Inc.:インターネットには今や生産性にまつわる話が氾濫しています。

私たちは誰もが習慣化することが大好きです。朝の習慣、午後の習慣、夜の習慣。どれも良いと思っています。考えなくても自然に楽々とできてしまうようになるまで1つのことを反復するのが習慣化です。

習慣は信じられないぐらい強力で、私の人生に健康と成功と生産性をたくさんもたらしてくれました。

しかし習慣には良くない側面もあり、それについては十分に語られてはいません。習慣は停滞の原因にもなり得るのです。

なぜ習慣は停滞の原因となり得るか

習慣がどのように停滞を招くかを理解するには、まず習慣の素晴らしさを理解する必要があります。

わかりやすく説明するために1つお話をさせてください。

私は初めて車のハンドルを握ったとき事故を起こしそうになりました。停止信号を見てブレーキを踏もうとしたのですが、代わりにアクセルを踏んでしまったのです。自動車学校の教官がドアハンドルを握って衝撃に備えたのを今でも覚えています。彼の顔には明らかに恐怖が見て取れました。幸いにして、交差点にいた車がうまくそれてくれて、私の足はブレーキのペダルを見つけました。それから必死でバックしようとして、またしても大事故になりそうでした。

時間を今日まで早送りします。今の私はスムージーをのみ、お気に入りのポッドキャストを聞きながら何の苦労も無く運転できます。助手席に座っている人に話しかけても全然平気です。ときには、家に帰る道を運転しながらまったく考えなくてもいつの間にか自宅の私道までたどり着いていることさえあります。

初めて運転を始めたときと現在との間に発生したのは、自動性です。

しかし自動性にも難点があります。自動化すればするほど、私たちは当該スキルの学習と上達を続ける方法は考えなくなり、新しいことを試さなくなります。上達とセレンディピティを代償にして効率の良さを手に入れ、その結果が停滞です。

同じことを何度も反復するだけでは進歩につながりません。2006年のアメリカ合衆国記憶力チャンピオンであり作家でもあるジョシュア・フォア氏はこの状態を「OK停滞」と呼んでいます。彼の著書『ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由』で、彼はその根本的プロセスを説明しています。

1960年代に、心理学者のPaul Fitts氏とMichael Posner氏は新しいスキルを習得する際の3段階を説明してこの疑問に回答しようとしました。第1段階は、認知的段階として知られていますが、作業を合理的視点でとらえ、より能率的にやり遂げるための新しい戦略を見つける段階です。第2段階は結合的段階で、第1段階ほど集中しなくても大きなミスを犯すことが減り、効率が良くなります。最後は両氏が自律的段階と呼ぶ段階に到達します。そうなるとその作業をするのに必要なだけのスキルは身についており、原則として自動操縦でできてしまいます。たいていの場合、それは良いことです。

しかし、生来人間は同じことを何度も反復してさえいればいいようにはできていません。『The Black Swan』の作者であるNassim Taleb氏はこれを次のように説明しています。「私たちは決して同じことは繰り返さないように生まれついています。オフィス、ジム、通勤、スポーツなどの閉じられた状況におかれると、反復ストレスにより傷ついてばかりの生活になります。」

学習>生産性

木を切り倒すのに6時間与えられたら、私は最初の4時間を斧の刃を研ぐのに使うでしょう。

── エイブラハム・リンカーン

ここにこの問題の核心があります。すなわち、習慣とは同じことを何度も繰り返すことで効率的にそれをこなせるようになることです。学習とは今まで一度もしたことがないことに挑戦して、成長することです。

よって、私はインターネットに関して次のような提案をしたいと思います。

毎日を生産性より学習することに重きを置いて過ごしましょう。なぜならば、学習は生産性の究極の形だからです。

何をすべきか考えるのと同じぐらい自分が実際にしていることから学習することを考えてみましょう。

ToDoリストを作るように学習目標を設定しましょう。

達成できたことだけでなく、学習できたことも評価して喜びましょう。

学習するには時間を取られますが、ひとたび学んでしまうとその後は永久に報われます。ウォーレン・バフェット氏の次の言葉はまさに核心をついています。

一般的に、自己探求こそ人間ができる最善のことです。自分の才能を伸ばすものなら何でも見つけようとすることだからです。誰もそれに税金をかけたり取り上げたりできません。

Why the Smartest People Are Constant Learners | Inc.com

Michael Simmons(訳:春野ユリ)

Photo by Moyan Brenn/Flickr (CC BY 2.0).