腕や脚がかゆいけれど、ケガや皮膚疾患があって、かくことができない人。これから紹介する方法を試す価値があるのは、そういう人です(そうでない人は、遠慮なくかゆいところをかきましょう)。
小規模ながらも斬新なある研究によれば、腕や脚がかゆくてもかくことができないとき、かゆみを和らげる面白い方法があります。鏡の前に立ちながら、かゆい側と反対の腕や脚をかくと良いというのです。たとえば、左腕がかゆいとしたら、鏡に自分の姿を映し、右腕をかきます。ばかばかしいと思われるかもしれませんが、「PLOS One」で発表された論文(一番下のリンクに全文が掲載されています)によれば、本当にかゆみを和らげることができるようです。
この研究では、被験者の腕にかゆみを誘発するヒスタミンを注射しました。そして、鏡の前に立ちながら、注射を打たれた側と反対の腕をかくよう指示しました。結果は以下の通りです。
2度の実験を行いましたが、いずれも、鏡に自分の姿を映した場合のみ、かゆくない側の腕をかくことで、かゆみの度合いが大幅に軽減しました。かゆくない側の腕が視覚的に、かゆい側の腕として認識されたということです。
つまり、たとえかゆい側の腕をかいていないとわかっていても、かゆい側の腕をかいていると錯覚している限り、かゆみを和らげることができるのです。
ただし、錯覚していることが重要です。自分がかゆい側の腕をかいているという錯覚がない場合、かゆみを和らげる効果はありませんでした。論文には次のように書かれています。
この研究では、鏡に自分の姿を映しながら、かゆくない側の腕をかくことで、誘発された局所的なかゆみを軽減できるという「ミラー・スクラッチング」仮説を検証しました。結果は仮説を裏付けるもので、被験者が自分はかゆい側の腕をかいていると視覚的に認識している場合のみ、かゆみの度合いが大幅に軽減しました。鏡による錯覚がない場合、かゆくない側の腕をかいても、かゆみは軽減しませんでした。
断わっておきますが、この研究は被験者がかなり少なく(最初の実験は19~38歳の男性26人が参加。実験変数を考慮した結果、最終的に20人まで減らされました)、かゆみは人工的に誘発されたものです。さっそく試してみたいと思った人もいるかもしれませんが、必ずしも効果は保証できません。
しかし幸い、たとえ自分をだませなかった場合でも、失うものはありません。ただかゆみが続くだけです。うまく自分をだませれば、かゆみも和らぐかもしれませんよ。
Itch Relief by Mirror Scratching. A Psychophysical Study | PLOS One via Discover Magazine
Alan Henry(原文/訳:米井香織/ガリレオ)
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