。
- あぐらの姿勢で座ります。
- 片手で同じ側の足を支え、もう一方の手の指を足指に組み入れます。普段靴の中で縮こまってしまっている足の指たち。じんわりと指と指の間が広がって行くのを感じましょう。
- 足と手の指を組み合わせたまま、足首を回します。焦らずじっくりと、関節部分が回る感覚を大事にして、周囲の筋肉や靭帯が心地よく引き伸ばされるのを感じながら行いましょう。右回し、左回し両方行います。
- 両手の四指が足の甲側に来るようにして足をもち、両手の拇指を「湧泉」に当てます。手の拇指を交互に湧泉に押し込むようにして、刺激します。もちろん湧泉以外の部分も足裏の気持ち良いと感じるところはどこでも揉んでいきましょう。これもゆったり、じんわりと心地よさを感じながら行います。
- 2〜4をもう一方の足でも同様に行います。
3. 精根尽きているときのお勧めケア
「ブレない自分軸」を作るために、「腎」や「丹田」を意識してみること、「精」や「気」を充実させることが大事であることはお分かりいただけたでしょうか? しかしながら、すでに精魂が尽き果て、気力がないようなときはなかなか自分でワークに取り組む力が湧かないもの。そんなときは、リラクゼーションサロンで「フット・マッサージ」や「リフレクソロジー」を受けるのがお勧めです。
その際に呼吸が止まるほどの痛みを感じてしまうと、逆に疲労してしまいます。ツボを的確に捉えながらも、適度な圧で心地良い眠りに誘ってくれる、オイルを使った足裏ケアをチョイスすると良いでしょう。渋谷駅からすぐのリラクゼーションサロン「CHILL SPACE」では、オイルによるフット・マッサージメニューがございます。ボディの疲れた場所の揉みほぐしもトッピングできますので、お気軽にお申し付けください。
東洋医学とセラピストの視点から見るブレない自分軸の作り方
今回お話をお伺いした鍼灸師の鈴木康玄先生と、この連載を担当するセラピストの小松ゆり子で「東洋医学とセラピストの視点から見るブレない自分軸の作り方」をテーマにしたトークイベントを2017年2月16日(月)に開催します。会場は原宿から日本文化を発信するON JAPAN CAFÉ。10時から12時がトーク・セッション、その後は「うまみ」や「発酵」にこだわったランチをご一緒にいただきながら、質問をお受けいたします。今日ご紹介したような東洋医学の知恵に基づいたブレない生き方、自分が100%体感・行動し、後悔ない人生を作りたい方はぜひお越しください!

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