11月14日の満月は、通常よりも特に大きな「スーパームーン」 と言われています。1948年以降で月と地球が最も接近し、次にそのように接近するのは18年後です。そんな貴重な満月を写真に撮りたい人は、そのための準備をしましょう。今回は、写真に収めるだけの価値あるスーパームーンの撮り方をお教えします。
適切なカメラとレンズを選ぶ
月は大きく、明るく、美しく光っているように見えます。スマホで写真に撮って見てみると、小さなゴミみたいに写っていることがあります。今までスマホで月の写真を撮ったことがある人は、その時のガッカリな気持ちがわかるでしょう。撮る意味がありません。
月がゴミみたいに写る一番大きな理由は、単に月が遠くにあるからです。部屋の奥にいる猫を撮るのはスマホで十分ですが、384,400km先にある月を撮るにはかなり不十分です。確かに、月は猫よりもはるかに大きいですが、それでもカメラとの距離が遠すぎます。
そこまで遠くにあるものをスマホで撮っても、素晴らしい写真は撮れません。スマホのズームや焦点距離は、そのような離れたものを撮るためにデザインされていないからです。簡単に言うと、焦点距離とはレンズと焦点の間の距離のことです。最低でも300mmの焦点距離の望遠レンズで撮った月の写真は、きちんと写っています。
例えば、上の動画では500mmのレンズで撮っています。それに比べて、スマホの焦点距離は大体20mm程度です。スマホのオートフォーカスカメラは、ポケットに入れて持ち運べるように、コンパクトで便利につくられています。デジタル一眼レフやミラーレス、その他レンズを交換できるカメラなどと同じ機能を操作するようにつくられていません。
しかし、光学ズームができるスマホの取り外し可能なレンズもあります。予想通り、そこまで強力なレンズではありませんが、少しはマシな写真が撮れます。驚くほど素晴らしくはありませんが、他の撮り方よりはいいです。
iPhoneで撮った素晴らしい月の写真も見たことがある、とあなたは言うかもしれません。iPhoneで撮った写真も素晴らしいですが、iPhoneで天体の写真を撮りたい人は、天文学者のAndrew Symesのように、望遠鏡を使ってクローズアップの写真を撮るという方法を覚えておきましょう。これは、望遠鏡の接眼レンズで撮ったものも含め、無限焦点写真と呼ばれています。(どうなるかを見てみたい人は双眼鏡を使うといいです)
一眼レフカメラや、ミラーレスのようなレンズ交換式電子ファインダーで撮ると、さらにまともな月の写真が撮れます。この手のカメラはもっと良いレンズを搭載しています。月の写真を撮りたいなら、300mm以上のレンズを買うか、借りる必要があります。値段は数万円〜数十万円まであります。筆者が最近自分の一眼レフカメラに買ったのは安価なCanon EF 75-300mmです。特筆すべきものはありませんが、十分使えます。
一方、レンズなしでも素晴らしい写真が撮れる、かなり良い光学ズームを搭載しているカメラもあります。例えば、Nikon COOLPIX P900で、上のような魅力的な月の写真を撮ることができます。
カメラの露出の設定を調整する
基本的に、月の写真がつまらなく見えるのは、月があまりにも明るいからです。大きな明るいぼんやりとした電球の写真のように見えるので、月だとわかるように表面の特徴をはっきりと写したいと思うでしょう。
月のクレーターや影を少しでも写したいなら、カメラの露出の設定を調整しなければなりません。調整にはカメラの計測モードを使うことができます。この機能は大抵露出の設定のところにあります。設定を調整するために、特定の場所の明るさを計測し、分析するので、その場所に適した露光ができます。スポット計測を使って、さらに小さな場所を選ぶこともできます。夜空ではなく、特定の場所(この場合は、月)にフォーカスし、適切な露出に調整します。ただ、自分で露出を調整するのも簡単です。
カメラの露出は、3つの要素「絞り値」「シャッタースピード」「ISO感度」で決まります。これを"露出トライアングル"とも呼びます。この3つの設定にそれぞれどのような意味があるのか、月の写真を撮るにはどのように調整すればいいのかをお教えしましょう。
絞り値
絞り値は、レンズにどのくらいの量の光を入れるかということで、光の量は「Fストップ」で測ります。絞りを広く開くと、Fストップの値は小さくなります。(F1.0はかなり広いです)絞りを狭くすると、F11などFストップの数値は大きくなり、実際に月の写真を撮るのに理想的な絞り値はF11です。
月の写真の絞り値には「ルーニー11のルール」という名前もあります。この狭い絞り値では光はあまり入らないので、とても明るい月を撮るには理想的です。「Wired」では、少なくともF8〜F16の間にしておいた方がいいとあります。クレーターや影のような細かい部分も写すことができます。難点は、周囲の風景も写したい場合に、絞りがそこまで狭いと写すことができません。これに関しては、後で誤魔化す方法をお教えしましょう。
シャッタースピード
カメラのシャッタースピードは、カメラのセンサーをどのくらいの時間開けて光を入れるかということです。シャッターを速く開け閉めすると、あまり光は入りません。シャッタースピードを遅く(長く)すると、たくさんの光が入ります。シャッタースピードば秒単位のほんの短い時間で測ります。月を撮りたい場合は、大体1/125秒〜1/250秒です。月は十分明るいので、シャッターを長時間開けておく必要はありません。
ISO感度
ISOは、カメラのセンサーが入ってくる光にどのくらい反応するかを決めます。ISO感度が高いと、光にはより反応します。暗い場合は、ISO感度を上げることで、フラッシュなしでも明るい写真が撮れます。しかし、写真の粒子が粗くなるのが問題です。月を撮影する時は、月がとても明るいので、ISO感度は通常低め(100〜250)にします。
上記の数値はどれも「ルーニー11ルール」の範囲ですが、月の満ち欠けの状態に合わせて、具体的に数値をあげてみましょう。
- 満月
絞り値:F11、シャッタースピード:1/125秒、ISO:250
- 半月
絞り値:F11、シャッタースピード:1/60秒、ISO:250
- 三日月
絞り値:F2.8、シャッタースピード:1/15秒、ISO:250
もちろん、最高の1枚が撮れるまで設定を少しずつ変えてみた方がいいです。この数値はあくまで概算の範囲です。また、カメラはマニュアルでピントを合わせるようにして、できるだけクリアに写すようにしましょう。月にピントを合わせたら、シャッターを切ります。写真をブレずに静止した状態で撮たい時は三脚を使ってもいいです。
適切な環境を選ぶ
山ほどあるPhotoshopの補正技術がなければ、月の写真は実際に見た月と同じようにしかなりません。月が雲に隠れていたら、写真を撮ることができません。本当に魅力的な写真を撮りたいなら、月の写真が撮りやすいような光が少ないところまで、車で少し郊外まで行った方がいいかもしれません。
また、漆黒の夜になるまで待てば、本当に明るくてクリアな月を撮ることができるかもしれません。Wiredでは、地平線に近い方が月が大きく見えると言っているので、日没か日の出の1時間以内に撮りたいと思うかもしれません。
結局、きちんと月が美しく写っている写真を撮るというのは、撮影する環境は良くないということだと覚えておいてください。月はとても明るいので、その明るさのために露出を低くすると、撮影する周辺環境は月ほど明るくないので、身の回りは暗くなります。月も周辺環境も美しく写っている写真を見たことがあると思いますが、それは大抵、撮影した人が2枚の別々の写真を合成しているのです。
まずは、適切な露出設定で月の写真を撮ります。それから、周辺の環境に露出を合わせて写真を撮ります。2枚目の写真では、月はきれいに写っていないと思いますが、2枚の写真をPhotoshopで合成することはできます。(そのやり方はこちらを参考に)そこまではできないという場合は、上の写真のように、周辺の要素を最小限入れながら撮るように構図を工夫してみましょう。例えば、上の写真では前景の木のシルエットを入れています。
適切なカメラとレンズを使えば、プロの写真家でなくても、美しい月の写真を撮ることはできます。十分なカメラやレンズを持っていなければ、特定の情景を撮りたい時だけ借りるという選択肢もあります。
Kristin Wong(原文/訳:的野裕子)
Photo credit: Kevin Winter/Getty; Pixabay, John Sullivan