Inc.:全盛期のビル・クリントンやマーガレット・サッチャーといった政界のリーダーから、ハーブ・ケレハー(サウスウエスト航空創業者)やジャック・ドーシー(Twitter創業者)といったビジネスのリーダーに至るまで、睡眠を削って奮闘する人たちのストーリーはあちこちで耳にします。では、リーダーたるもの、彼らに倣ったほうがいいのでしょうか? 果たして、耐えぬくリーダーの武勇伝は、フォロワーにインスピレーションを与えるのでしょうか?

新しい研究結果によると、その答えはおそらく「No」です。睡眠不足はあなた自身の気分を悪化させるだけなく、リーダーとしての影響力も奪うようなのです。

睡眠不足がカリスマを殺す

ワシントン大学で経営学を教えるChristpher Barnes教授らの研究チームは、説得力や魅力などの主要なリーダーシップスキルに対する睡眠不足の影響を調べました。ビジネススクールの学生88人を対象に、聴き手を鼓舞するような卒業式スピーチを作らせます。その後、学生を半分に分け、一方は眠れぬ夜(1時間に1回サーベイに回答しなければならない)の次の日に、他方は十分な休息を取った次の日にスピーチをさせました。

それらのスピーチを専門家(および学生自身)に評価してもらったところ、睡眠不足は明らかにカリスマ・キラーであることがわかったのです。

ブログ「British Psychological Society Research Digest」には、その結果がこう記されています。

評価者たちは、学生の身元や睡眠不足か否かを知りません。それでも、疲れた演者は一貫してカリスマ性が低いという評価を受けました。

では、疲れているとなぜ魅力や影響力が落ちてしまうのでしょうか。おそらく、睡眠不足によって感情表現のコントロールが難しくなり、うまく他者とつながれなくなるからでしょう。考えてみれば当然の結果ですが、長時間労働が美化される世界では、声を大にして伝える価値があることです。

Barnes教授は、研究結果についてこのように書いています

これは重要な結果です。なぜなら、多くのリーダーが、だいたいいつも睡眠不足だから。自分だけならまだしも、リーダーの多くは、部下たちにも睡眠不足の状態を作り出します。たとえば、深夜にスマートフォンをチェックするように命令したりするのです。つまり彼らは、自らが持つ統率力をみすみす放棄しているようなもの。部下にインスピレーションを与えたければ、自分も部下も十分な睡眠を取れるように努力しなければならないのです。

例外は極めてまれ

自分だけにはそのルールが当てはまらないと主張する人もいるでしょう。「私に限っては、1日3時間睡眠でも大丈夫なんです」という人が。あなたが本当にそう思っていたとしても、科学はそれを冗談ととらえるでしょう。なぜなら、推奨される睡眠レベルより低いほうがうまく機能するという人は、ごくわずか(1~3%)であることがわかっているからです。つまり、あなたはそれに当てはまらない可能性のほうがずっと高いのです。

Sleep Deprivation Makes You a Worse Leader, Study Confirms | Inc.

Jessica Stillman(訳:堀込泰三)

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