私は採用担当者として、さまざまな職種の応募書類に目を通す日々を送っていましたが、応募者のなかに、募集中のすべての職種に応募している人がいるのを見つけたときのことは、かなりよく覚えています。そうした応募者は、あなたが思うよりずっとたくさんいます。少なくとも、私が採用担当者をはじめたときに予想していたよりはたくさんいました。後でわかってきたのですが、どうやら、どこかの誰かが、企業に注目されるためには、できるだけ多くの職種に応募するほうがいい、という話をまことしやか流布していたようなのです。

本記事は、The Museに投稿されたものです。

しかし、実際はそうではありません。でも、理解はできます。そうするのがベストだと思えてしまう状況があるのでしょう。今回は、ついすべての職種に応募したくなるケースはどんなときか、また、その場合に本当はどうすべきなのかを解説します。よく読んで、憧れの企業に入るチャンスを自ら潰してしまわないようにしてください。

憧れの企業が複数の職種で募集をはじめた

人気の企業はいつでも社員募集をしているように思われていますが、実際はそんなことはありません。ふだんは社員募集をしていない、あなたの憧れの企業が、自社の採用ページに複数の職種の求人情報を突如掲載したとしたら、「よし、雇用マネージャーに私の履歴書をできるだけ多く手にとってもらえるようにしよう」と興奮するのも無理からぬことです。しかし、採用をたまにしか行わない企業が、あなたが募集中のすべての職種に応募しているのを知ったら、あなたの第一印象は挽回不可能なほどに悪くなってしまいます。

【代わりにこうしよう】

もちろん、憧れの企業が自分のスキルにぴったり合う職種を募集していたら、迷わず応募してください。しかし、その企業が複数の職種を募集していて、そのどれも自分のスキルに合っていない場合は、少し自制心を発揮して、別の方法を試してください。たとえば、自分が企業に関心を持っていることを知ってもらうために、コーヒーミーティングをお願いしてみるのはどうでしょう。そうした準備をしたうえで、自分のスキルに合った職種の募集がかかったときに改めて応募すれば、ほかの候補者より有利な状況で臨めるはずです。

どちらの職種に応募すればいいか迷う

これはどちらかと言うとうれしい状況ですよね? とはいえ、その企業に採用担当者が何百人もいるのでないかぎり、あなたが提出した応募書類はすべて、同じ担当者の目に留まるところとなります。複数の職種に応募しただけで失格になるわけではありませんが、あなたがどんな動機で応募しているのか、いささか疑われることにはなるでしょう。

【代わりにこうしよう】

Museのライター、Sara McCordさんが、2つの職種で迷ったときに、どうやって1つを選べばいいかを教えてくれています。McCordさんは、まず第一に、自分が本当にしたい仕事を優先させること、ただし、その職種があまりに自分のスキルとかけ離れているときは考え直すようにとアドバイスしています。彼女が指摘するとおり、1つの職種に応募したからといって、別の職種へのドアが完全に閉ざされてしまうわけではありません。しっかりとスキルを身につけながら、憧れの職種に近づくことは十分に可能です。

本当にしたい仕事が何かがわからない

すべての職種に応募したくなる、おそらく一番困難な状況がこれです。私もそうだったときがありますので、よくわかります。あなたが今、かつての私のように、職探しに長い時間を費やしているなら、きっと頭が混乱気味になっていて、今日はいくつの求人に応募できただろうかと、指折り数えているときだけが、自分が生産的であるという気分を味わえている、なんていう状況に陥っていることでしょう。

【代わりにこうしよう】

見つけた職種に手当たり次第に応募しても、たいした成果は挙げられません。それが同じ企業の求人ならなおさらです。少し時間がかかる方法ではありますが、この問題の解決策はわりとシンプルです。周囲の人に助けを求めるのです。

関心のある業界で働いている人たちに連絡をとって、いろいろと話を聞いてみましょう。また、あなたが以前働いていた企業の上司や同僚に、あなたの優れている点や向いている職種は何だと思うかを尋ねてください。『Disrupt Yourself: Putting the Power of Disruptive Innovation to Work』の著者であるWhitney Johson氏が、自分の強みを見つけるには次の4つの質問を自分に問いかけるよいとアドバイスしています。

  1. 自分がここまでやってこれたのは、どのスキルのおかげか?
  2. 自分を強いと感じさせてくれるものは何か?
  3. 子どものとき、何が得意だったか?
  4. 自分が無視しがちな褒め言葉は何か?

こうした自問自答は楽しいものではないかもしれませんが、自分が本当は何をしたいのかを知るには、とても効果的です。

就職活動に行き詰まってくると、企業がいくつもの職種を応募しているのを見て、「この企業で働きたいんだから、いくつの職種に応募したっていいはずだ」と思いたくなるのはわかります。しかし、実際のところ、採用担当者は複数の職種に同時に応募してきた人を覚えているものです。それも、決していい印象としてではありません。憧れの企業にマイナスな印象を持たれてしまうリスクをおかす前に、いちど深呼吸をして、自分が本当にしたい仕事は何かを考えながら、自分に適した職種を1つだけ選んで応募するようにしましょう。

3 Times You Think Applying to Two Jobs at One Company Is the Right Move (and What to Do Instead) | The Muse

筆者のリチャード・モイ氏は、コミュニティサイト「Stack Overflow」のコンテンツ・マーケティング・ライターです。モイ氏はこれまでずっと、リクルーターや雇用マネージャなど、人材マネジメント畑を歩いてきました。The Museでキャリアアドバイスを連載しているほか、The Economistに試験対策や高等教育マーケティングに関するコンテンツを執筆しています。

Richard Moy(原文/訳:伊藤貴之)

Photo by Matthew Henry.