Inc.:ご存知の通り、音楽には人の感情やムードを魔法のように変える力があります。失恋の痛手を癒し、エクササイズをする時はやる気を奮い立たせ、飲みに行く時は気分を盛り上げ、集中力が求められる時は気持ちを切り替えてくれるのが音楽です。

そして音楽は、その驚異的なパワーを個人に対してだけ発揮するわけではありません。集団に対しても驚くべき効果を及ぼすのです。

痛みを和らげる

「音楽を聴いてみんなで一緒に歌うことは、脳の神経伝達物質にダイレクトに影響を与えることが、複数の研究から明らかになっています。そうした物質の多くは、親近感や結びつきを生み出す一因となっているものです」。カリフォルニア州立大学バークレー校の科学研究センター「Greater Good Science Center」は、先ごろ発表した音楽と団結に関する研究総括の中でそう述べています。

しかも、音楽をともに楽しむ集団に生まれるのは、親近感や団結力だけではありません。ほかの人と一緒に歌ったり踊ったりすると、痛みに強くなることもわかっています(ハイヒールを履いてクラブに繰り出しても平気な女性が多い理由がこれで理解できますね)。同様の効果は合唱にも見られます。

団結できる

こうした効果はエンドルフィンやドーパミンといった物質によるものですが、同センターはさらに突っ込んで説明しています。それによると、音楽を聴くことで脳に生じる変化は、痛みを和らげるだけではなく、他人に対する親近感も増してくれるそうです。

「研究者のChris Loerch氏とNathan Arbuckle氏は、音楽を聴くことで得られる効果、すなわち音楽への反応度が、グループ・プロセスにどのくらい関与しているかについて、一連の独創的な研究を実施しました。グループ・プロセスとは、グループに対する帰属意識や、グループ内におけるプラスの人間関係、外部の人間に対する偏見、さまざまな集団からの脅威に対するグループの反応などを言います」

「研究者たちは、『音楽への反応度は、基本的な社会的な動機付けと(中略)因果関係がある』こと、さらに『音楽への反応度は、良好な状態にある集団の特徴と結びついている』ことを発見しました。言い替えれば、音楽はグループの一員だという気持ちを育んでくれるのです」と結論付けています。

こうした効果の科学的な面をもっと詳しく知りたい人は、同センターの記事がいくつかの研究について深く掘り下げているので、ぜひ読んでみてください。結論としては、「グループでともに音楽を聴くと、調和した行動がとれ、親近感が生まれ、寛大になり、より効率的に仕事が片づくようになる」ようです。どれもこれも、ぜひ自分のチームにもっとほしいものですよね。

会議で出席者が合唱を行うことに関しては、前向きな意見が述べられているとはいえ、同センターがまとめた研究総括は、仕事場という環境に限って論じられたものではありません。けれども、たとえば職場のメンバー全員が1つのプレイリストを聴こうという気になってくれたら、一緒に耳を傾けてみましょう。もし良かったら、声を合わせて高らかに歌ってみてください。そうすれば、きっと団結力は増し、生産性も向上するのではないでしょうか。おまけに、毎日の仕事がほんの少し、楽しく感じられるようになるかもしれません。

What Listening to Music at Work Does to Your Brain (and Your Team)|Inc.

Jessica Stillman(原文/訳:遠藤康子/ガリレオ)

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