敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ子育て術「HOW I PARENT」シリーズ。今回は自身で立ち上げた子育てブログ『Man vs Baby』で子育ての日々を公開するマット・コインさんの子育て術です。

ある晩、息子のチャーリー(生後3カ月)が眠る傍らで、マット・コイン(Matt Coyne)さんはFacebookを開き、初めて父親になった感想をタイプして投稿しました。

おむつを交換するときは基本的にフォーミュラー1のピットクルーになったみたいな感じがすること、ベビー服についているボタンのかけにくさと言ったら最悪の一言(いっそマジックテープにしてくれればいいのに)、最近読める唯一の文章は哺乳瓶のパンフレットぐらいであること(それすら全部読めず途中で眠りに落ちてしまいます)。この笑えるほど正直な投稿が拡散して、コインさんは『Man vs Baby』というブログを始めることになりました。このブログを本にした『Man vs. Baby: The Chaos and Comedy of Real-Life Parenting 』はイギリスでベストセラーになり、最近アメリカでも出版されました。

今ではライターが本業となったコインさんの子育て術をご紹介しましょう。

氏名:マット・コイン

居住地:イギリスのシェフィールド

現在の職業:作家

家族構成:パートナーのリンゼイ、息子のチャーリー(2歳)、ジャック・ラッセル・テリア犬のエディ

──朝のルーティンは?

ヨチヨチ歩きの子どもがいる家庭にルーティンなんてものは存在する? 朝、起きると、朝食に何を食べるか、何を着るか、なぜ恐竜は死んだのかといったことで、たちまち私と子どもは言い合いになります。2歳の息子チャーリーは、「自分で靴が履けるよ」「自分でコートのジッパーをしめられるよ」と言い張るので、玄関で1時間以上も時間を使ってしまいました。実際には自分ではできないのにね。おかげで、私はすっかり冷めてしまったお茶を飲み干して家を出ることになります。

──家事と育児をパートナーとどのように分担している?

私たちは、子どもが生まれたら私でなくリンゼイがフルタイムの仕事に戻るとかなり早い時期に決めました。私はライターなので働く時間はフレキシブルにできます。それに、リンゼイは、薬物中毒やホームレスを経験した人たちに教育を通して第2のチャンスを与えるという重要な仕事をしています。男性が家にいて女性がフルタイムで働くことはちょっと珍しいことだとわかっていますが、夫婦のどちらが仕事に戻るかは、性別で決めるべきではないと思います。1950年代じゃないんですから。

──パートナー以外に、誰からどの程度育児を手伝ってもらっている?

祖父母や妹からずいぶん助けてもらっています。新しく親になった人にアドバイスするとしたら、子どもが生まれたとき「おめでとう」と言ってくれた人たちには感謝すべきですが、喜んでベビーシッターを買って出てくれる人は特別だということです。

── 「これがないと生きられない」というガジェット・アプリ・チャート・ツールは?

文章を書くときはiPad Pro。起動時間が短く、どこででも書けるのでラップトップより好きです。iPhoneはチャーリーの写真を山ほど撮るために使っています。(とてもたくさん写真を撮るので、全部プリントアウトするとチャーリーの生活を描いたパラパラ漫画になってしまうほど)。あと、YouTubeアプリのようなものも多用しています。チャーリーを連れてレストランで食事をするときは、YouTubeでアニメを見せて大人しくさせています。また、以前ほど本を読めないので、携帯電話でオーディオブックをたくさん聞きますし、ポッドキャストにすっかり夢中になっています。すっかりアメリカ的な生活にはまっています。

──今のリラックス方法は?

今は、本のイベントやサイン会などをたくさんしています。それでリラックスできるのかと思われるかもしれませんが、本当に楽しいんです。夜に出かけていろいろな人たちと出会えると嬉しいので、かなり良いリラックス方法になっています。あとは、一般的なイギリス人なら誰でもしているように、私もパブに行ってリラックスしています。

──親として一番誇らしく思う瞬間はどんなとき?

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パートナーのリンゼイと息子のチャーリーと一緒に

それは父の日と同じ週の6月24日のこと。チャーリーが初めて「パパ」と言ったのです。正確には、それまでも意味不明の赤ちゃん言葉を話していましたが、とにかく「ママ」と言うより先に「パパ」と言ったことは、我が家では一大事です。

リンゼイは「ママ」を「パパ」より先に、私は「パパ」を「ママ」より先にチャーリーに言わせようとして何週間もチャーリーを洗脳すべく格闘していました。この勝負は私の勝ち! さらに、私は「ママ」を「ボブ」と数カ月間呼ばせることにも成功しました。スカッとした気持ちで勝利に酔いしれました。

──いちばん情けないと思う瞬間はどんなとき?

チャーリーが生後4カ月ぐらいのときのこと。ある晩、私はベッドで彼にパジャマを着させようと10分間格闘した挙句、私はリンゼイを呼んで助けを求めました。そしてリンゼイが子ども部屋にやって来ると「君が買った新しいパジャマは良くないので返品すべきだ」と文句を言いました。リンゼイはその寝巻をちらっと見ただけで私の主張が的外れであること、そして私が10分間も格闘してチャーリーに着せようとしていたのは枕カバーであることにも気づきました。「あなたってバカね」というのが彼女の意見でした。チャーリーは賛成の印に片方の眉毛をあげました。

──子どもにはあなたのどんなところを見習って欲しい?

私は、セクシズムや同性愛嫌悪のような問題について投稿することがあります。これをする理由の1つは、チャーリーが将来私が書いたものを読んで、寛容であることの大切さと自分と異なるというだけで相手を差別してはいけないことを学んで欲しいと思っているから。また、人生を深刻に受け止め過ぎないことも私から学んで欲しいと思っています。人生は嫌なことがいろいろ起こるにしても、息ができなくなるぐらい笑えることも多いのです。

──家族の儀式でおもしろいもの、変わったもの、特別なものはありますか?

すごくたくさん! 我が家にはソファーの下で暮らしているブライアンという名前のモンスターがいます。また、チャーリーのお行儀が悪くなると、ママが未来から来た巨大ロボットになってお行儀良くさせます。また、私たちは、モーターヘッドの 『スペードのエース』やザ・ホワイト・ストライプスの『ホテル・ヨーバ』などの曲で踊りますし、ちゃんとしたダンスのルーティンもあります。近所の人たちからはちょっと変じゃないかと思われていますが、どんな家族にも独自の奇妙なゲームや儀式はありますよね?

──子育てのベストなコツは何?

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「エンベロープネック」のことを私に教えてくれる人がいたら良かったのに。これは、頭の方でなく足の方に引っ張って脱がせることができる赤ちゃん用ロンパースの襟のデザインのことです。

赤ちゃんがロンパースの中を汚していても、汚いものが赤ちゃんの顔につかないように脱がせられるので、とても便利なのですが、誰もそういう理由でこういうデザインになっていることを教えてくれませんでした。

──今までもらった子育てに関するアドバイスで一番心に響いたものは?

チャーリーが生まれたとき、友人の1人が私たちに一筆書いて送ってきました。私たちの生活は永遠の変化を遂げようとしており、「ギアチェンジ」に備えるべきときだと書かれていました。初めて親になることは、ギアチェンジです。それも、金属が音を立ててこすれ合うような激しいギアチェンジです。最初は、あまりギアチェンジとは感じず、むしろ、乗っている車が崖から落ちて、何度か回転した後、炎上するような感じがします。途方に暮れますよ。でも、子育て経験がないことを心配する必要はないとその友人は書いていて。子育ては何よりすばらしいことだとも言っていましたが、本当にその通りでした。

──子育てで一番難しいことは何?

私はもともとかなり怠惰な人間ですが、親になるとそうも言っていられません。ですから、一番難しいのは何もしないでいることだと思います。無為に過ごすことはこれまで最も過小評価されていた時間の過ごし方。今となっては、懐かしい時間の過ごし方です。

── 1日のうちで一番好きな時間はいつ?

一日の終わりにビールやワインを1杯やるとき。「息子と過ごす時間」と答えることを期待されていると思いますが、その1杯にはそれなりの意味があります。毎晩夜8時にソーシャルメディアを見ていると、子育て中の人たちが次から次へとお酒の写真をアップして、酒屋のカタログみたいになります。そうなるのは、そのお酒がトロフィーだからです。朝7時から夜7時までの1日を、誰もケガをしたり死んだりせずに過ごせたことのご褒美なのです。

──子育て中の親御さんたちに伝えたい一言

ごちゃごちゃもめちゃくちゃも受け入れて、正気を保ちましょう。あ、そうそう。それから、家を掃除しているとき茶色のものをつまみ上げたら、口の中に放り込む前にそれが本当にレーズンかどうか、くれぐれも確かめてください。

Michelle Woo – Lifehacker US[原文