最後に本当の静けさを感じたのは、いつですか?
静かな、広々とした自然の中で生活している人にとっては簡単な質問かもしれませんが、都会で生活している人にとっては、答えるのが難しい質問のはずです。車のクラクション、建設現場の音、人の話し声...こうした音が全くない環境に身を置くのは、とても難しいことです。
では、私たちは騒々しい環境から離れる努力を、もっとすべきなのでしょうか?
ウェブサイトNautilusに掲載されたDaniel A. Grossさんの記事では、その答えを、最新の研究を紐解きながら解説しています。研究結果によると、「静けさ」は脳にとても良い状況なのだそうです。
音の中にいる時の脳
騒々しい環境にいることは、もちろん健康に良くありません。Grossさんの記事には下記のように書かれています。
20世紀の半ばに、研究者が高血圧と騒音の相関関係を発見しました。その後の研究で、騒音の多い状況にいる人は睡眠不足、心臓疾患、耳鳴りになりやすいことがわかりました。
影響は身体以外にも及びます。隣の家の犬の鳴き声は、あなたをイラつかせる原因になります。
神経生理学の研究では、騒音は頭葉にある、感情や記憶をつかさどる扁桃を刺激します。扁桃が刺激されると、コルチゾールのようなストレスホルモンがすぐに発散されます。そのため、うるさい環境にいる人は、慢性的なストレスホルモンを感じる状況に置かれます。
こうしたストレスの上昇が、健康を損ねます。Grossさんによると、WHOは、数字を使い「西ヨーロッパに住む3億4000万人(アメリカ合衆国の人口とほぼ同じ数)が、毎年、騒音のために数百万年分の健康な生活を失っている」と発表しているそうです。
静かな環境にある脳
こうした研究成果に対し、人々は「騒音が少ないほうが、ストレスが少ない」ということには驚きませんでしたが「静かな状況は、人間の心と身体に良い影響がある」という事実には、驚きました。
例えば、デューク大学の生物学者が「マウスの赤ちゃんの泣き声を聞いたほうが、大人のマウスの脳の細胞が成長する」という仮説をたてて実験したところ、実際は、静かな状況が最も脳の成長を促す、という驚きの結果が出ました。Grossさんによると「1日2時間静かな時間を持つと、感覚を含む記憶の創造を行う海馬の細胞作りが促される」とのことです。ネタ元の記事には、他にも、定期的に静かな時間を持つことの脳への効果が書かれているので、興味のある方は全文(英語)をお読みください。最後には、こんなまとめが書いてあります。
騒音から自由になると、体の外も中も静かな状態になり、動くべきところが集中して動き、世界とつながりなおし、自分にぴったりの場所を見つけることができます。静けさは体を落ち着かせ、心の声の音量を上げ、世界と私たちを調和させてくれるのです。
さあ、もう一度自分自身に問いかけてみましょう。最後に本当の静けさを感じたのは、いつですか?
The Incredible Brain Benefits of Silence|Inc.
Jessica Stillman(原文/訳:曽我美穂)
Photo by Shutterstock