Inc.:誰と結婚するかであなたの幸福度が大きく変わるのは間違いありません。また、結婚相手はあなたのキャリアや稼ぎにも大きな影響を及ぼします。ところがその影響は、意外な方向で作用するようなのです。

だからこそ、(耳にタコかもしれませんが)夫婦関係を良好に保つことが何よりも重要です。

しかし、通勤時間が長いとそれが困難になります。とある研究によると、夫婦のうちどちらかが45分以上かけて通勤していると、離婚率が40%高まることがわかっています。

だからと言って、そのような夫婦が絶望的なわけではありません。すでに45分以上の通勤を5年以上続けている場合は、通勤時間が短い夫婦の離婚率と1%程度の差しか現れません。おそらくその理由は、数々の現実的・感情的な問題をすでに乗り越えてきたからでしょう。

それから、2人が付き合う前から長時間通勤をしている場合、付き合ってから長時間通勤を始めた場合よりも離婚率が低いこともわかりました。

では、長時間通勤で離婚率が高まるのはなぜでしょうか? 「HubSpot」の共同創設者であるDharmesh Shah氏によると、以下のような理由が考えられるそうです。

1. 特に子どもがいる場合、パートナーが家の近くで働かなければならなくなる

たとえば妻が長時間通勤をしているとします。すると、夫が働けるエリアが狭まるため、満足の行く職に就ける可能性も狭まります。その上、子育てや家事といった大きな役割も必然的に担わなければなりません。人によっては、それが大きな負担になることもあるでしょう。

もちろん、必ずしも負担になるとは限りません。我が家の場合、私の通勤がほんの階段2階分と近いため多くの家事を担っていますが、それに不満はありません。分担の仕方やそれに対する感情は、夫婦それぞれに異なるものですから。

2. 時間は関係を保つための糊である

長時間通勤は時間を奪います。パートナーとの時間も、子どもとの時間も。それを取り戻すことはできません。

3. 十分な給料アップになることはあまりない

たとえば1時間遠くの会社に勤めると給料が20%上がるとします。でも、経済学者が行ったある研究によると、満足度と達成感について言えば、1時間の通勤時間は40%の給料アップと同じ価値なのだそうです。

言い換えると、時給が2ドル上がったところで、それを稼ぐために1時間余計に通勤時間がかかるようでは幸せにはなれないのです。

4. 特に渋滞や遅れが頻繁な場合、長時間通勤はストレスがたまる。

1時間渋滞の中を運転した後では、笑顔で職場のドアをくぐることは難しいでしょう。

しかし、これも時と場合によります。私は昔、片道2時間の通勤をしていたことがありますが、いつも道は空いていましたし、たくさんのオーディオブックを聞くことができました。

通勤時間も重要ですが、通勤のストレス度も重要です。同じ1時間でも、平和な運転であれば1日の疲れをほぐすことができますが、渋滞の中で10マイルしか進めないようでは、ストレスがたまるだけでしょう。

5. だんだん罪悪感を感じるようになる

配偶者と子どもが寂しがると、時間とお金のトレードオフが、わがままで、ある意味、虫のいい話に感じられることがあります。やがて自己防衛に走ったり、いっそうわがままになったりし始めます。

それまでには考えられなかった決断をしたり、それまでには考えられなかった発言をしてしまうかもしれません。


そうは言っても、あなたの住所と職場を考えたら、通勤方法を選ぶことはできないかもしれません。その場合、できるだけの努力をして、家にいられるその他の時間を最大限に活用しましょう。

選択が可能なら、時間とお金(あるいは肩書や特権など新しいチャンスの魅力)のトレードオフについて真剣に考えてください。

私の妻は、最近まで片道2時間通勤をしていました。でも、クリエイティブにスケジュールを組むことで、1週間に数日しか働いていませんでした。また、3時間半離れた大学で教えてもいました。授業の1つはオンラインでしたが。そこで私たちは、近くの家に引っ越すことにしたのです。これですべてが楽になりました。

私たちの場合、トレードオフがうまく行きました。妻が車の中にいる時間も増えましたが、家にいる時間も増えました。私に通勤がないのもよかったのでしょう。彼女が家に帰ると、必ず私がいます。私は自分のスケジュールをクリエイティブに組むことで、掃除、洗濯、支払いなどの家事もこなすことができます。こうすることで、彼女が家にいる時間を最大限に活用できるのです。

それに私たちは、長時間通勤や別々の時間を過ごすことに慣れていました。出会ったとき、彼女はニューヨークで仕事を始めようというところでした。遠距離恋愛の末、私たちは結婚し、ニュージャージーとバージニアでの別居婚生活が始まりました。1年後、彼女はペンシルベニアで仕事を見つけましたが、別居は続きました。

ついに一緒に住み始めると、彼女はすぐに学校に戻りました。それは、片道1時間半通勤を意味しました。でもそれまでの経験から、私たちは長時間通勤や何日も離れていることへの対処法を知っていました。普通の状態ではありませんでしたが、うまくやることができました。すべての決断は2人で下し、彼女がやることを私がサポートし、私がやることを彼女がサポートしてくれます。ですから、相手に腹を立てたり怒ったりする感情はありません。

それでも、最近子どもたちが巣立ったので、妻の通勤時間が短くなるよう、1年間かけていろいろなことを整理しました。長時間労働への対処は可能だったものの、それが私たちの望みではなかったのです。おそらく、それが私たちにとって最大の教訓です。夫婦の状況は千差万別。あなたの夫婦関係にとっていいことが、私の夫婦関係にもいいとは限りません。

何よりも、2人の夫婦関係が良好であることが、あなたにとっても配偶者にとってもいいことです。それでも、長距離通勤や、長期間の出張が夫婦関係に与える影響を無視してはいけません。新しいチャンスに乗るべきかどうか迷っているなら、こう考えてみてはいかがでしょうか。チャンスを失って後悔するのはときどきだが、愛する人との時間を失うと必ず後悔する。

Want to Stay Married? Science Says Reconsider a Long Commute (Since the Money Isn't Worth It) | Inc.

Jeff Haden(訳:堀込泰三)

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