〈マンガとQ&Aで楽しくわかる〉1人でできる子になる 「テキトー母さん」流 子育てのコツ』(立石美津子著、日本実業出版社)は、以前ご紹介したことのある『『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』の著者による新刊。今回もまた、子育てにおける"テキトー"の重要性がバックボーンになっています。

一生懸命ゆえに「いいママにならなくちゃ」「いい子に育てなくちゃ」という"いいママプレッシャー"にがんじがらめになって、理想を追い求め続ける完璧主義のママは少なくありません。じつは、私もかつてそうでした。

でも、それだと親も子どもも不幸になることに気づき、たどり着いたのが「テキトー」な子育てです。

(「こんな子育てをしてしまっていませんか?」より)

ただし、この場合の「テキトー」とは「いい加減」ということではなく、肩の力を抜いた「ちょうどよい」という意味。たしかにそのほうが、子育てはうまくいきそうです。でも、だとすれば現実的に、どのようにすればいいのでしょうか? 第1章「ガミガミ怒らない、子どもの心に届く『伝え方』」から、いくつかを引き出してみましょう。

「ちゃんとしなさい」といっても、ちゃんとしてくれないのですが...

レストランで注文したものがなかなか出てこなくても、大人なら「あと5分くらいかな、10分くらいかな」と、これまでの経験から時間を予測することができます。しかし子どもはそれを理解できず、「もう少しだからガマンしなさい」と説明しても待ちきれなくなってしまうのだとか。だからそんなときは、具体的に待ち時間を伝えることが大切。

同じように、ブランコの順番を守れない場合でも、「"もう少し"待ちなさい!」「"ちゃんと"順番を守りなさい!」と漠然と叱られてもよくわからないもの。そこで、「3番目だからね」「○○ちゃんの次だからねと、具体的にいうべきだと著者は記しています。

親がよく使うけれど、子どもに伝わらない言葉のベスト5は、「早くしなさい」「きちんと(ちゃんと)しなさい」「しっかりしなさい」「いいかげんにしなさい」「お行儀よくしなさい」。

どれもあいまいで、とらえどころのない指示ですね。(27ページより)

しかしそうではなく、「なにをすればよいか」をわかりやすく伝えることが大切だということです。(26ページより)

ガツンと厳しくいっても、うまくいかないのですが...

頭ごなしに命令するのは、いちばん簡単なこと。しかも、それは決して効果的ではないといいます。そこで大切なのは、否定形ではなく、肯定形で伝えること。

「散らかさないの!」ではなく、「片づけようね」

「残さないの!」ではなく、「全部食べようね」

「走っちゃダメ!」ではなく、「歩こうね!」

「大きな声を出さないで!」ではなく、「小さな声で話そうね」

「お店の物は触らないの!」ではなく、「お店の物は見ているだけにしようね」

(29ページより)

このように、伝え方をちょっと変えるだけで子どもは行動に移す気になるもの。そこで、「行動に移したくなる言葉」をかけることが重要だということです。(28ページより)

「怒る」と「叱る」の違いがよくわからないのですが...

育児書にはよく、「怒らずに叱りなさい」と書かれています。とはいえ実際には、その違いを態度で示すのはなかなか難しくもあります。では、その違いはどのようなものなのでしょうか?

まず"怒る"とは、腹を立てて感情をぶつけること。自分の腹の虫をおさめるためには、相手がどんな不愉快な思いをしようと関係ないというスタンスです。いってみれば「やつあたり」。

それに対して"叱る"とは、相手のためを思って、よりよい方向へ導こうとすること。しかし現実的には、自分の子だからこそ、親としての責任や愛情などさまざまな感情が入りまじり、「なにやってんの! やめなさい!」などと声を荒げてしまいがちです。

大切なのは"怒る""叱る"の言葉の違いではなく、しつけは"子どものためのもの"ととらえることだと著者はいいます。そして、「どう伝えたら、子どもが受け入れてくれるのか」を考えてみる。「子どものため」なのか、それとも「親である自分の気持ちを解消したいため」なのか。言葉の底に"愛"があるかどうかが大切だということです。(36ページより)

つい感情をぶつけてしまう

昼間はガミガミと怒ったものの、夜に寝顔を見たら「きょうもいいすぎた」と反省することになる...。子育てをしていれば、そんな経験は誰にでもあるものです。でも、子どもに感情的になれるのは親だからこそ。子どものことを思うがゆえだと著者は主張しています。

ただし当然のことながら、感情を言葉にするときには注意が必要。たとえば、「なんでいつもそうなの?」「あんたさえいなかったら、こんなにイライラしないのに!」などというのは言葉の虐待にすぎないということです。頭に血がのぼった瞬間は、怒りのボルテージが最高潮に達しているもの。そのため、ひどい言葉がどんどん浮かんでくる可能性があるといいます。

そんなときは、深呼吸して、10数えて、冷静になってください。すると、怒りのピークは下がり、不思議と気持ちが落ち着いて言葉もやわらかくなります。(39ページより)

感情的になるのは自然なことだけれども、それをコントロールする術を身につけるようにすることが重要だというわけです。(38ページより)

なにかができたら、ごほうびをあげるのはよくないのでしょうか?

「おりこうにしていたら、あとでジュース買ってあげる」、よくあるこのような方法は、エサで釣るしつけだと著者は指摘します。たしかに、「おもちゃを片づけないと、おやつは抜き!」と罰を与えるよりも、ごほうびを与えるほうがまだマシ。しかしそれだと、"おやつがないと片づけない"習慣がついてしまうというのです。

行動を強化するためのほうびを専門用語で「強化子」というそうです。ほめることも、拍手することも強化子。文字の学習中、花丸やシールを貼ってあげる行為も強化子だということ。そしてこういう場合に子どもは、はじめのうちは花丸やシールほしさに行動し、だんだんとそれがなくても学習するようになるもの。そういう場合は、ごほうびが功を奏したことになるわけです。

しかし、お菓子やゲームのように強化子がエスカレートすると、"エサがないと学習しない悪い習慣"がついてしまう危険が。へたをすると、「今度はなにを買ってくれるの?」と要求してきたりすることもあるので、ごほうびはほどほどにしておいたほうが賢明だといいます。(46ページより)

ほめると、それが当たり前になってしまう気がするのですが...

ほめすぎると、子どもはほめられることが当たり前になり、評価されないと行動しなくなってしまうといいます。だからこそ、ほどほどにすることが大切だということ。

そして、ほめ方にもポイントがあるのだそうです。「お片づけしてえらいね」「全部食べておりこうだね」は、裏を返せば「散らかす子は悪い子」「残す子は悪い子」という条件つきの愛。しかし条件つきだと、子どもは"ママがどう評価するか"を基準に行動するようになってしまうかもしれません。そこで、次のようにいいかえてみたらどうかと著者は提案しています。

「おもちゃが片づいていると部屋がすっきりして気持ちがいいわ」

「残さず食べてくれてありがとう。一生懸命つくったからうれしいわ

このように、「あなたの行動で助かったよ」と伝えることが大切だという考え方。貢献意欲があるため、人に認められると、自分の行動に価値と意義を見出すのが人間。だからこそ、「ほめる」よりも「認める」べき。そうすれば結果的には、誰も見ていなくてもゴミを拾うことができる人になるのだといいます。(48ページより)


サブタイトルにもあるとおりのQ&A方式。しかもマンガも豊富なので、肩の力を抜いて"テキトー"に読めるはず。それでいて要点はしっかり押さえていますから、子育てのコツを無理なく吸収することができるでしょう。

(印南敦史)