Inc. : ジャーナリストとしてオープンオフィスで働く彼女は、同僚のインタビューや、おしゃべりなどの声、さらには「改修工事の金槌やドリルの音」にも悩まされています。
もしかしたらあなたも、Olga Khazan氏と似たような環境で仕事をしているでしょうか?
多くの人がやっているように、Khazan氏もヘッドフォンで自分のプレイリストを聴いていますが、これもまた皆と同様、自分の聴いている音楽は果たして生産性に最もよい影響をもたらすものなのか、疑問に思っています。
Khazan氏が、これに関する様々な研究について掘り下げた記事が、最近の『The Atlantic』に掲載されました。数々の研究報告を精査した結果、彼女がたどり着いた明確な結論とは、オフィスワーカーの生産性向上に最適な音楽など存在しない、ということです。
音楽が効果的なのは限られた仕事
音楽が生産性にもたらす効果を称賛する研究報告は数件ありましたが、それらの研究が、どのような職種を対象として行われたのかに目を向けることが重要です。
たいていの研究では、被験者は、工場の組み立てラインのような、単調な作業をしていました。そのような職種なら、音楽が作業の退屈さを紛らわせ、作業者の注意力を維持するので、生産性向上に役立つかもしれません。しかし、じっくり考えたり、認知力を駆使したり、複雑な問題を解決したりすることが必要な仕事の場合、音楽の生産性向上効果はまったく違ったものになります。
ワースト№1は好きなジャンルのアップビート曲
聴き慣れたアップビートの曲が1番いいのではないかと思いますよね。よく知っていて好きな曲なら、作業を楽しくしてくれ、生産性向上につながるのではないかと。しかしある研究によると、それは間違いだというのです。
その研究では、被験者を、各自の好みのジャンルのアップビートな曲を聴くグループ、好みのジャンルの落ち着く曲を聴くグループ、そして音楽なしで作業をするグループに分け、一連の複雑なタスクをさせました。
その結果、好きなジャンルのインパクトの強い曲を聴いた人たちのパフォーマンスは最悪で、最も良かったのは、何も聴かない人たちだったのです。
どうしても聴きたければ歌詞のない曲を
曲の好き嫌いに関係なく、音楽の、最も仕事の邪魔になる要素は、歌詞です。歌詞は、脳を言葉に集中させ、作業に注がれるべき注意を奪うのです。
歌詞のある音楽を聴きながら読書をするのが難しいのも同じ理由です。脳は、耳から入ってくる言葉と目から入ってくる言葉の両方に集中することはできません。
たとえばライティングなど、読み書きの能力を必要とする作業の場合、歌詞つきの曲を聴くのはかえって作業を難しくします。
音楽休憩をとる
Khazan氏は、それでも仕事中に音楽を聴き続ける人は多いのではないかと書いています。生産性のためには何も聴かないほうがよいとわかっても、どうしてもお気に入りの曲が聴きたい人はいるでしょう。それは、音楽には人を幸せにする効果があり、元気や勇気を与えてくれるからです。
そのいい例が私自身です。私は、何を隠そうこの1時間、クリスマスソングを聴いていました。音楽を聴きながら書いてはいけないと言いながら、自ら音楽を聴きながら書いていたなんて、皮肉なのはわかっています。
しかし、妥協策がないわけではありません。Khazan氏がある神経科学者に聞いたところ、生産性を最大化しつつ好きな音楽を聴きたいなら、2~3時間ごとに15分間の音楽休憩を取ればよいとの提案がありました。こうした休憩が生産性を上げることは、他の研究でも示されています。
また、何も聴かないようにしたいがオフィスが騒がしいという問題に悩む人は、混んでいるカフェに行きましょう。静かではありませんが、オフィスと比べれば気が散りません。
Neuroscience Says Listening to the Noise of Nothing Is Best for Productivity|Inc.
Betsy Mikel(訳:和田美樹)
Photo by Pixta.