リステリア菌は、胎児にとって脅威となる病原菌ですが、いろいろな食品で見つかります。最近はスターバックスのサンドイッチでも見つかりましたが、それだけではありません。過去60日間に限っても、サーモン、メロン、2つの銘柄のチーズなどが自主回収されました。こんなふうにバラバラの場所で見つかる病原菌をどうやって避ければいいのでしょうか?

リステリア感染はまれだが、胎児の命を奪う危険性がある

食中毒は喜ばしいものではありませんが、このリステリア・モノサイトゲネスという病原菌が引き起こす食中毒は、妊娠している人にとっては特に恐ろしいものです。リステリア菌に感染した妊婦の約4分の1は、流産や死産、新生児の死亡などの結末を迎えてしまうのです

唯一希望が持てるのは、リステリア感染はまれだという点です。アメリカでは毎年、1600人がリステリア菌に感染し、そのうち260人が死亡していますが、これは多いとは言えません。しかし、リステリア菌に感染して、すぐに治療を行わないと、好ましくない結果を招きます。リステリア感染が発生したケースの多くでは、感染者のうち27%程度を妊婦が占めます。その他の感染者のほとんどは、高齢者、AIDSや癌の患者など、免疫機能が衰えている人々です。そういう人々の体は病原菌を撃退することができないのです。

感染したときの症状はリステリア症と呼ばれ、発熱、嘔吐のほか、(脳に感染すると)首の痛みと見当識障害が生じます。妊娠中にこれらの症状が現れたら、リステリア症ほど深刻ではないインフルエンザのような病気かもしれないと思っても、すぐに病院へ行って検査を受け、抗生物質で治療しましょう。

リステリア菌は世界中のどこにでもいます。水の中、泥の中、そしてもちろん人や動物の腸内でも見つかります。そして厄介なことに、食品中のリステリア菌は、ほかの多くの病原菌とは異なり、冷蔵温度でも増殖する危険性があります。たとえば、七面鳥の肉を切ったものを冷蔵庫に入れておいた場合、大腸菌が肉全体に増殖するということはありません。しかし、リステリア菌は増殖してしまいます。

とはいえ、リステリア菌は熱で簡単に死滅します。大腸菌やサルモネラ菌(食肉中でよく見つかる病原菌です)が死滅する温度で食品を調理すれば、どんなにしつこいリステリア菌でも完全に殺菌できます。

リステリア菌はほぼどんな食品でも発見される

もし私たちが昼食で食べる肉や生乳で作られたチーズだけに気をつけていればいいのなら、リステリア菌に対処するのは簡単でしょう。しかし、最近、リステリア菌はそれ以外の多くの食品でも見つかっています。

過去5年間にリステリア感染を引き起こした食品を以下に挙げます:

  • 袋詰めのサラダ(2016年)
  • ソフトチーズ(2015年)
  • アイスクリーム(2015年)
  • キャラメルアップル(2014年)
  • もやしと豆腐(2014年)
  • 2つの銘柄のチーズ(2014年)
  • 別銘柄のチーズ(2013年)
  • リコッタチーズ(2012年)
  • メロン(2011年)

ノースカロライナ州立大学の食品安全の専門家、Ben Chapman氏によると、必ずしも、リステリア菌の見つかる場所が過去に比べて増えたわけではありません。私たちの検知能力が高くなったのです。たとえば、スターバックスのサンドイッチに関しては、製造所でサンドイッチの表面にリステリア菌が見つかり、自主回収が発表されました。病気になった人はいませんでした。それでも、実際に病人が出た感染例は、上のリストのものを含めてたくさんあります。

それでも、加工肉もソフトチーズも直ちに禁止されるわけではない

妊娠している女性への一般的なアドバイスとして、以下の食品は、高温で加熱した場合を除いて避けるべきです:

  • 生乳で作ったソフトチーズ
  • ソーセージなどの加工肉
  • 冷蔵保存したパイ
  • 冷蔵保存した燻製魚介類

妊娠中は避けるように言われている食品はほかにもありますが、上に挙げたのは特にリステリア菌に関係するルールです。

しかし、良い知らせも少しあります。リステリア菌感染のリスクがあっても、これらの食品を楽しむことは可能だということです。たとえば、加工肉は再加熱すればリステリア菌を殺菌できます。Chapman氏は、奥さんが妊娠中にトーストされたハムチーズサンドイッチを注文したときは、それを自宅の電子レンジで加熱して、それから温度計でサンドイッチの複数箇所で温度をチェックしたそうです。

Chapman氏ほどこだわらなくても、加工肉を電子レンジで湯気が出るまで加熱するのはいい考えです。また、数十年前に比べれば、加工肉にリステリア菌が含まれている可能性は低くなっています。今では製造業者が乳酸を加えて、細菌の増殖を抑えているからです。

ソフトチーズも、滅菌された牛乳から作られているものは食べても大丈夫です。法律で、チーズの多くがそうなっています。ですから、結局のところ、ブリーチーズを諦める必要はありません。熟成された(ハード)チーズは滅菌牛乳を使っていなくてもかまいませんが、やはりリステリア菌が含まれている可能性はあります。ですから、格別用心深い人は、ハードチーズに関しても、原材料のラベルを見て滅菌牛乳を使っているものを探しましょう。

自家製、あるいは少量だけ作られたソフトチーズには注意しましょう。リステリア菌感染が発生したケースのいくつかは、そういった食品が原因でした。ラテン系女性のリステリア感染リスクが高いのは、生乳で手作りした新鮮なケソ・フレスコという生チーズをよく食べるからです。Chapman氏は、小規模な食品生産業者には、リステリア菌の管理プランを尋ねてみることを勧めています。業者が話の内容を理解していないようなら、その業者が作っているチーズを食べてはいけません。

すべての食品を加熱調理する以外に、あなたにできることはあまりない

Chapman氏によれば、「何かできることはあるのかと言えば、大してない」ということです。私は、Chapman氏からリステリア菌を簡単に避けられるような新しいルールを教えてもらうことを心から期待していました。しかし、そんなうまい話はなかったのです。Chapman氏によれば、上で述べたような加工肉とチーズについての一般的なアドバイスは有効だそうです。さらに、最高に厳しくて清潔な方法で作られているとは思えない食品は避けた方がいいとのことです。

しかし、自主回収が行われる前は、皆さんはおそらく、Blue BellのアイスクリームやSabraのハムなど、大手企業の食品は安全だと思っていたことでしょう。各企業は自主回収の後は衛生管理を強化し、消費者の信頼を取り戻そうとしていますが、消費者が懐疑的になってしまったとしても仕方ないかもしれません。

工場内で起こっていることに手を出すことはできませんが、自分の家の台所をリステリア菌が暮らしにくい場所にするためにできることはいくつかあります。以下に述べる対策はどれも完全な解決策ではありませんが、どんなにささいなことでも役に立つでしょう。

  • 温度計を使って冷蔵庫の温度ができるだけ低い状態――0度くらい――になっているかどうか確かめましょう(温度が低ければ低いほど、リステリア菌の増殖速度は遅くなります)。
  • 食品を冷蔵庫に長い間保存しないようにしましょう。ほとんどの食品は4日以内にしましょう最近の研究に基づいて、Chapman氏はカットしたメロンを1日以上冷蔵庫に置かない方が良いと話しています。
  • 加熱が可能な食品(つまり、アイスクリームは除きます)は、どんな食品でも推奨温度に達するまで加熱しましょう。ほとんどの食品の推奨温度は約75度です。高温にすればリステリア菌もその他の病原菌も死滅します。

それだけです。リステリア菌の感染リスクは、あなたが何をしようとなくなりませんが、幸いにも、そのリスクは低いです。アメリカでは毎年、約400万の妊婦のうち約500人がリステリア症にかかります。あなたはどの程度の不安を感じていますか? それはあなた自身が決めることです。

私が前回妊娠したときには、私の好きなブランドのハムに関連するリステリア感染が流行していました。汚染は限定的だと言われていましたが、私は9カ月の間ずっとハムを食べませんでした。さらに、袋詰めのサラダ(とサラダバー)、そして加工肉も、高温に加熱したサンドイッチ以外は食べませんでした。もちろん、アルコールと肉体的接触のあるスポーツは控えていました。リステリアのおかげで、妊娠中の禁止事項が増えてしまいました。

最終的には自分自身のルールを決めなくてはいけません。リステリア菌がどこに現れるかは予測できませんし、次の発生を確実に避ける方法を知っている振りをするつもりもありません。あなたにとって最善の方法は、自分でリスク(できそこないのチーズなど)を取り除くことです。自分の手に負えないことについて大騒ぎするのはやめましょう。

Beth Skwarecki(原文/訳:松田貴美子/ガリレオ)

Photo by Shutterstock.