99u:締切が迫り、電話が鳴り続け、受信箱がメールで溢れている。そんなときは、休憩をとるという考えが頭に浮かばなくなってしまうもの。そして、とにかく少しでも多くの仕事を片付けるしかないのだど自分に言い聞かせるのです。もちろん、気持ちはわかります。でも、それはあまりに近視眼的な考えです。休憩を軽視すれば、いつの日か高い代償を払うことになります。

車にガソリンを補給したり、スマートフォンを充電する必要があるのと同じように、あなたの心身も適切なタイミングでエネルギーレベルを回復する機会を与えられねばなりません。仕事が忙しく大変になるほど、また、休憩をとるという考えが頭に浮かばなくなるほど、適切な休憩を定期的にとることが必要不可欠となります。そうしなければ早晩、燃え尽きてしまうでしょう。

とはいえ、どんな休憩でもいいかというと、そうではありません。近年、心理学者や経営学者が、勤務中に最も効果的にリラックスできる休憩方法を研究しはじめており、最新の研究結果から、勤務時間中にエネルギーレベルを維持し、最適化するための、いくつかのシンプルなルールがあることがわかってきました。今回は、こうした研究データから、休憩の効果を最大化する3つのステップをまとめてみました。

ステップ1:完全にスイッチを切る

疲れているときほど、休憩時間に何か有益なこと、たとえば、インターネットで買い物をしたり、最新ニュースをチェックしたり、業界紙をパラパラめくるなどをしたくなりますが、それでは本当に休んだことにはなりません。数々の研究により、勤務中にとる休憩を本当に効果的なものにするには、完全にスイッチをオフにしなければならないことがわかっています。休憩中に、たとえ仕事と無関係なことでも、意志力や集中力を使う作業をすれば、逆に疲労度を高めてしまいます。

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校とジョージ・メイソン大学の研究チームが今年発表した研究を見てみましょう。この研究では、約100人の韓国人オフィスワーカーに10日間日記をつけてもらい、昼食後にどれくらい仕事のプレッシャーを感じていたか、休憩時間中に何をしていたか、勤務終了時にどれくらいの疲労を感じていたかを報告してもらいました。

研究チームは、集めたデータをもとに、オフィスワーカーたちの休憩中の活動を、リラックス(ぼーっとしたりストレッチをする)、栄養摂取(コーヒーを飲むなど)、社交(同僚や友人とおしゃべりをする)、認知的活動(新聞を読んだりメールをチェックする)にそれぞれ分類しました。

結果は大方の予想通りでした。昼食後に仕事のプレッシャーを強く感じていたときは、勤務終了時の疲労度も高いことがわかりました。そして、とりわけ重要な発見は、適切な休憩が、昼食後に感じているプレッシャーと勤務終了時の疲労度の間のクッションになることがわかったことです。では、どのような休憩がクッションとして働いていたのでしょうか? それはリラックスと社交です。認知的活動はむしろ疲労を高めていました。おそらく、ウェブサイトの閲覧やメールのチェックといった作業は、仕事で使うのと同じ精神活動を要求するからだと思われます。

もう1つ、韓国の亜洲大学校と韓国行動科学研究所の研究チームにより今年発表された研究でも、昼休みにスマートフォンをいじっていたワーカーは、同僚とおしゃべりをしていたワーカーと比べて、気晴らしを楽しんだ度合いは同じでも、午後に感じる疲労度は高いことがわかりました。

心理学の世界では一般に、集中力や意志力を、自動車の燃料のようなものだと考えます。何らかの活動に集中力や意志力を使うと、その分、ほかの活動に使える集中力や意志力が少なくなるからです。近年、このアナロジーは物事をあまりに単純化し過ぎていると批判されていますが、勤務中の休憩に関する最近の研究結果を理解するには依然として有効です。勤務中、時間の経過とともに手持ちのエネルギー量が減っていきます。そして、本当にリラックスできる休憩をとったときのみ、エネルギーを補充できるのです。

ステップ2:短い休憩を早めに頻繁にとる

また、研究により、休憩をいつとるかも重要であることがわかりました。多くの人は午前中はエネルギーレベルが高いと感じており、短い休憩すらとらないことも珍しくありません。しかし、研究結果は、朝に休憩をとるほうがより効果的であることを示しています。タンクにまだ燃料が残っているときに補給するほうが、補給の効果が高くなるということです。

これが、企業で働くワーカー95人をベイラー大学が5日間調査した研究の主な発見の1つです。この研究では、ワーカーが休憩をとるたびに、休憩後にどんな気分になっているかを記録してもらいました。結果、午後よりも朝の休憩のほうが効果が高いことが示されました。朝の時間帯のほうが、休憩の後に精神的にも肉体的にも大きな改善が見られたのです。

また、頻繁に休憩をとれば、休憩時間は短くても効果があることもわかりました。数分程度でも十分なのです。反対に、休憩の回数が少ないと、1回の休憩に長い時間をかけなければ期待する効果が得られないことがわかりました。

とはいえ、複雑で創造的なプロジェクトに取り組んでいるときに、30分とか1時間の長い休憩をとろうとはなかなか思えないもの。また状況も許さないことが多いでしょう。しかし、十分な休憩をとらずにいれば、結果的にはパフォーマンスが低下してしまいます。覚えておくべきことは、休憩を早めにたくさんとることで、1日の後半にこうしたジレンマに直面するのを避けられるということです。早めに頻繁に休憩を取れば、疲労度の高まりも抑えられ、1日の後半に長い休憩をとる必要もなくなります。

ステップ3:オフィスから出る

巨大ビルで働いていると、気がつけば1日中屋内に居たということになりがちです。給湯室や社員食堂で休憩するのもいいですが、ビルの外に出て、職場から完全に離れるに越したことはありません。オフィスの中に居続ける問題点は、昼休みに同僚とおしゃべりを楽しんだとしても、仕事関係の話題が多くなることと、周囲から良い印象をもたれなければというプレッシャーが常につきまとうことです。

最近、トロント大学のジョン・P・トロガコス氏が率いる研究チームが、約100人の大学職員を対象に、昼休みにした活動により、休息効果にどんな違いが見られるかを調べました。その結果、昼休みに同僚と交流したり、仕事に関する活動をした職員は、そうでない職員に比べて、勤務時間後の疲労度が高まっていることがわかりました。特に、職場の絆を高めたいと上司が思いすぎて、部下に交流を無理強いしている場合にそれが顕著でした。

休憩時間にオフィスの外に出ることができ、周囲の環境に恵まれていれば、わずか5分歩き回るだけでも、自然からエネルギーを受け取ることができます。数々の研究が、自然が精神的なエネルギーを与えてくれることを示しています。また、最近の研究により、その自然が熱帯雨林である必要はないこともわかっています。都市にある公園で十分なのです。

まとめ

現代では、仕事で成功したいなら、常に忙しくしていなければならないという考えが支配的となっています。散歩に出かける時間を少しとるだけで、そうした焦りや駆り立てられるような気持ちは消えていき、正気に戻ることができます。心理学的な見地から見れば、人の精神や肉体のエネルギーは使った分だけ減ってしまうものであり、真の実力を発揮するためには、本当にリラックスできる休憩を、細かくたくさんとる必要があるのです。

結論:1日中、自分を容赦なく酷使し、1分1秒も無駄にするなとプレッシャーをかけ続ければ、日が暮れるころには疲れ切ってしまいます。こうした極端な戦略はロボットには有効かもしれませんが、人間ではうまくいきません。ドイツのコンスタンツ大学とポートランド州立大学が実施した心理学の研究によると、勤務終了時にあまりに疲れ切っていると、帰宅後にいくら休んでも回復できないそうです。言い換えれば、勤務中に適切な休憩をとっておけば、帰宅してからの休息も効果的なものとなり、翌日の生産性や創造性も高くなるということです。

A Science-Backed Guide to Taking Truly Restful Breaks|99u

Christian Jarrett(訳:伊藤貴之)

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