以前と比べると、「iOS」のアップデートにもあまり新味がなくなってきました。そのため、細かい部分の改善が最高の評価ポイントだった、というケースもしばしばです。こうした、基調講演では触れられなかった細かい機能が、実は「iPhone」や「iPad」をぐっと使いやすくしてくれるわけです。最近でも、2016年6月13日から17日にかけて開催されたWWDC 2016でアップルが実際に発表した内容よりも使えそうな機能が、「iOS 10」のベータ版から見つかっています。
その前に1つおことわりしておきますが、今のところiOS 10はまだベータ版なので、ここで紹介する便利そうな機能が最終バージョンに入らない可能性もあります。製品版のリリースはこの秋の予定です。一方、開発者向けのベータ版はすでに公開されており、パブリックベータ版も7月中に登場することになっています。
1. Apple純正アプリがようやく「削除」可能に

iOS 2の時代に「App Store」が導入されて以来、ユーザーから絶えず要望が上がっていたのが、アップル純正アプリの削除機能です。ここにきてようやく、(見た目では)削除できるようになりました。アプリのアイコンを長押しすると、ホーム画面から「ほぼ」すべての純正アプリを削除できます。削除可能なアプリには以下のようなものがあります。
- 計算機
- カレンダー
- コンパス
- 連絡先
- FaceTime
- 友達を探す
- Home(編注:iOS 10から新たに登場)
- iBooks
- iCloud Drive
- iTunes Store
- メール
- マップ
- ミュージック
- News(編注:日本版未対応)
- メモ
- Podcast
- リマインダー
- 株価
- ヒント
- ビデオ
- ボイスメモ
- Watch
- 天気
とはいえ、iOS 10になっても純正アプリそのものが削除されるわけではありません。削除されるのはそのアプリへの関連づけとユーザーデータ、それからホーム画面上のアイコンだけです。というわけで、仮に「マップ」アプリを削除した場合、「メッセージ」で送られてきた住所をタップしても、地図は表示されません。今のところ、「Google Maps」などの別のアプリをデフォルトとして設定する手立てがないため、純正アプリを削除すると、ほかのアプリからのリンクはエラーになってしまいます。削除したアプリを復活させるのは簡単で、App Storeで希望のアプリを検索し、クラウド型のアイコンをタップすると、ホーム画面にアプリが戻ってきます。
ユーザーの要望に応える完璧な回答にはなっていないとはいえ、iOSのシステムに深く結びついているわけではない、使用頻度の低いアプリを非表示にできるのは朗報と言えるでしょう。そもそも、「ヒント」や「株価」「ビデオ」「Watch」といったアプリは、今でもホーム画面の3ページ目に「Apple Junk」といったタイトルでまとめて放り込まれているのではないでしょうか。
2. メッセージの「開封証明を送信」設定がスレッドごとに可能に

iOS 10では、メッセージの会話スレッドごとに、開封証明を送信するか否かを選べるようになります。親しい友人にはメッセージを読んだことを伝えたいけれど、メッセージをやりとりする相手すべてには知らせたくないという人には、大変便利な機能です。それぞれの相手との会話画面の右上に表示されている「詳細」ボタンをタップし、「Send Read Receipts」(開封証明を送信)の隣にあるトグルボタンを操作すれば設定できます。
3. 「マップ」が自動的に車の駐車位置を記憶

App Storeを見れば、駐車した場所を教えてくれるアプリがいくらでも見つかりますが、アップルの「マップ」アプリ(今では表示もかなり改善されています)を使う人にとって、iOS 10以降はこれらのアプリが無用の長物になります。「マップ」の道案内機能を使って目的地に向かい、車を止めると、このアプリがユーザーに通知を送り、さらに地図上の車のある位置にピンを立ててくれます。用事を済ませて車に戻ろうとすると、マップ上に駐車位置が「recommended destination」(おすすめの目的地)としてポップアップ表示されます。
4. 「スライドでロック解除」機能が廃止に

当初からiOSの機能として組み込まれていた「スライドでロック解除」が、iOS 10では廃止されます。今後は、デバイスのロック解除には、まずホームボタンを押します。指紋認証の「Touch ID」が設定してあるデバイスなら、ここで指紋を読み取って自動的にロックを解除します。未設定の場合は、ホームボタンを押すとパスコード入力画面が表示されます。
とはいえ、画面のスワイプ操作自体はiOS 10でも有効で、「Widget」画面が現れます。これは現在のバージョンでは通知センターの「今日」の画面とほぼ同じ内容が表示されます。
5. 睡眠サイクルの改善に役立つ「Wake Alarm」機能が新たに追加

iOS 10の新機能には、意外なものもあります。その一例が、すっかりおなじみになった「時計」のアラーム機能とは別に追加された、「Wake Alarm」(目覚ましアラーム)です。この機能では、まずは確保したい睡眠時間を決め、次に朝起きる時間を設定します。すると、朝の設定した時間にアラームが鳴るだけでなく、布団に入るべき時間にもお知らせが来るのです。
バカバカしいようにも思えますが、大人になっても「そろそろ寝る時間ですよ」というお知らせが必要な人(実際、日々の忙しさを考えると、そういう人もいるかもしれません)には待望の機能でしょう。さらにこのアラームを使うと新たに導入された睡眠分析機能も利用できるので、毎晩どれだけ寝たかを記録できます。これによって、自分が決めた睡眠スケジュールをきちんと守っているかを確認できるわけです。
6. 一定期間聴いていない楽曲を自動削除してストレージを節約

大量の音楽を端末に保存していると、システムやアプリのアップデートをダウンロードするときにストレージ容量が足りなくなり、なんとか削減しようと苦労することがあるはずです。iOS 10では、最近聴いていない楽曲を自動的に削除する設定が新たに設けられました。[設定]>[ミュージック]と進むと、「Optimize Storage」(ストレージ最適化)という項目に、楽曲について「最小限のストレージ」を使用するトグルボタンが見つかるはずです。ここでストレージの容量レベル(1~8GB)を設定すると、あまり聴いていない曲をiOS 10が削除し、音楽の容量を設定したレベル内に抑えてくれます。ポッドキャスト関連のアプリには同じような機能を持つものが多いので、そうしたアプリを使っている人なら、この機能をすぐに使いこなせるはずです。
7. 「メール」に専用の「購読解除」ボタンが登場

「Gmail」や「Outlook」などのモダンなメールアプリにならい、アップル純正の「メール」にも、受信したニュースレターの購読を解除する専用ボタンが設置されました。アプリの側でニュースレターだと認識できるメールについては、リンクをクリックしたり、フィルターを設定したりする手間をかけずに、ボタン1つで購読を解除できます。「メール」アプリでニュースレターを開き、「購読解除」ボタンを押すだけで、押し付けがましいメールを受け取らなくて済むようになります。
8. フラッシュライトの明るさが調整可能に(コントロールセンターで3D Touchオプションが使用可能に)

この新機能は一見些細でくだらないもののように思えますが、原文筆者は個人的に高く評価しています。iOS 10ではフラッシュライトのアイコンを強く押すと、明るさの調整が可能になり、「弱、中、強」の3段階から選択できます。これは思っている以上に使いやすい、ちょっとした便利機能と言えます。ほかにも、コントロールセンターに表示されるアプリでは3D Touchオプションが使えるようになりました。これにより、タイマーを設定したり、カメラの特定の設定を開いたりするのがずっと楽になります。
9. 「Game Center」アプリは廃止、ただしサービスは存続

モバイルゲームのハイスコアや成績の記録、あるいは友達リストをまとめて表示するアプリ「Game Center」が、iOS 10では廃止されました。とはいえ、設定にはGame Centerという項目がまだ残っています。これはつまり、ユーザーの利用実態を反映して、Game Centerがアプリからサービスに格下げになったということでしょう。iOS 10になっても、これまでと同じユーザーIDが使えますし、オンラインでゲームを楽しんだり、友達とつながったりするのに利用はできます。とはいえ、アプリ自体や成績の記録とそれに伴うチャレンジは削除されてしまいます。
10. 音楽を再生したままでカメラ起動が可能に

これまでのバージョンのiOSでは、カメラを起動すると、それまで再生していた音楽が自動的に一時停止になるという、なんとも不可解でわずらわしい仕様がありました。iOSでは、写真の撮影に関してはこの制約がなくなっています(動画撮影ではこれまで通り一時停止されますが、こちらの理由は明白でしょう)。原文筆者はiOS 9を使っていて、この機能にずいぶん悩まされてきたので、この制約がなくなるのは大歓迎です。
11. セキュリティに問題があるネットワークへの接続を警告

セキュリティに大いに問題があるWi-Fiネットワークに接続しようとした場合、その旨を知らせる警告が新たに表示されます。何も暗号化対策が施されていないネットワークはもちろん、WEPのような旧式のプロトコルを用いている場合にも警告がポップアップします。また、インターネットにつながっていないローカルネットワークや、無線接続の電波が弱い場合も、Wi-Fi設定画面に表示が出るようになります。
iOSを使っていて楽しく思えるのは、この記事でご紹介したような細かい便利機能があってこそです。新たなバージョンのベータ版が発表されるたびに、追加や削除があるはずですので、今後も注視していくつもりです。最終版のiOS 10には、さらに多くのまだ知られていない機能が搭載されていることでしょう。
Thorin Klosowski(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)
Image by Sam Woolley.