宇宙へ出かけていて、地球に帰ってきたら、何十年、何百年と経過していた――。

こうした宇宙空間での「時間のズレ」は、浦島太郎の昔話になぞらえて「ウラシマ効果」と呼ばれ、古くは『猿の惑星』、最近では『インターステラ―』など多くのSF作品に取り上げられてきました。時間が遅れる理由については「相対性理論」によって説明できるようですが、「正直よくわからない...」という人も多いでしょう。

「時間のズレ」と言えば、日ごろ私たちが使用する「時計」。従来の機械式時計やクオーツ時計に比べ、常に正確な時間を私たちに知らせてくれるGPS電波時計にも、相対性理論が関係しているのだとか。

日本人の宇宙飛行士も珍しくなくなり、人類の火星移住計画「マーズワン」が注目を集める今、そんな「相対性理論」について、そろそろ少しだけでも理解しておきたいところ。

そこで今回は、理論物理学の専門家である大関真之氏に、「相対性理論と宇宙空間での時間のズレ」について解説していただきました。

大関 真之(おおぜき・まさゆき) 161128citizen_theory_of_relativity10.jpg東北大学大学院情報科学研究科准教授。1982年東京生まれ。2008年、東京工業大学大学院理工学研究科博士課程早期修了。ローマ大学物理学科研究員、京都大学大学院情報学研究科助教を経て2016年10月から東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻准教授。「スパースモデリング」や、次世代コンピュータとして期待される量子コンピュータ、とりわけ「量子アニーリング」形式に関する研究活動を展開している。平成28年度文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。

特殊相対性理論は、光の速さ絶対理論。同じ1秒でも相対的に違う?

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まずは2つある相対性理論のうちの1つ「特殊相対性理論」から説明をはじめましょう。

相対性理論が生まれる前は、「宇宙の端から端まで一様に時間が流れている」というニュートンの"絶対時間"が常識とされていました。地球に住む我々は、時差はあるものの、アメリカや日本でも同じ速さで時を刻んでいるので、時間は不変で絶対だと感じるかもしれません。しかし、アインシュタインが「光の速さが常に一定で不変」であることを発見したことで、時間に対するパラダイムは大きく変わることになります。

特殊相対性理論は、「光の速さ絶対理論」と言い換えることができます。つまり、"絶対的"なものは光の速さだけだということ。であるならば、それまで不変であると思われていた「時間」のルールを変える必要があります。

そこで、アインシュタインは、今まで絶対的とされていた「時間」は、どこからなにを計測するかによって1秒の感じ方が変わる"相対的"なものであるとしたのです。それが、特殊相対性理論です。

では、特殊相対性理論を日常的なシーンで考えてみましょう。

あなたは路上で信号待ちをしています。そこに救急車が通り過ぎていきます。「ピーポーピーポー」というサイレンの音は、あなたから離れていくと「ピー...ポー...ピー...ポー...」と間延びしたように聞こえます。しかし、救急車に乗っている救助隊員は、常に「ピーポーピーポー」という音を耳にしています。

これはいわゆる「ドップラー効果」と呼ばれるものです。救急車の移動により、音の聞こえ方が変わるという現象です。光についても同様にこの「ドップラー効果」が生じることが証明されています。つまり「光の速さが絶対である」という、「特殊相対性理論」は、光の速度に近い速さで動くものは、時間が間延びして遅く流れる、ということを示しました。勘のいい人は既に気づいたのではないでしょうか? 救急車の「ピーポーピーポー」という音を、時計が刻む「チックタック」に置き換えると、「時間のズレ」について理解できるでしょう。

たとえば、地球上と、光の速度に近い速さで移動する人工衛星の上では、時間の進み方が異なります。地球の「チックタック」を基準に人工衛星の時計を眺めると、「チ...ッ...ク...タ...ッ...ク...」と遅く見えます。しかし、人工衛星内の「チックタック」を基準に地球の時計を眺めると、逆に時計の刻み方が速く見えるというわけです。つまり先ほど説明した通り、「時間は相対的なものである」ということが、おわかりいただけるのではないでしょうか。

重力が異なる地球と火星間で通話をする場合、地球からかけた方が得になる?

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もう1つの相対性理論である一般相対性理論では、「重いもの=重力が強いもののまわりでは、時間が遅く流れる」ということを示しました。光は基本的に真っ直ぐに進みますが、その線上に重力の強い空間があると、くぼみができます。光はそのくぼみに沿って曲がって進むので、その分、余計な時間がかかるのです。たとえば、環境条件で類似点が多いとされる火星と、地球での暮らしを比べてみましょう。

火星の重力は地球よりもわずかに軽いので、もし火星で暮らすことができれば、今よりもカラダが軽く感じられるでしょう。

では、時間の速さはどうなるでしょう? 一般相対性理論で考えると、"相対性"なのでどちらの惑星にいてもそれぞれの1秒の感じ方は同じですが、地球の1秒を基準にすると、重力が軽い火星の1秒は速く見えます。さらに言えば、地球の1日は24時間ですが、地球から見ると火星では24時間以上経過しているように見えるでしょう。

つまり、火星移住計画が実際に行われ、地球─火星間で電話をする場合は、地球時間のレートで通話した方が1秒当たりのコストは安くなるということですね。そもそも火星の人の声が早口に聞こえるはずなので、補正する必要がありますが。

地球の"時間のズレ"を補正する、相対性理論とGPSの関係

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2つの相対性理論を説明してきましたが、そこから派生して出てくるのがさまざまな推測です。たとえば、光の速さに近い速度のロケットに乗って移動を続ければ、未来へ行くことができるのか? 答えはYESです。それならタイムマシンをつくれるのか? それは非常に難しいでしょう。

未来に行くには「ウラシマ効果」を利用することで可能になります。光の速さに近い動きをすれば、他の人よりも未来に飛び出すことができます。実際に光の速さに近い動きで地球に降り注ぐ小さな粒では、そのような現象が確認されています。小さな粒の一瞬の生涯の間に、地球においてはより年月を経ているという、まさにウラシマ効果が実現しているのです。

では、我々が生活しているこの地球上でも、"時間のズレ"が起こっているのでしょうか?

答えはYESです。たとえば、ジェット機で移動している間は、地表に比べて時間が遅く進むことが、特殊相対性理論によって証明されています。エベレストの山頂や赤道直下では、地球の自転による遠心力で重力が軽くなり、一般相対性理論によって時間の進み方が早いということもわかっています。さらに地球の自転による効果を含めると、結果として時間の進み方がゆっくりとなることまで示すことができます。

もちろん、ごくごくわずかな時間のズレですが、そういったズレが存在する以上、人類共通のルールである時間を揃えておく必要があります。そこで利用されているのが、2つの相対性理論を基にしたGPS電波時計です。

地球の周回軌道上に打ち上げられた衛星から、現在地のほか、搭載された原子時計の時刻のデータを地上に送信します。しかし、衛星に搭載した非常に高精度な原子時計も、地球の周回軌道上で重力の軽い宇宙空間を超高速で移動しているため、どうしても地球上の我々の時計と刻み方にズレが出てきてしまいます。

そこで、相対性理論を考慮して自動的に時刻を補正する機能を搭載することで、世界中で共通した絶対的信頼の置ける正確な位置情報と時刻を把握することができるようにしたのが、GPS電波時計なのです。

世界共通の時間・時刻が生み出す信頼感

大関氏による解説で、相対性理論の概要について理解していただけたのではないでしょうか。ここで、あらためて「時間」について考えてみましょう。もし、自分の時計と相手の時計が示す時間が違っていたら、どうなるでしょうか。おそらく、「信頼とはなにか」という問題に行き着くでしょう。

時間は主観が入らず客観的に決められているからこそ、信頼できるのです。世界共通の時間だから、人と待ち合わせができ、飛行機で国内外を安全に移動でき、ある時は時間を忘れて夢中になることもできます。ニュートンの絶対時間はアインシュタインにより覆されましたが、地球上では今も時間を基準に世界がまわっています。その意味で、GPS衛星と相対性理論が私たちに信頼と安心を、世界に秩序を与えてくれていると言えるかもしれません。

スタイルで選べる、正確無比な時を刻むGPS衛星電波時計

高度2万km上空のGPS衛星から発信される時刻情報をキャッチ。シチズンのGPS衛星電波時計を腕にまとった瞬間から、世界中のどこにいても、あなたのライフスタイルに正確な時を刻みます。

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宇宙から届く電波で正確な時を刻むGPS衛星電波時計。宇宙と私たちが意外な関係で結ばれていたことを思うと、より身近な存在に感じてきます。今夜、夜空を見上げてみませんか。その向こうの宇宙を想像しながら。

*光発電GPS衛星電波時計として。

2016年9月現在、シチズン時計調べ。

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GPS衛星電波時計スペシャルサイト|シチズン株式会社

(香川博人)

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