火曜日の朝。いつもの通り、スマートフォンのアラームを止め、その流れでメールをチェック。すると最初の何行かを読んだところで、ある疑いが持ち上がります。「あれ? 課長、怒ってる?」
続きを読んでいくと、疑いは確信に変わります。上司があなたに対してカンカンに腹を立てているようです...。さて、どうする?
安心してください。これから紹介するシンプルな4つのステップを踏めば、怒り狂っている上司や同僚にうまく対処することができます。
ステップ1:相手の気持ちを理解しようとする
なによりもまず、相手の気持ちを理解する必要があります。よくある間違いは、すぐに防衛姿勢をとること。例えば、自分は悪くないなどの言い訳をすることです。身に覚えがあるのでは?
言い訳をするかわりに少し冷静になって、相手がどんな感情を抱いているのかを想像してください。自分の責任ではないと突っぱねるのは、相手の感情を否定することでもあります。こういう時はまず、あなたが状況を理解しようと努力していること、相手の感情を気遣っていることを表現してください。
相手の立場に立って想像してみてください。たとえば同僚は、上司の前であなたに裏切られたと感じているのかもしれません。怒る相手を目の前にしたら、こう自問してください。この人の頭の中でいったい何が起きているのか。同僚は人事考課で悪い評価を聞かされたばかりで、不安でいっぱいになっているのかもしれません。あるいは、こんなに努力しているのにまったく評価されていないと憤っているのかもしれません。こうして相手の立場に思いを馳せながら、相手の気持ちを理解しようとしていることを態度で示すようにします。
次に、その想像をもとにして、受け入れてもらいやすいメッセージをつくります。このとき自分の言い分を主張するのではなく、相手の気持ちへの理解を示すことが大切です。同じ状況でも、以下の2種類のアプローチがいかに違って聞こえるかを比べてみてください。
よくあるアプローチ:「あなたが怒っているのはわかっています。でも、(ここに言い訳が入る)...」 望ましいアプローチ:「本当に怒っているんですね。どうしてなのかわかる気がします...」 よくあるアプローチ:「それは私のせいではありません」 望ましいアプローチ:「すごく怒っているんですね。おそらく、(想像したことをここに挿入)と感じているんじゃないですか?」ステップ2:理由を説明する
相手の気持ちを想像することはできました。次は一歩進めて、なぜそうした状況が起きたのかを考えてみます。
あなたが言い訳をしていると思われないようにするには、まず共感を示すこと。それから、どうしてこうなったのかという事情を説明して、相手が状況を一段高い視点から見られるようにしてあげることです。基本的に、すべてを正直に話すほうがうまくいきます。腹を割ることで信頼感が生まれ、親しみの感情が増すからです。私自身、職場で揉めごとがあったときはいつもそうしています。
どの程度正直に話すかはあなた次第ですが、このアプローチのポイントは、「なぜこうなったのか?」という質問に、できるかぎり誠実に回答することです。理由をきちんと説明すれば、相手も受け入れやすくなります。
ハーバード大学の心理学者エレン・ランガー氏の有名な実験に、「コピー機を使う順番を譲ってもらう」というものがあります。この実験では、先に使わせてもらう理由を説明するのとしないのとで、どれぐらい結果が変わるのかを調べました。
結果はこうです。順番を譲ってもらいたい相手に、「すみません、5ページだけコピーしたいんです。先にコピー機を使わせてくれませんか?」と説明した場合は、60%の人が先に使うことを許してくれました。ところが、「すみません、5ページだけコピーしたいんです。"急いでいるので"先にコピー機を使わせてくれませんか?」と、理由をつけて説明すると、譲ってくれる確率が94%に跳ね上がったのです。つまり、何かを頼むときに理由を説明すれば、協力してくれる可能性が格段に高まるということです。
次の2つを比べてみてください。「会議前に変更依頼のメールが送られてきているのをチェックしていませんでした」と、「"プレゼンの練習をしていたので"、会議前に変更依頼のメールが送られてきているのをチェックしていませんでした」とでは、受ける印象がかなり違います。どちらにせよ納得してくれない人もいるでしょうが、なぜそうなったのかという理由を説明することで、あなたが相手からのメールをただ無視したわけではないことはわかってもらえます。
ステップ3:言葉に責任を持つ
たとえば、先ほどのセリフをこう切り出したらどうなるでしょうか? 「ごめんなさい、メールを見ていませんでした...」
状況によっては謝るほうがいい場合もありますが、そうでない場合もあります。あなたが明らかに間違っているなら(遅刻したうえに相手の意見を頭ごなしに否定した、あるいは、やるべきことを忘れていた)、過失を認めて謝りましょう。
そうではなく、あなたに落ち度がないか、どちらとも言えないようなとき(オフィスビルのネット回線に障害があり、ビデオ電話を受信できなかった、など)は、よく考えて発言してください。自分に落ち度があると本気で思えないなら、簡単に謝ってはいけません。
たとえばステップ2の事例でいうと、発表予定のプレゼン資料に関して、相手から変更を加えて欲しいというメールが送られてきていましたが、あなたはプレゼンの練習に集中するためにメールをチェックしていなかっとします。この場合、必ずしもあなたに落ち度があったとは言い切れません。プレゼン前に練習をしたかったので、あえてメールを見なかったということですから。とはいえ、とにかく同僚は自分が送った変更依頼がプレゼンに反映されなかったことに腹を立てています。そんなときは、次のように言うことができます。
送ってくれた変更依頼がプレゼンに反映されていなかったので怒っているんだと思います。たしかに反映されていません。でも、プレゼンの1時間前から練習に集中していて、メールをチェックしていなかったんです。送ってくれたアイデアはすばらしいものでした。次回からは、プレゼンの前に15分ほどミーティングをして、お互いの意思を統一しましょう。
ステップ4:次のステップを示す
事態を収拾する一番いいやり方は、問題を解決する「次のステップ」を示すことです。怒っているのが顧客だとしたら、同じ問題が起きないように企業としてどんな対策をとるつもりかを説明したり、引き続き話し合いの場を設けることを提案します。
こうした対応をとれば、その場を完結させることができます。人は完結を求めるものです。社会心理学者のアリー・クルグランスキー氏は、この欲求を「認知的完結欲求」、すなわち、確固たる答えを求め、あいまいさを嫌う欲求と定義しています。研究によると、締め切りに追われていたりストレスがかかる環境(たとえば職場)にいると、「認知的完結」の欲求が高まること、特に仕事に関することでは問題の完結がとりわけ重要となることがわかっています。
具体的に「次のステップ」を示せないときは? 相手が公の場で主張を述べたり、不満を訴えられるようにすることで事態が改善する場合もあります。自分の言い分にきちんと耳が傾けられたと感じられるようにするのです。1つの方法は、問題を上司に上げるよう提案することです。怒っているのがあなたの上司である場合は、具体的にどこに不満があるのかをしっかりと確認し、必要な対策をとることを明確に伝えます。
怒っている人に対応するのは本当に大変なことです。上記の4ステップに従えば、相手の気持ちを理解し、自分の言葉に責任を持ち、起きた問題をさらに絆を深める機会に変えることもできます。誰にだって間違いはあるもの。
人から信頼される人間になれるかどうかは、間違いが起きたときにそれにどう対応するかで決まります。致命的な事態にでもならないかぎり、あなたがどんな間違いを犯したかよりも、どういう対応をとったかのほうが相手の記憶に残るものです。
Your 4-Step Plan to Winning Over an Angry Person | The Muse
Katrina Razavi(原文/訳:伊藤貴之)
Image by July Pluto (Shutterstock).