こんにちは。家計再生コンサルタントの横山光昭です。

皆さんは、医療費控除をご存知ですか? そう、確定申告の時期が来ると「1年間の医療費の合計が10万円を超えたら利用できる」所得控除の1つです。でも、10万円は超えないだろうと、自分にはあまり関係ないと思ってきたのではないでしょうか。しかし、2017年はそんなあなたにも関係する新しい控除制度ができたのです!

その名前は"セルフメディケーション税制"。今回は、身近で使える人がたくさん増えそうな、まったく新しい所得控除の制度についてお伝えします。

横山光昭(よこやま・みつあき)/家計再生コンサルタント
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家計の借金・ローンを中心に、盲点を探りながら抜本的な解決、確実な再生を目指す庶民派ファイナンシャルプランナー。個別の相談・指導では独自の貯金プログラムを生かし、リバウンドのない再生と飛躍を実現。これまで1万人以上の赤字家計を再生している。独自の貯金法などを紹介した『年収200万円からの貯金生活宣言』『貯められる人は、超シンプル』など著書多数。各種メディアへの出演・執筆や講演などでも活動している。公式サイト

セルフメディケーション税制って何?

あなたは、ドラッグストアで売っている薬を飲むことがありますか? おそらく「ない」という人はあまりいないのではないでしょうか。

実は、今回の新しくできたセルフメディケーション税制は、"市販薬"が対象です。1年間で市販薬の購入に1万2000円以上を支払っていたら、超えた金額が課税所得から引かれ、税金が少し安くなります。月にならすと1000円以上。これ以上薬を購入している方は、利用できる可能性があります。医療費控除が10万円以上と聞くととても高いハードルに感じますが、1万2000円なら自分にも当てはまると思いませんか?

医療費控除は治療費や薬(処方箋のものや今回の対象またはそれ以外の市販薬も含む)、通院のタクシー代などを含むことができましたが、セルフメディケーション税制では市販薬しか対象ではないことが特徴です。

利用するには条件があるの?

このセルフメディケーション税制を利用するにはいくつかの条件があります。

まず、1つ目は、対象となる薬を購入しているかということ。すべての市販薬がこの制度の対象というわけではありません。少し難しいですが、対象となるのはスイッチOCT医薬品だけです。どのような薬かというと、ロキソニンやボルタレンなど今まで病院で処方されていたような薬で、痛み止めだけではなく、風邪薬や鼻炎薬、軟膏やシップといった薬品も含まれています。

ドラッグストアで見分けられないよ、という方も多いと思いますが、対象の薬には「セルフメディケーション税、控除対象」などと書かれたマークがついているのでチェックしてみましょう。なかには、レシートの対象商品部分にマークをつけてくれるところもあります。

現在対象になっている薬は1577品目(2017/1/17現在)です。詳しく知りたい方は、厚生労働省の公式サイトをご覧ください。

2つ目は、健康診断や各種健診、予防接種などを受けているということ。病院にかかるまでもない、軽い体調不良は市販薬で治してくださいね、という趣旨の制度ですが、もしこの制度のせいで病気の人が病院に行かなくなったりしては困ります。健康であり、病気の予防もしていますよというチェックが入るわけです。

この条件を満たす健康診断などは、以下の通りです。

  • 1. 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)
  • 2. 予防接種
  • 3. 定期健康診断(事業主健診)
  • 4. 健康診査
  • 5. がん検診
  • どれか1つでも行っていることが条件です。会社の定期検診などをきちんと受けていると、簡単にこの条件はクリアできそうですね。

    3つ目は"医療費控除"を利用していないこと。確定申告の際に、医療費控除とセルフメディケーション税制を一緒に申告することはできません。このセルフメディケーション税制で利用できる上限額は10万円まで。つまり税金の控除を受けられるのは1万2000円を超えた8万8000円以内です。これ以上の金額となり、適応条件を満たしていれば通常の医療費控除の対象となります。

    具体的にどのように減税されるのかは、日本一般用医薬品連合会の公式サイトでわかりやすく説明しているのでご確認ください。

    薬を購入した金額には、生計を共にしている家族の分も合算できます。家族が多ければ、あっという間に1万2000円を超えてしまいそうですね。このセルフメディケーション税制であれば、利用できる人がかなり増えそうです。

    どのように恩恵を受けるの?

    この制度で税金が安くなる恩恵を受けるには、薬を買ってレシートを取っておくだけではいけません。確定申告が必要です。2017年1月1日~12月31日までに購入した薬のレシートから対象商品の金額を合計して、1万2000円を超えたら、2018年2月15日~3月15日の間で確定申告です。税務署に出向くのもいいですが、今は自宅でインターネットによる確定申告もできるので、気軽に取り組めそうです。

    今のところ2021年までの5年間限定の措置となっています。極端に多額の税金が戻ってくるということはない制度ですが、少しでも税金が安くなればうれしいですね。1万2000円を越えるのは難しくないと思います。今年はまずドラッグストアのレシートを集めて、ぜひ試してみてください。

    (横山光昭)

    Photo by PIXTA..

    【家計の見直し連載】