Popular Science:世界では毎年25万人から50万人がインフルエンザで亡くなっており、アメリカの成人の40%以上がインフルエンザ予防ワクチンを接種しています。しかしワクチンは1日のうちのどの時間帯に接種するかで効き目が違う可能性があります。ワクチン専門の学術誌に最近発表された研究によれば、午前中にインフルエンザのワクチンを接種したほうが、1カ月後に血液中に含まれる抗体の密度がずっと高くなったと言います。研究者の間では体の免疫システムが1日の時間帯によって変化するのではないかと推測されていますが、これに関してはさまざまな研究が行われた結果、複雑な結論に至っています。もしこうした変動が実際にあるなら、体の24時間周期リズムと連動しているコルチゾールやアンドロステンジオンのようなホルモンの変化が原因かもしれません。しかしこのような1日単位の変動の影響を正確に突き止めるのは困難です。どの病気にどの程度の免疫力があるかは結果的に異なりますし、患者の性別や年齢によっても異なる可能性があることが指摘されています。

イギリスで実施されたこの研究は、インフルエンザによる死亡率がもっとも高い65歳以上の患者に特に注目しています。276人の健康な高齢者のうち、半数には午前中に(午前9時から11時の間)、残りは午後に(午後3時から5時の間)、ワクチンを打ちました。1カ月後、被験者から採取した血液を調べると、当該ワクチンが効果を発揮すると見込まれる、3種類のウイルス株に対する抗体が確認されました。

そして、午前中にワクチンを接種した被験者は午後にワクチンを接種した被験者と比べると抗体の数が著しく多いことがわかりました。これは、午前中のグループのほうが、ワクチンに対する反応が良かったことを示しています。しかし、さらに採取した血液を分析した結果、いくつかの異なるホルモンレベルは見られましたが、ワクチン反応にここまで劇的な差が出ることに、直接関連するような、具体的なホルモンの変化は見られませんでした。

ワクチン接種の時間帯が免疫不全の人たちにどのような影響を与えるか、あるいは、高齢者に推奨されている肺炎球菌ワクチンにも同じことがあてはまるかどうかは、まだわかっていません。プレスリリースによれば、こうした疑問を解明するために、高齢者を対象に、さらに規模を拡大した研究が予定されているようです。

Vaccines Might Work Better In The Morning |Popular Science

Alexandra Ossola(訳:春野ユリ)

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