Inc.:コス・マルテ氏から電話やメールの返事がなかったとしても、気にしないでください。おそらく、彼はいま刑務所の中にいるのです。250万ドルの麻薬取引に関わった罪で、6年間刑務所に入っていた今年30歳になるマルテ氏にとって、この鉄の檻は肥沃な大地に見えるようです。マルテ氏は2013年に刑期を終えると、地元の公園で、「ConBody」の元となる会社を創業しました。マルテ氏自身が独房で開発した、猛烈にキツいワークアウトを指導する会社です(副業でホテルのトイレ掃除もやっていた)。現在では、ニューヨーク市のトレンディな地域、ロワーイーストサイドに、毎月1000人ものクライアントが訪れるスタジオを構えています。マルテ氏は今でも多くの時間を刑務所で過ごしています。マルテ氏とトレーナーたちは、週に1度、ライカーズ島にある刑務所で、判決を待つ収監者たちに50種類以上のワークアウトを教えています。最近では、カリフォルニア・シティ・コレクショナル・ファシリティ(カリフォリニアにある刑務所)で、長期受刑者が社会に戻るのを手助けする仕事をはじめました。ゆくゆくは、ほかの刑務所にも広げていく考えです。
マルテ氏が目指しているのは、受刑者たちが刑務所にいる間にパーソナルトレイナーの資格をとって、出所したらすぐに仕事を始められるようにすること、そして、できるだけ多くの元受刑者を自身のスタジオで雇うことです。「出所しても何の希望も感じられず、結局、元の環境に戻るしかない」と、13歳から23歳の間に10度も逮捕され、入獄と出所を繰り返したマルテ氏は話します。米国司法統計局が2014年に行った調査によると、2005年に出所した受刑者の68%が、3年以内に新たな罪をおかして逮捕され、さらにその77%が5年以内にまた逮捕されていることがわかりました。
スタジオで働いている11人の従業員のうち8人が元受刑者だと、マルテ氏は話します。トレーナーの時給は50ドルだそうです。元受刑者ということに危惧を抱くクライアントを安心させるために、「決してクライアントを怒鳴ったりせず、みんなが笑顔でワークアウトに取り組める環境をつくる」ことを徹底させているのだとか。今年の売上は30万ドルが見込まれており、マルテ氏は、来年までに、ConBodyスタジオをカリフォルニアを含めて、5店舗にまで増やし、元受刑者をあと60人雇いたいと考えています。この目標を達成するために、マルテ氏は、Kickstarterのキャンペーンと、Inc. + Toms Pitch for Good contest.を含むピッチコンテストで、17万5千ドル以上のお金を集めました。
マルテ氏は、罪名、受刑期間を問わず、今後もたくさんの元受刑者を雇うつもりです(ただし性犯罪者は除く)。「世の中が元受刑者を見る目を変えたいんだ」とマルテ氏。「彼らは檻に入れられた動物じゃないんだ。そこらの道を歩いている人たちより危険なんてことはない」 体型に自信がない人はどうすればいいでしょうか? ご心配なく。「体がなまっている人には受付の仕事もある」そうです。
Why This Entrepreneur Finds All His Best Workers in Jail|Inc.
Alix Stuart(訳:伊藤貴之)
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